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叔母とは銀座のギャラリーで待ち合わせ。
銀座の広い通りは白く反射して目にギラギラと眩しかった。
かなり久しぶりの叔母は少し痩せて見えた。
2人でギャラリーを見て回る。
昔、よく行ったな。
叔母に連れられて美術館とか個展とか。
帰りの事を考えると渋谷に出るのが1番楽なので
最近、叔母がよく行ってる「えん」に行くことにした。
熱く焼けるアスファルトと埃っぽい空気に喉がカラカラになる。
まずはフローズンビールで乾杯。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170714/22/takeruairi/b9/f0/j/o0540096013982444351.jpg?caw=800)
ちりめんじゃこと明太子と大根のサラダ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170714/22/takeruairi/91/6d/j/o0540096013982444373.jpg?caw=800)
最初は近況とか職場の愚痴とか…
羽生くんの事とか…(笑)
「今日は時間を決めて飲もう!だって無制限に飲んでて、また怪我しちゃったら大変!」
そう。一年前、叔母と飲んでてベロベロになった帰りに怪我をしたから、叔母も心配してくれてる。
二杯目からは叔母は日本酒。
「花陽浴(はなあび)」という日本酒が最近のお気に入りだそうで、私に勧めるけど私はもう日本酒は家でしか飲まない事に決めていた。
ベロベロに酔わない自信がないからビールと、何とこの店には「塩レモンサワー」がある!
以降、ずっと塩レモンサワー。
生麩の味噌田楽と烏賊のワタ焼き
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170714/22/takeruairi/2d/2f/j/o0540096013982444405.jpg?caw=800)
「で、どうなの?最近は進展はあった?」
「進展なんて…あるわけないじゃない」
叔母の想い人は2~3ヵ月に1回、叔母の勤める病院に来る。
想い始めてもう3年。
叔母がその人の事を好いているのは、仲良くしてる同僚も知っているけど
「総合案内のKちゃんも、いいって思ってるみたいなの」
その人が病院に訪れるとニコニコ近寄って話しかけたり、何かプレゼントしてるらしい。
その人は来る度に叔母と、そして仲のいい同僚にも小洒落たお菓子を持ってきてくれる。
「とっても素敵なのよぉ」
その人の話をする時、叔母はとても嬉しそうで幸せそうで。
病院以外でも何度か飲みに行ったり食事したりしてるけど
「好き好き!って言ってもニコニコしてるだけなのよぉ」
それはそうだろう。
その人はいくつも既往歴があって、現在治療してる病気も楽観できるものではない。
そして何より家庭があるのだから。
「でもね、この前、入ってきた警備のおじさんが私に色々話しかけてくるの」
おじさんと言ったって叔母だって結構いい歳なのだからそんなに年齢は変わらないだろうと思ったけど、それは黙っていた。
先日、その人が病院に来て叔母と喋っていたら、警備のおじさんが叔母が何か聞かれて困っていると勘違いして間に割って入ってきたそうだ。
するといつもは叔母と別れてエスカレーターに乗ってもそのまま行ってしまうその人が、振り返り見ていたと。
「もしかしてヤキモチかなぁ?」
なんて自分に都合よく解釈してみたりして。
でもはしゃいで話してた叔母が、ふと…
「でもね…好きだった人が亡くなるって…寂しいものよ」
叔母の初恋の人は昨年、亡くなった。
それを3ヶ月も知らず。
友達から聞いた日の帰り、思い出の場所で大泣きしたという叔母。
「うん…そうだね」
私たちは少し黙って
今まで恋愛してきた人に、ちょっとだけ思いを馳せる。
「もう1杯飲もうか」
決めた時間なんて、とっくに過ぎていたけど
多分、私にとっても、叔母にとっても
叔母と姪というよりも
親友に近い存在。
長年、お互いの色んなところを見てきたから。
叔母の恋は実ることはないだろうけど
「ちょっと1歩…踏み出してみようかな」
若い人なら、きっと反対してた。
相手に家庭がある人なんて。
でも叔母の想い人には
もう未来の時間はそんなにないから
私はまた
「うん…それもいいかもね」
なんて、当たり障りのない言葉しか言えないんだ。
ホタテの酒蒸し。日本酒をちょっとだけ、舐める程度に分けて貰う。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20170714/22/takeruairi/80/43/j/o0540096013982444421.jpg?caw=800)
私の恋する相手も手の届かない人で
言葉を交わすことも
その瞳に映ることはないけど
それでも彼が元気なら私は幸せ。
「好きな人がいるって凄く幸せな事よねぇ」
その言葉に嘘はない、ほんのり上気して笑う叔母。
世の中に、たくさん恋はあるけれど
自分の恋はたった1つだけ。
1つだけのこの想いを
いつまでも大切に胸に抱いて生きていく。
それはもう
ずっとずっと…
いくつになっても少女のような叔母の
3年目に入った恋でした。
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