熊本ローカルアイドル界に一石を投じられるか? 「くまもとクリエイターミックスフェスティバル」 | 君が好き

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アイドルの話でもしようず。

2015年3月15日のロアッソ熊本のホーム開幕戦は水前寺競技場だった。相手はザスパ草津。現・ツエーゲン金沢の島田慎太郎選手の2ゴールでリードするも、後半ザスパ草津のアクレイソンにゴールを決められて悔しい引き分けとなった試合だった。現・ロアッソ熊本キャプテンで当時二年目の上村周平選手がトップ下のリザーブとしてベンチに控え、この年サガン鳥栖から完全移籍した黒木晃平選手も途中出場している。
この試合の客席にアズインプロダクションのアイドルがいた。2015年4月11日に現・えがお健康スタジアム(当時はうまスタ)で開催される横浜FC戦のスタグル広場のイベントに、当時熊本で活躍している四つのアイドルグループが出演するイベントが予定されていたためだ。
その「視察」として、ホーム開幕戦にアズインプロダクションのアイドルが姿を見せていたのだ。
ぼくはこれを見て、立派だなあと思った記憶がある。
当時はロコドルブームの真っ只中。その頃、Jリーグとローカルアイドルは相性がいいのではないかと言われていた。
それはお互いのコンセプトが「地域密着だから」という単純な話だけではなく、共に「生観戦」というライブ感が一番の魅力だからだと考えられていた。
テレビで見るならば、そりゃあ欧州四大リーグや代表戦のほうが有名選手も出ているし、高いレベルでのプレーも見られる。でも、各地にJリーグがあるのは、そこではテレビでは味わえない、生観戦でしか得られない興奮があるからだ。それを楽しみにJリーグのサポーターは、地元のスタジアムに足を運ぶ。
ローカルアイドルは、その後ライブアイドルという言葉も生まれたほど、生でライブを地元で気軽に楽しめるのが一番の魅力だ。
そのため、このふたつは、ファンの感情移入も含め、ファン層が重なるのではないかと期待され、当時は各地でローカルアイドルをJリーグの会場に呼ぶイベントが試みられていた。
ただし、イベントに呼ばれるアイドルは、当たり前だがイベント当日しか会場に現れないことがほとんどだった。
もちろんライブステージを見せるために、仕事としてスタジアムに現れているから、それが普通のことである。
ただ、サッカーファンとしては試合を見てJリーグの興味を持っているアイドルのほうが受け入れやすいし、そのために事前にロアッソを応援しにスタジアムに足を運んで予習するアズインプロダクションのアイドルは、イベントに対しての意気込みが真摯で立派なものだなあと感じた。

それから九年が経過した。
Jリーグとローカルアイドルは相性がいいのではないかと言われていたが、ぼく個人の結論から言うと、相性はいいかもしれないがコアにのめりこむような人にとっては、ふたつも熱心に追いかけるのは身体も時間も財布も足りないと思っている。
シーズン中は二週間に一度はホームゲームのあるJリーグ、毎週のようにイベントをやっているローカルアイドル。
熱心にふたつとも通おうと考えれば、身体が足りない。
また、これがいちばんのローカルアイドル側のネックなのかもしれないが、ローカルアイドルは常時100人にも満たないような人数でファンが固まっているため、どうしてもコアなファン同士の内輪な空気ができやすい。ぼく自身もイベントに行ったら、来てる人が全員顔見知りということもある。そしてこれが一番いけないことなのだが、顔見知り同士でわいわい言っている当人たちは居心地がいいかもしれないが、その輪に入れない人たちには不必要な疎外感を感じている可能性がある。
「Xで気になったアイドルを見に行ったけど、コアなヲタクが物販机にたまっていて近寄れなかった」なんて話を聞くが、最悪のケースだ。
こういうことがどうしても日常的に起こっているため、たとえばスタジアムでアイドルを見て興味を持っても、なかなかライブには行けないし、仮にライブに行っても、不必要な疎外感を感じて二度と足を運ばないなんてことが起こっているという話をよく聞くのだ。

