Ｄ君：「オレさ、将来、科学者になりたいな。」
母：「どうしたの急に？」
Ｄ君：「いろいろな薬品を混ぜたりしてさ、これまで誰も発見できなかったような薬を作し出すんだよ。」
母：「えらいわね～。それで困っている人の役に立とうっていうのね。」
Ｄ君：「役に立つ、っていうのはよくわからないんだけど、今までなかったような発明をしたいな。」
母：「あんた、えらいわ！、、、（とても、あのダメパパの子どもとは思えない。やっぱり、私の
育て方がいいのかしら。。。そうね、そういうことね。私の育て方がいいんだわ。イヒヒヒヒヒヒッ～）」
Ｄ君：「母さん、変な笑い方やめな。」
母：「あら、私としたことが。オホホホホッ～」
１．
認知心理学的では、人間の認知活動を、コンピューターの情報処理になぞらえる捉え方があります。
それを敷衍し、単純化すると、学習パフォーマンスは、
ＣＰＵ（中央演算処理装置）とソフトの組み合わせで捉えることもできます。
２．
ＣＰＵというのは、”素質””地頭””才能””知能””頭の回転の良さ”のようなものに相当します。
ＣＰＵがどれだけ高性能でも、それだけではなんのパフォーマンスも上げられません。
こういう問題はこう答えを出す、というソフトウェアが必要です。
ＣＰＵの性能をいじることは短期的には困難です。遺伝的な影響の強い部分です。
学習によって獲得できるのは、ソフトウェアの方です。
ソフトウェアと言っても、学習活動においては、知識を構造化した”スキーマ”のようなものです。
３．
現実的な受験対策を考えた場合、学習パフォーマンスの最大化が到達目標です。
ＣＰＵの性能は所与ですので、いかに限られた時間で、的確なソフト（スキーマ）を形成していくか、
が課題です。
具体的には、
どういう塾で、
どういう教材で、
どういう科目バランスで、
どういう勉強方法で、
勉強していくべきか、という選択に問題になります。
教材の難易度や授業の難易度、がスキーマ形成に最も大きな影響を持つ、というのが、私の実感です。
万人に最適な教材はなく、その個人のその時点での理解度に合わせた教材を選ぶことが、最も重要です。
これは中学受験に限らず、高校受験でも、大学受験でも同様です。
既有知識を活用して、推論することによって、人間は情報を処理していきます。
難易度が高すぎる場合、推論ができませんので、情報処理が十分にできません。
”消化不良”というのは、多くの場合、この現象のことです。
４．
仮に有名な著者によるものであったとしても、最難関クラス用に作られた教材は、
中堅クラス用としては不向きです。中学受験に挑むこどもたち同士といっても、
理解度に相当の差があるのが現実です。
ちょっと軽く説明しただけで内容をつかんでしまう子ども用に作られているのが、中学受験の
標準的なテキストです。中堅付近の学校を目指す場合は、基本的には、中学受験の易しめの
ものを選んで勉強した方が効果的です。
５．
認知心理学的なアプローチは、ややドライで冷たい印象を持たれるかもしれませんが、
学習という活動を冷静にとらえることに役立ちます。
例えば、子どもは想像力豊かな存在と捉えられることが多いですが、
認知心理学的には、あくまで既有知識を活用して推論した結果であり、
知識構造が大人とあまりに異なるだけに、大人からすれば突飛なように思われるだけで、
決して子どもだから想像力が豊かな訳ではない、と分析できます。
上の例で言えば、「将来何になりたいか」というのは、やはり、既有知識に大きく依存します。
Ｄ君は野口英世さんやエジソンのような伝記の影響を受けているのかもしれません。
６．※注
これは以前も書きましたが、人間の知能水準は、短期的には動かし難いですが、
５年、１０年というスパンでは、大きく変わる可能性があります。
現在の子どもの知能水準を決定的なものとは捉えるべきではなく、
あくまで今はこういう水準だ、と捉え、その現状に合わせて学習方法を選択するべきと思われます。
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