チョン・ミョンフン指揮 ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団来日公演(サントリーホール)
指揮:チョン・ミョンフン
ピアノ:藤田真央
ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団
ヴェルディ:オペラ『運命の力』序曲
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 Op. 58
(ソリスト・アンコール)
シェーンベルク:6つの小さなピアノ曲 Op.19-4, Op.19-5
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 Op. 98
(アンコール)
マスカーニ:オペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ』より間奏曲
ロッシーニ:オペラ『ウィリアム・テル』序曲~行進曲
イタリア最高のオペラハウスであるミラノ・スカラ座のオーケストラ。指揮は、2027年からミラノ・スカラ座の音楽監督に就任する予定のチョン・ミョンフン。彼ももう72歳なのである。
ミラノ・スカラ座のオーケストラの音を聴くのは2013年、ミラノ・スカラ座来日公演以来だ。
このオーケストラ、イタリアのよそのオーケストラの破天荒なまでの明るさに比べるととても上品で落ち着いた響き。いぶし銀を思わせるような、いかにも古い音がするのである。
一方で、機能的にはそれほど高いレベルではなくて、そこはいかにもイタリア的な緩慢さがある。
今回の演奏、あまりに緩い部分が多くて、正直がっかりであった。このレベルでS席38,000円はあまりにも高い。前に来日したときは普通によかったのだが…
チョン・ミョンフン、なんとなくくたびれた感じで登場。
ヴェルディ「運命の力」、冒頭の金管からいきなりキズがある。チョンに向いている曲だと思うのだが、切れ味はよろしくなく、なんとももったりとしていて爽快なところがない。アインザッツもバシッと決まらないのでモヤモヤ感が残る。16型。
続いて演奏された藤田真央のソロによるベートーヴェンの4番。昨年、山田和樹指揮モンテカルロ・フィル来日公演で聴いた3番同様に、通常のベートーヴェン演奏とは一線を画する、柔らかなタッチの演奏だ。
https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12853866712.html
ただ、私の座席のせいなのか、ピアノの低音が軽めであまり手応えがなく、どうも上滑りしているような印象なのである。12型かと思われるオーケストラも軽めで重厚感がなく、どうも物足りない。オーケストラはここでもアインザッツの乱れが散見された。
私はチョン・ミョンフンのベートーヴェンは結構好きで、かつて東京フィルと録音した交響曲全集は、スコップでえぐるようなエッジの効いた表現が実に素晴らしかったのだが、今回の演奏、全くエッジが効いておらず、スコップでえぐる感覚も皆無…。
真央君はアンコールになんと無調の曲を選択。こういう尖ったアンコールをどんどんやってほしい。モンテカルロ・フィルとの来日の2日目では、矢代秋雄を弾いた実績もある。
後半はブラームスの4番(16型)。チョンが得意とする曲であり、私は過去にシュターツカペレ・ドレスデンや東京フィルで聴いたことがある。
今回の4番、チョンの独特のフレージングやタメを聴くことができたものの、オーケストラがそれに機敏に反応することができず(あるいは慣れておらず)どうもしっくりこない。極めつけは第2楽章、冒頭のホルンのファンファーレの後、チョンが突然変なタメを作ったから(?)なのかわからないが、一時アンサンブルが完全に崩壊。
アンコールのカヴァレリア・ルスティカーナではイタリアのオケらしい歌心が、ウィリアム・テルではチョンらしい推進力を聴くことができて悪くはなかったのだが。
19時開演で、21時15分ごろの終演。藤田真央出演とあって、会場はほぼ満席、女性比率が高かった。
総合評価:★★☆☆☆