「スタジアムで知り合ったJリーグのサポーターにアイドルイベントに来てもらうのはかなり難しい」と以前、福岡のとある運営さんから聞いたこともある。
次第にローカルアイドル現場は、ファーストフード店やファミレスのように老若男女誰もが気軽に集まれる場所を目指しているものの、現実には常連客がクダを巻く居酒屋のようになっている。
残念なことである。
しかし、アイドル運営にとってはその顔見知りのヲタクこそ大事な常連客であり、またそのほうが大事な常連客にとっては居心地がいいのも否定できず、なかなかこれは内部から変えるには、運営にもファンにも難しいことだとぼくは感じていた。

そんななか、株式会社CapDo.JAPANが外部からスポンサーとしてイベントを支えることで、この閉塞的な空気に一石を投じることになるのではないかと期待させるイベントが昨日開催された。
「くまもとクリエイターミックスフェスティバル」と題されたイベントは主催アズインプロダクション、スポンサー・CapDo.JAPAN。
アイドルヲタクにはなじみがないかもしれないが、このCapDo.JAPANはロアッソ熊本のサポーターにはおなじみのスポンサーでアカデミーチームの胸スポなどでクラブを根底から支え、アウエーの試合ではPVも主催して熊本を盛り上げている企業である。しかも司会が去年までロアッソのスタジアムDJを務めていたスガッシュさん(アズインプロダクション所属)ということもあり、会場にはロアッソのユニフォームを着た方もいらっしゃってた。
スポンサーの森田社長は現状のローカルアイドルのアンヴィヴァレントはほとんどご存じないかもしれないが、森田社長のXのポストを拝見すると「ふらぁ~とお気軽にライブハウスにお越しください」「お一人でもファミリーでも楽しめるイベントです」と、誰でもウエルカムな感じで、その甲斐もあってか、会場はほぼ満席に埋まっていた。
熊本中のアイドルが歌い、熊本の誇る演歌歌手が歌い、ダンスあり、バンドありのまさにクリエイターミックスのイベントは非常に楽しかった。
アイドルヲタク的には、この日、いつもよりたくさんの人の前でステージをやったアイドルが、この日をきっかけにそれらの人を自分のイベントに呼べるかどうか。
この結果は今週末以降に出るだろう。
少なくとも、コアなヲタクだけが喜ぶアイドルが、たくさんの人に愛されるように羽ばたくためのきっかけを与えてくれた「くまもとクリエイターミックスフェスティバル」には感謝したい。

そして、今後の熊本のアイドルシーンの活性化を願う立場としては、外部のスポンサーがイニシアチブを取れるイベントだからこそ、いつものヲタクが内輪のノリで盛り上がるイベントではなく、あまりローカルアイドルを見る機会のない人でも気楽に足を運べ、「熊本にもこんな面白くかわいい女の子がいるんだ」と気づいてもらえるようなイベントになるといいなと願っている。

このイベントは、その可能性を秘めているように感じた。


初開催だったことでいろいろあったでしょうが、最後にちょっと思ったことをひとつだけ。
社長が「久々にライブハウスに来た」とライブハウスの臨場感を味わうことを目標にしていたイベントだったためアイドルの出演時には、いつものライブハウスの空気になっていましたが、やはりお気軽に楽しめるイベントにするには、ある程度、常連のアイドルヲタクが普段通り楽しむフロアと、それ以外のフロアは分けたほうがいいかなと感じました。もちろんそうやっていつも通り楽しむヲタクを否定はしませんが、Jリーグが全席ゴール裏だったら、誰もが観戦を楽しめるスタジアムとは言えないと思うんです。
具体的には、ファミリーや女性がゆっくり見られるように前方は椅子席を設けたほうがいいかなとは感じました。できれば、椅子席の撮影はスマホまでにしてカメラで撮影したい人とは席を分けるなどの工夫もあると、なおよいかなと感じました。
アイドルヲタクはそこにアイドルがいれば勝手に集まります。
できればこのイベントは、アイドルヲタク以外の人も楽しめる、アイドルが見られるイベントになったらと願っています。