滋賀県議会で2011年に特定調停が行われた滋賀県造林公社問題について、滋賀県と兵庫県の貸付金の返済を予定通り行うのは困難であるとの表明があったようだ。

 


2011年の滋賀県造林公社問題に対して他の出資団体と異なり、債権放棄と長期貸付の継続対応を選択した兵庫県対応について、更なる県民負担の拡大の懸念があると反対討論を行ったのは当時1期生の私(討論内容は末尾)。懸念が全くその通りになった。


当時、議案は賛成多数で可決されたが、中身そのものよりも全く調べようともしなかった議員が多数いて、しかも、議会提出前に了承もしていないのに、与党会派が議案に反対するのはあり得ないという地方議会制度を議院内閣制と誤解している人が多くて、質すなわち人を入れ替えるしかないと思ったことを思い出す。


2011年2月28日の日記にそのことを少し記載しているので下記にリンクもあわせて記載しておく。


議案への反対という選択が初めてのもので、波風を立てようとしない当時としてはかなり重いもの。私にとっては反対は間違ってないという信念はあったものの、結果として当日、会派内の一部ベテラン議員の造反を招いた。自らの討論のあと、採決前に議場から退席する姿に大変驚いた。その行為そのものよりも示し合わせていたその行為の情報を事前に得ていなかったことが、私にとって足らざる部分もあったと思い返す案件でもある。


私がなぜこの問題に当時力を入れたのか。以前にも紹介したが、下記リンクに2007年12月25日の県議会行革特別委員会の議事録を載せている。このときは同じ1期目でも初当選の年であるが、既にこのときに滋賀県造林公社問題は明らかになっており、同じ分収造林事業を実施していた兵庫みどり公社についても調査し、債務超過の指摘もしている。


当時の判断は私が懸念していた通り県民負担を更に拡大させる見込みとなったことで誤っていたと言える。とはいえ、過去に遡って何かを問うことはできない。歴史を塗り替えることはできない。議会の判断は県民の判断でもある。こうした問題を検証し、次に繋げることが何よりも重要だ。県にはいま、この問題とは比較にならないような重要な案件が2つある。県立大学の無償化と県庁舎の建替え問題。事前に了承したわけでもなく、有識者機関らの提言でもない、選挙の公約でもない。判断を誤ってはいけない。

【反対討論】2011年2月28日 県議会本会議

私は、民主党・県民連合議員団を代表して、今定例県議会に知事から提出された第132号議案、社団法人滋賀県造林公社に対する「特定調停」の件に関して、審査を付託された総務常任委員会において、私たちの考えを主張し、質疑してきたところでございますが、本会議での賛否の態度を示すに当たり、県民の貴重な税金・財産を保全する観点から、我々の考え方について討論を行います。

 滋賀県造林公社は、琵琶湖周辺において造林、育林等、森林・林業に関する事業、その他緑化に関する事業を行うことにより森林の持つ水源涵養機能を高め、森林資源を造成すること等を目的とし、具体的には琵琶湖周辺の分収造林事業等を行う団体として昭和40年に設立されました。本県も、当時の高度経済成長に伴い増大した神戸・阪神地域の水需要に対応するため、大阪府、大阪市、兵庫県内の6団体とともに、出資・貸付を行うことによって琵琶湖の水源開発に参画してきたところであります。

 しかしながら同公社は、木材価格の下落や農林漁業金融公庫等からの借入金が増加したことから債務超過に陥ったとし、債務超過を解消するために平成19年11月、大阪地裁に旧農林漁業金融公庫及び滋賀県と本県を含む下流9団体に対して、債務免除を要請する特定調停の申し立てを行いました。大阪地裁では、各団体に対する調停条項案とそれに対する調停委員会からの意見書が出され、今年の1月にすべての債権団体が合計323億円の債権を放棄することで合意をいたしました

 これを受けて、本県でも、将来の弁済見込額を超える債権を放棄することとし、金額として債権額の約10億9,000万円のうち約9億円を放棄することとなりました。また、残る貸付金の約1億9,000万円については、今後の分収造林事業の収益を見込み、平成27年から平成63年までの36年間で受け取る長期分割弁済案を選択し、今議会に提案をされております。

 我が会派は、この問題が提起された3年前から、行革特別委員会、常任委員会等において警鐘を鳴らしてまいりました。それにもかかわらず、債権放棄額は当初に県当局が主張していた以上に県民の財産を著しく毀損させる結果となり、まことに遺憾であります。特定調停は、制度として、すべての債権者の合意が必要であり、もし本県のみが合意しなければ調停は成り立たず、そのことによって同公社が民事再生等の手続に至れば、回収金額が現在の合意案より低くなる可能性があります。さらに、他の府県市等の下流団体が債権放棄という痛みを受け入れる以上、本県だけが債権放棄を反対することはできず、我が会派も一部の債権の放棄については、やむを得ないものと判断しております。

 しかしながら、下流団体のうち、本県のみが選択しようとする長期分割弁済案は、今後の伐採収益が上がらなかった場合の保証はなく、経済の変動によって再び同じ結果を招けば、県民の貴重な税金・財産のさらなる毀損につながりかねません。また、弁済完了が現在から40年後の平成63年となり、その時点での責任の所在もあいまいとなります。長期分割弁済を選択した理由として、神戸・阪神地域の水需要の8割を琵琶湖・淀川に依存する本県は、水源県に対する下流県・受益県としての責任を果たす立場から選択したと説明されております。確かに、琵琶湖における水源涵養機能の維持は重要であることは認識しているところであり、本県も下流県・受益県としての立場から今後とも水源県に対する責任を負っていかなければなりません。

 しかしながら、一括弁済を受けても、本県は、引き続き同公社の出資者・社員としての立場で意見を具申することが可能であります。同公社が今後とも水源涵養等の公益的機能を持続していけるよう、水源県に対する責務を果たして行くことは可能であります。

 よって、今回の長期分割弁済の受け入れを前提とした本議案にはついては、県民財産の確保の観点から最善の債権保全策と言えず、他の下流団体と同じく一括弁済方法を選択するべきと考えることから賛同できず反対を表明いたします。各議員の賛同をお願いいたしまして、我が会派の討論を終わります。(拍手)