藤野の加藤世紀 | 瀧光の絵画世界

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水墨画、日本画、洋画など幅広い絵画制作活動をしています。
これまでの人生経験や美大大学院で学んだことをベースに、ブログを書いています。

 最初の個展「幻想さがみ50景」連作の締めくくりとして、芸術をテーマとした作品の制作にとりかかった私は、画題を探して、芸術のまち 藤野 を訪れた。

 そして、芸術の道を辿った。

 JR藤野駅から出発し、弁天橋を渡って、藤野の里山を一周するのだが、その途中には、あのシュタイナー学園もあり、クルマで廻るのが丁度よい程の道程だ。
 そこには、昭和の終わりから平成の初めにかけて制作された30点以上の屋外環境アート作品が随所に展示されている。

 山がラブレターを抱く姿を表現した「緑のラブレター」は、JR藤野駅や中央自動車道藤野パーキングエリアからも眺望できて有名である。

 私は、すべての作品を観てみたが、その中では「雨」という作品が一番好きだ。
 里山のゆるい坂道を登り切ったところに作品は展示されているのだが、その作品の借景として、近くの木々が大きく揺れて、遥か遠くに藤野の街並が見える。
 そして、その雨の線は、赤い鉄骨で造られた、現代アートのオブジェであるが、雨で有名な広重作品「庄野白雨」を想い出させるではないか。

 その「雨」を描いた絵画である。
 




 そして、個展案内葉書ができあがると、2016年9月7日 中学友人Yと藤野に個展の売り込みに行った。

 その日は、藤野ふるさと芸術村創成30周年事業の一環として、「疎開作家と藤野の人にまつわるお話会」が藤野総合事務所で開かれており、「藤田嗣治」の兄の孫である藤田継隆氏を迎えて座談会が行われていた。

 われわれは、そこに参加して、展示作品を見学していると、後ろから話しかけてくる人がいた。それが加藤世紀であった。

 個展案内葉書をみせて趣旨を説明すると、加藤世紀は、見ず知らずのわれわれに親切にも、すぐ近くにあるご自身のアトリエに案内してくれて、いろいろ話をしてくれた。
 アトリエの窓からも「緑のラブレター」が良く見えて、それを描いた加藤世紀の絵はがきが観光案内所で販売されていたことを私は知っていた。

 加藤世紀の絵画は天衣無縫であり、その人柄も同様であり、魅力的である。それを文章で表現することは難しく、「加藤世紀さん」という他はない。
 そして、話題は絵画を中心に留まるところを知らず、Yと私は感動して、これまでの絵画交流の中で、一番の楽しい思い出となった。

 その絵画活動の多様性と底辺の広さから、藤野の町が世紀さんの美術館のように感じられたものであった。  


 その中で、私の興味を特に惹いた2つのお話を紹介したい。

 一つ目は、私の敬愛する岡本太郎が藤野を訪れた時のエピソードであり、タローさんと世紀さんの2ショット写真も見せていただいた。
 タローさんは、藤野の画家たちの描いた絵画を観て、世紀さんの絵を激賞し、他の画家は絵を描くなと言ったそうである。
 世紀さんの画風とタローさんの芸術観からして、大いに有り得ると思ったし、痛烈な批評であると共に何だか微笑ましくなるような印象が深い。


 二つ目は、私が描いた「雨」の制作者フェリット・オズシェン氏との関りである。
 フェリット・オズシェン氏はトルコ国立芸術大学(日本の藝大のようなところ)で学んだ。そして、フェリット・オズシェン夫妻は藤野に滞在して、その作品「雨」を平成8年に完成し、そこで世紀さんと知り合いになった。

 制作が終わってからも御夫婦で毎年藤野を訪れて交流は続いたが、奥様が亡くなられてからは、来なくなったと世紀さんは言っていた。

 私の個展に世紀さんは生徒さん達と一緒に訪れてくれた。

 世紀さんは「雨」を観て、オズシェン氏との写真4枚の写しと「雨」の前で撮影された関係者集合写真葉書3枚が私の自宅に届けられてきた。

 私はその葉書2枚を中学友人YとSに贈った。





 ・・・加藤世紀は相模原芸術協会会員であるが、一般市民が参加する文化祭にも毎年出品しているのも好感がもてる・・・


 今月 四月一日 相模原市大島「清流の里」における画家仲間8人の展覧会に、中学友人YとSと3人で出掛けて鑑賞し、桜満開の時季 賑わうキャンプ場を散策し、行く春を楽しんだ。
 その時に、Yと私は、Sから、加藤世紀/絵・文「生命の木」を贈られた。

 それは、絵画と文が混然一体となった画集であり、加藤世紀が今も新境地を開いていることを知って、私は嬉しかった。
 その文だけ紹介する。
 

めざせ富士山

元気がいちばん

良き出あい

人生の的は一つ

黙って歩く

今が大事

一生青春

感動する

愚を守る

楽しむ人生

芸術は長く 人生は短し

友は古いほど良い

ありがとうの心

 

 

 


 私は、ほとんどの文が自分のモットーと重なっていると思ったのだが、
 特に「芸術は長く 人生は短し」の絵が面白かった。

 「人生は短し」のところは「若い二人の乙女が会食をしている」様が描かれており、「芸術は長し」は、なんと富士山の下を恐竜が歩いているのだ。
 実に楽しく、元気をもらえる。


 文も素晴らしいが、絵はもっともっと素晴らしいので、是非現物をご覧ください。最寄りでは、相模原市役所近くギャラリー誠文堂に置いてあります。