#もくむつSP 数々の伝説を生んだこの場所の原動力をもう一度感じた | 君が好き

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アイドルの話でもしようず。

もくむつライブが十年目と聞いて、ふと香月雅也と何年目の付き合いになったのだろうと考えた。たぶん十一年目だ。
2014年、ぼくは佐賀県在住ながら当時から熊本のアイドルを応援していた。当時応援していたグループはくまCan。そしてこのくまCanは、その後、数々の伝説を残す佐賀のアイドルグループ・ピンキースカイが初めて共演したアイドルだったのだ。
そのご縁のおかげで、ぼくはピンキースカイのイベントにもちょくちょく顔を出していた。まだお客さんが十人ぐらいのステージマロで「ピンスカライブ」という名の単独ライブをやっていた頃だ。そこでピンスカ最古参のmaji先輩や当時ピンスカ応援団長を名乗っていたギムくんと出会い、年齢が上だったこともあって、ぼくはその佐賀の現場では井の中の蛙でえらそうな顔をしていた。熊本では、当時から昨日のひぜんりささんの言葉を借りるならば「雄叫びタイプヲタク」が多くて怖かったので小さくなっていたのに、佐賀では「おれについてこい」とばかりにでかい顔をしていた。まるで、東京で働く佐賀県出身者が帰省して部屋の中でもサングラスを付けているようなイキり方だったと思う。恥ずかしいな、あは。
2014年秋に佐賀県初のアイドルライブイベント「GABAI」が始まる。毎月九州のアイドルを集めるアイドルイベントで、そのトリがピンキースカイというイベントだった。熊本では借りてきた猫のように「雄叫びタイプヲタク」を遠目に見て震えていた(※一応念のため言っておきますが大げさに言っています。いまでもそんなヲタクは熊本にいますがみなさんいい人たちです)ぼくだが、佐賀ならば自分の庭とばかりに羽根を伸ばしていた。
その「GABAI」で知り合った若いヲタクの知り合いが香月くんだった。
2015年の1月と2月の「GABAI」にはぼくの推しのグループ、くまCanが出演する。たきびの推してるグループだからと、多くの佐賀のヲタクもくまCanで沸いてくれた。すると若いヲタクたちは「楽しかった」と言ってくれ、「熊本でも見てみたい」となるが、距離的には近いが国鉄佐賀線廃止後、公共交通機関で佐賀から熊本を目指すのは意外と遠かったりする。「ならばおれの車に乗って行け」と若いヲタクを連れて熊本に行っていたのだ。そのとき、ぼくの車に乗っていた若いヲタクの一人が香月くんだった。
そういえば、2015年3月、まだデビューしたばかりのTick☆tikというグループが「天神から井尻までマラソンする」という謎のオフ会をやったことがある。ぼくも参加して当時でもすでにアラフォーだったぼくは、どたどたと息を切らして必死にアイドルについていっていたのだが、そのときアイドルを置いてけぼりにして先頭集団を作っていた若いヲタクの中にも香月くんはいたと思う。
2015年5月、ぼくの推していたくまCanのローンチメンバーの卒業ライブがあった。ピンキースカイも出演していた。その時の行きの車の中で香月くんから「佐賀の劇団に入ったんですよ」という話を聞いた。佐賀の若手劇団の一員としての活動するようになり、縁が遠くなるかなと思っていた。実際それから一緒にアイドルを見に行ったことはない。

だが、縁は切れなかった。
2016年1月にもくむつライブがスタートする。2015年12月に単独ライブで60人動員達成して大喜びした勢いで発表された記憶がある。2017年4月には佐賀市民文化会館大ホールで655人を集めてコンサートをやるグループになるのに、その一年五カ月前の2015年12月の時点では60人で喜んでいたということを振り返ると、このときから始まったもくむつライブは本当にすごいイベントなんだなと感じる。
それでこのもくむつライブにピンキースカイの物販サポートで香月くんも姿を見せるようになったのだ。劇団員らしく気合の入った声で「なぎりんあいてますなぎりんあいてます」「だーゆんいかがですかだーゆんもうあきます」と騒ぎ立てる呼び込みは、ヲタクたちが真似をするほどの人気になっていた。
とはいえ、2016年の冬頃にはもういなくなっていたと思う。
2017年頃のもくむつでひぜんりささんがピンキースカイの物販サポートで入っているときに、「だ―ゆんさんあいてます」と呼びこんでいたのを見て、ぼくが「まさやみたいやん」と言ったら、ひぜんさんはきょとんとされて、園田有由美さんが「りさちゃんはまさやを知らないかも」と言われていたので、香月くんが姿を見せていたのは、インパクトが強かったから記憶は分厚いけど、期間的には短かったんだと思う。
