NTMは後期免疫不全の病気という側面がある | 非結核性抗酸菌症を考える

非結核性抗酸菌症を考える

あっころと申します
2018年5月の健康診断で肺の結節影を指摘されました。
現在、非結核性抗酸菌症疑いで経過観察中です。
今後の治療や今できる健康対策など書いていきます。

今回、ちょっと難しいんですけどNTMの治療に

抗菌薬以外に免疫機能を調節する薬が今後考えられるかもしれない。

という話題です。

 

https://isegaoka-naika-clinic.com/archives/1405

伊勢丘内科クリニックの先生が

2019年4月の呼吸器学会の聴講内容をまとめてくださっています。

非結核性抗酸菌症の話題は最後のほうにありますので、スクロールして

探して読んでくださいね。お話は慶應義塾大病院の長谷川直樹先生です。

 

この中で目を引いた項目ですが、

NTM感染症は肺だけではない。

リンパ節、骨、関節、播種性感染症(HIV,抗INFγ自己抗体)

皮膚、軟部組織にも認める。

特に抗INFγ自己抗体が原因で後天的に播種性感染症を起こすのが

トピックである。と書かれています。

 

「抗INFγ自己抗体が原因で後天的に播種性感染症を起こす」

とはどういうことかソースを調べてみました。

https://www.kekkaku.gr.jp/pub/vol90(2015)/vol90no6p561-564.pdf

 

「生体内に侵入した抗酸菌が組織マクロファージなどに 貪食されると

,Interleukin-12(IL-12)が分泌されTリン パ球を刺激する。

刺激をうけたTリンパ球はInterferonγ(IFN-γ)を分泌し貪食細胞を活性化させ菌体の排除 を行う。

このIFN-γ_ IL-12軸は抗酸菌をはじめとする細 胞内寄生菌に対する生体防御において

非常に重要な位置 を占めている。

これらのサイトカイン,あるいはそのレセプターの完全・部分欠損は

抗酸菌感染症における先天 的な宿主要因であり,

幼少期より重症サルモネラ感染症 や播種性抗酸菌感染症を繰り返す

メンデル遺伝型マイコ バクテリア易感染症

(Mendelian susceptibility to mycobacterial disease: MSMD)として知られている。」

 

つまりばい菌が侵入すると、マクロファージ警備員さんがこらこらとばい菌を追っ払う

ついでにセコムに連絡しておまわりさんを呼んでくれるんですが、この仕組みのどこかに

不備があると感染症を繰り返す病気になっちゃうよと言うお話し。

 

「IFN-γ_IL-12軸が抗酸菌防御に重 要な役割をヒトにおいて果たしていることが

明らかにな っているが,近年になり背景に既知の免疫不全が存在し ない

播種性NTM症例から広く抗IFN-γ中和自己抗体 (IFN-γAb)が検出されることが報告され,

新たな播種 性NTM症に対する宿主要因として注目を集めている。」

 

播種性のNTM患者から免疫機能の仕組みに不備はなかったのに、

勝手に働かなくなっちゃう(抵抗性)部署が出来ちゃていることが注目されている。

つまりNTMは感染症なんですが後天性の免疫不全を起こす

リウマチなんかと同じように自己免疫の病気という側面もあるのです。

 

今までNTM患者には抗菌薬での治療が行われていましたが、

ちっともこの治療が効かない患者で体内の免疫の警備活動が不適切な患者

(抗IFN-γ中和抗体が存在)に

抗CD20モノクロ ーナル抗体であるRituximab(白血病などの治療薬)を

用いたB細胞を標的とし た治療が効果を上げることが報告されている。

 

今後の研究次第で、NTMに対して抗菌薬以外に免疫の欠陥部分を標的とした

免疫の薬が使用される可能性もあるとのことです。

個人によって免疫機能の不備はそれぞれで、その差が病状の差に

つながっているかもしれません。

活動しすぎは鎮め、不活動は活発に。免疫をいじるのは大変そうですが

上手にコントロールできれば、患者の選択肢が増えますね。