0.
前置きです。
高校入試制度は、時代とともに様々な変遷を経て、現在に至っています。
1960年代は、学歴競争が過熱した時代で、
内申を上げてもらうために、保護者が10万円を担任教師に支払ったことが発覚するという
事件もありました。(これは氷山の一角で、他にも少なからぬ例があったと推測されます)
偏差値がという言葉が闊歩し、序列上位の学校を目指して血眼になった時代で、
こうした事態を受けて、東京都では、1967年から学校群制度が導入され、
過熱競争の鎮静化が図られました。東京都以外にも幾つかの県で導入されました。
しかし、学校群制度は、後年、都立凋落を招いたと手酷く批判されることになります。
(もっとも、学校群制度が都立高校の大学受験実績を低迷させたという指摘については、
過大に言い立てられていると思われます。開成や麻布など私立の興隆は起こるべくして
起こったという側面があります。)
0-1.
高校入試関連教育行政施策としては、学校群制度以外にも、
1993年の業者テスト追放、というのがありました。
偏差値による序列意識が中3生のストレスとなり、いじめにつながっているなどと
指摘され、学校で業者テスト(偏差値の出るテスト)の実施が廃止されたというものです。
確かに以前は、業者テストが行われていませんでしたが(それ故に、三者面談で
全く的外れのことを言う先生がいたということは、保護者を通じて聞いています。)、
今では、少なくとも周辺の学校では、年間何度も業者テストが行われています。
0-2.
その他、枚挙にいとまがないほどに様々な入試制度の修正が行われています。
観点別評価を入試に取り入れるということが行われていた時期もありますが、
今ではごく一部の学校でだけ使われているに過ぎません。
過去15年間は、毎年のように総合学科の高校や公立中高一貫校が誕生していました。
そうした制度変更は、その時点としては最善を尽くして行われているものですが、
後年、全く別の評価が下されるという可能性もあります。
高校入試を活用する側としては、制度は制度として理解しつつ、
果たして何が子どもにとって重要なのか、ということは、
長い時間軸の上で捉えておく必要があります。
1.
「キンベンな生徒」の下線部を漢字に直すという問題。
”近便”、と書いてしまう生徒がいます。
便所が近い生徒???そんな言葉ありません。
それから、
She went there with him. という英単語のwithを、
”ウィッチ”と読んでしまう生徒もいます。
(当然ながら、正解は、それぞれ、”勤勉”、”ウィズ”、です。)
余程頭が悪い生徒だろう、と思われるかもしれませんが、
公立中学で、英語国語は平均をやや下回る程度で、それ以外の科目は平均をやや上回る成績
の中3生が実際に犯した誤りです。(何年か前の実例)
ごくごく普通の生徒です。
勤勉という漢字はこれまでも何度も読んでいるはずですし、
withという単語にもこれまで何度も出会っています。学校の教科書にも何度も出てきています。
それでも間違えてしまうものなのです。それが普通です。
しかし、だからといってそういう生徒に価値がないかと言ったらそんなことはなく、
運動能力に優れているという場合もありますし、
絵が上手という場合もありますし、
友人が多いという場合もあります。
偏差値という基準だけで子どもを判断するという思考自体が間違っていた訳で、
偏差値自体が悪者だったわけではありません。
2.
社会人ともなれば、能力を査定されたり、年収やステータスで評価されたりという
厳しい現実もあります。しかし、そういう評価軸で高い評価の人間だから
価値があるとは言い切れないというのも現実で、思い上がって他人を平気で罵倒したり、
暴力を使ったり、家庭崩壊に導くようなタイプも多いです。
個人的には、中学生を偏差値という評価軸で判断する側面が存在することは、
大きな問題ではないと思っています。
重要なのは、判断する側が、人間の価値に対して
豊かな認識を持っておくということです。
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