その香月くんと令和で再開したのも2023年8月のもくむつSPだった。
そして昨日はスタッフとしてフル回転して、いまではもくむつの出演者としても香月くんは名を連ねている。
4月13日の熊本でのサガンプロの主催にも出るらしい。
ぼくの持論として、アイドルの仕事は「歌を聴かせる」ことでも「ダンスを魅せること」でもないと考えている。野球選手は野球をする人、サッカー選手はサッカーをする人だけど、アイドルはそうではなくて「愛されること」が仕事だとぼくは思うのだ。
そして愛をはぐくむのは縁である。
この場所が好きだという縁、この人たちを見たいと思う縁、それらが深くなればなるほど、ファンはアイドルを愛するのだと思う。
その縁をはぐくむ場所として656広場は適していて、そこでピンキースカイがもくむつライブを通して縁をはぐくんだから、2015年は60人で喜んでいたグループが、一年五カ月後には655人を集めることもできたのだと感じる。なお、その655人のライブの7か月後の2017年11月のもくむつSPには延べ1000人を集めている。

とくそ長い前置きをしてここから本題だけど、昨日は木曜日なのに祝日で休みということで、もくむつSPに行ってきた。
なぜこんな長い前置きを書いてしまったかというと、一部のライブの園田有由美さんのMCにドキリとさせられたのだ。
「メインを(ひぜん)りさちゃんに引き継いで、わたしも毎回は出れないけれど出たときに、おかえりと言ってくれるファンのみんなの声がうれしいし、わたしもたまにしかここに来れない人をおかえりと迎えたい。そんな場所であり続けたい」
実際ぼくもたまにしか行けない人間である。
でもそれでも、毎回来てよと義務感を背負わされることもなく、たまに来ておかえりと迎えてくれるこの会場の、縁を大事にする姿勢がピンキースカイの伝説や、現在のサガンプロの魅力にもつながっているのではないかと感じた。
そういうわけで、昨日はサガンプロのひぜんりささん、園田有由美さん、Kotoneさん、りゅらちーさんをはじめ、佐賀からねほのむー、福岡から早見あまりさん、Echolocation Squad、空色ソルベ、あいらしっく、Candy Cross、熊本からも熊本Flavor、Re:five、SunnyHoneyと総勢13組のアイドルが集まった。
一部のOAだったKotoneさんは、一曲目に初期ピンキースカイの一曲目でおなじみだったカバー曲を歌い、二曲目はピンキースカイの「ナミダノイロ」。もくむつに集まるファンが喜ぶのがなにかわかっている曲で、それらを歌ってきた先輩にも負けないサガンプロ伝統の圧倒的な歌唱力で最初から聴かせてくれた。
二部のOAに登場したりゅらちーさんは、一部最後の園田さんのステージで小さな女の子がMIXを打っていて、こんな小さな子(小学三年生)でも応援してるんだと思っていたら、二部が始まったとたんステージに立っていて驚いた。天真爛漫に常に笑顔を浮かべられていたところに好感が持てた。カバー曲の選曲も新しいけど、おじさんたちも知ってる曲で楽しかった。
一部の開演前から衣装で会場に控え、OAからライブを楽しんでいた早見あまりさんは、ソロになって帰ってきた姿をもくむつに見せてくれた。いかにも「アイドルが大好き」というセットリストは見ているアイドルが好きな人たちも「大好き」となる楽しいステージだった。以前、グループアイドルとして出演したアイドルが「おかえり」「お久しぶり」とここに帰ってきているのは本当に縁だなと感じた。
昨年9月にデビューした、現在佐賀で一番新しいアイドル、ねほのむー。デビュー一か月後にすでにもくむつに出演していて、月に一回開催されている「水曜日のアレw」でも656広場に出演経験がありということで、佐賀の人にこれから愛されるんだろうなという予感を強く感じた。早乙女ほのさん自身がプロデュースされているということで、佐賀初のセルフプロデュースアイドルというのも魅力的だと感じた。
アイドルというよりダンスユニットといった感じのEcholocation Squad。メンバーも女性一人に男性3人(昨日は2人でした)の男女混合ユニットというのもアイドルイベントでは珍しい。見たのは去年の11月の熊本以来だったけれど、アイドルグループにはあまりないダンスと男女混合だからこそ出せるカッコよさは健在だった。
「念願のもくむつライブに出演できた」と嬉しそうにパフォーマンスをしていたのは空色ソルベだ。ぼく自身はコロナ禍のときにアクロス福岡で前身のグループを見たことがあった。あの頃は正直、ユニドル? といっても納得してしまうようなパフォーマンスのグループ(それでも結構人気はあった)だったのが、正統派アイドルとして覚醒していて、めっちゃよくなってるとかなり驚いてしまった。ライブアイドルの楽しみのひとつとしてクループの成長を見守るというのもある。ただ最近はデビューからそこそこのクオリティで作りこんでいるところが多く、またヲタクも時間をかけてアイドルの成長に付き合うほどの余裕がなくなっている。ぼく自身も、初期のユニドルと一緒に出ていた頃のイメージが空色ソルベには強くて、そこから見ることはなかったのだが、このもくむつの縁でまた見れて、そしてすごくいいグループになったのが知れてうれしかった。
去年の11月のひねひごで熊本に来てくれて、2月にはベイサイドでもRe:fiveと共演したあいらしっく。いま新田さくらさんを推しているヲタさんに、昔MONECCO5の生誕委員を一緒にやっていた人がいて、その人にまた会えるかなと縁を期待したが、残念ながら新田さくらさんが休演のため、そのヲタさんには会えなかった。また機会はあるだろうと思う。あいらしっくは、自ら「王道アイドル」と呼んでいる。ただ王道というのは一番むつかしい。実力がないといけないからだ。他にないスタイルを持ったアイドルグループは、たとえ少々実力が劣っていても、他にない物珍しさから評価をする人がいる。だけど、王道はスタイルが王道であるからこそ、物珍しさではなく実力で勝負しなければいけない。だからむつかしいのだ。あいらしっくはそこを、楽曲の良さで際立たせているように感じた。アイドルファンがノリやすい楽曲はファンのテンションをナチュラルに上げ、目の前のアイドルと一緒に楽しめる。そんな素敵な楽曲があいらしっくにはあり、それこそが王道アイドルが王道アイドルとして君臨できる源になっているように感じた。
3月30日で卒業、引退を発表している花寺紡季さんの最初で最後のもくむつになったCandy Cross。この日はマイクを置いているPAがいつものステージ下手ではなく、後方正面でちょうど沸きエリアの後ろになっていた。そこでステージに向かうアイドルは沸きエリアのヲタクたちの中を通る必要があり、Candy Crossが登場した頃にはヲタクもその演出に慣れ、両端に立って両手を伸ばしてアイドルが通る道にアーチを作っていた。エレクトロポップなOvertureが流れ、Candy Crossが沸きエリアを通り過ぎるそのとき、小鳥遊朱寿さんがそのアーチを作っているファンの指をハイタッチしながら通り過ぎて行った。うわ、おすずさん、さすが! とステージ前からぼくは度肝を抜かれた。そしてステージに立った二人を見て気づいた。実はぼくもこの花寺さんと小鳥遊さんのふたりのCandy Crossを見るのは初めてだった。熊本にいると、小鳥遊さんおひとりのステージを見る機会のほうが多いのだ。Candy Crossといえばお菓子のようなかわいい、ロリータチックなアイドル世界を演出しているイメージ。驚いたのは、もちろん小鳥遊さんはその空気全開なのだが、花寺さんもすごくかわいく仕上がっていたことだった。卒業が発表され、大きな声でも言いやすくなったがそれでも小声の話になるが、ぼくが知ってる花寺さんはCandy Cross加入前の前世のグループのときだった。その時のメンバーカラーはいまと同じ緑色だったけど、そのグループの最年長メンバーということもあり、割とお姉さん系のカッコいいキャラだった記憶がある。その花寺さんまでCandy Crossではふわふわかわいくなってしまう、このCandy Crossの世界観はすごいと感じた。
熊本からは熊本Flavor、Re:five、SunnyHoneyとぼくからするとおなじみのメンバーが出演してくれた。意外にももくむつライブ初出演だった熊本Flavor。一部では緊張気味で立ち位置を探すという、かつてのJunior Flavor Kumamoto時代をほうふつとさせるシーンもあったが、彼女たちのヴィジュアルの良さはどこへ行っても通用するわけで、佐賀の人にもいいインパクトを与えたのではないだろうか。
Re:fiveの見どころは、なんといってもひぜんりささんが「朝からカツカレー」でカツカレーをもって沸きエリア最前に現れたことと「ダンデライオン」でなぜかライオンを持って登場したところだった。MONECCO5時代からの絆を感じさせる素敵なシーンだった。
なにげに今年熊本で一番もくむつに出ているSunnyHoneyは、一部が紬ひなたさんが学校行事で休演していたものの、二部には駆けつけてくれた。二部に全員で出演するために他の演者さんと出番を入れ替えていたのもアットホームなもくむつらしくていいなと感じた。メンバーが増えてからのSunnyHoneyのステージは、それぞれのメンバーの見せ場が一曲のうちに一回か多くても二回しかなくなっている。ただ、だからこそそのチャンスに向けてそれぞれのメンバーは楽曲を支え、チャンスが来ればファンの視線を一身に集めるように見せつけるという緊張感のあるものになった気がする。しかも昨日は何度も来ているもくむつとはいえ遠征であるので、熊本で見るよりもさらにその緊張感が研ぎ澄まされているスリリングなステージが展開されていたように感じた。
2015年12月にワンマンライブで60人集めるのが目標で達成し、その後もくむつライブスタート時から毎週毎週、656広場のステージに立ち続けたもくむつの女王・園田有由美さんは一部から貫禄のあるステージを見せていた。「わたしあんまりステージにはいないんで」と言いながらステージを下りて、ファンの中で歌い続けていた。ピンスカ時代から定番のカバー曲でファンを暖め、もくむつをテーマにした「ひとひらのThursday」、園田さんご本人が作詞された曲も歌われ、一部ラストは「一番後ろの君に」、二部では「君に届け」と、衰え知ららずのアイドル界最強の歌唱力で往年の名曲を歌う姿はまさに女王だった。ぼくが園田さんを見るのは約一年ぶりぐらいだったが、それでも気づいてくれて腰に付けていた推しの東雲ういさんのタオルを「なんで他の女のタオルなの」と言いたげに引っ張ってくれた時に、思わずそうやっていじってくれる人だったんだなとその関係性を思い起こさせてうれしかった。まさに縁を大事にする園田さんだからこそ、いまだにそういうことを、ぼくみたいにたまにしか来ないヲタクにもやってくれるのだろうと感じた。
その園田さんの後を引き継ぎ、もくむつマスターになったひぜんりささんは、OAの前からステージに登場し、司会を務めていた。各グループのステージが終わるたびに、そのステージの感想を口にし、ずっとステージを見守っている。気持ちよくアイドルにもステージをしてほしい、ファンの人も楽しんでほしい、もくむつを素敵な場所であることを守りたい、ひぜんさんからはそんな気持ちを感じた。
圧巻だったのは二部で休演が出たために、急遽空いた時間をサガンプロで埋めたときである。まず、香月くんが出てきて一曲歌い、その後、園田さんと二人でステージに現れたひぜんさんは、熊本アイドルが三組出ていることで熊本のヲタクが通常より多いことと、来月13日に青い太陽さんプロデュースの主催ライブを熊本で開催することもあったのだろう。基本、天草やアニクラでしか歌わないようなアニメソングを二曲披露した。これには熊本のヲタクも大喜び。佐賀の人も久しぶりのものが見られて楽しめたと思う。フロアの空気を読んで、いま盛り上がるものをすぐやれる、この判断力はさすがだなと感じた。ステージは一部は出番がOAのあとでどちらかというとこれから盛り上げる現場を暖めることに徹されていた感じで、トリだった二部で大爆発していた。フロアのファン、ひとりひとりを覚えるように見つめて歌う姿は、これまで園田さんが大事にしていた縁をひぜんさんも大事にしていることが伝わり、かつてたくさんの伝説をピンキースカイが生んだもくむつをこれから支えていく重責に応えているなと感じた。

もくむつが始まる直前の2015年は、あのピンキースカイが必死に集客しても60人集めるのがやっとだった。
ただ、2016年1月にもくむつライブが始まり、毎週毎週地道に続けることで、もくむつライブはどんどん人気を集め、ピンキースカイは伝説を作っていった。
2016年12月には平日に100人の動員を記録している。その後、2017年4月に655人を動員するコンサートを開催するまでになった(余談だが公式に655人になっているのだが、なぜスタッフをひとりにチケット買わせて656人にしなかったのか気になっている)。
もくむつスペシャルも2017年11月には1000人動員という金字塔を打ち立てた。
これらの記録はもう破られないのか、それともひぜんさんが破るのか、それはわからない。
ただ、昨日のぼくが久しぶりにもくむつSPで感じたのは、もくむつライブを主催するサガンプロにとっては、そんな動員の人数や過去の栄光よりも、いまもくむつに足を運んでくれたという縁のある人をひとりでも笑顔にすることが一番大事なんだということなんだろうと思う。
ひぜんりささんのステージ中、もくむつ広場付近を部活帰りの高校生が自転車で通り過ぎたとき、ひぜんさんはマイク越しに「こんにちは」とあいさつしていた。そしてフロアに向かって「佐賀の高校生、いい子ばかりなんです」と紹介するように話していた。
そうやって人の縁を大事にする。
それこそがこのもくむつライブが数々の伝説を生んだ原動力なんだろうなとあらためて感じた一日だった。