サー・アントニオ・パッパーノ指揮ロンドン交響楽団来日公演を、サントリーホールにて。

 

指揮:サー・アントニオ・パッパーノ

ピアノ:ユジャ・ワン

 

ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」 op. 9

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第1番 嬰ヘ短調 op.1(ピアノ:ユジャ・ワン)

(ソリスト・アンコール)

グルック(ズガンバーティ編):精霊の踊り

シューベルト/リスト:糸を紡ぐグレートヒェン D118

 

サン=サーンス:交響曲第3番 ハ短調 op.78 「オルガン付」(オルガン:リチャード・ゴーワーズ)

(アンコール)

フォーレ:パヴァーヌ op.50

 

ロンドン交響楽団、2年ぶりの来日公演。この9月からロンドン交響楽団(LSO)の首席指揮者となる英国の名指揮者、サー・アントニオ・パッパーノとの来日である。パッパーノは、この6月に22年音楽監督を務めた英国ロイヤル・オペラと来日したばかりであり、今年2度目の来日となる。

英国で最高のオーケストラであるLSO、その底力が実によくわかる演奏会であった。

 

冒頭に演奏されたローマの謝肉祭、事前に想像していたのと全く同じ音で始まったのがうれしい。どうしてここまで濃く、太く、濃密で艶やかな音がするのだろうか?英国の他のオケ、フィルハーモニア管や、つい先日来日したばかりのロンドン・フィルと比べると、音の密度、機能性とフレキシビリティという点で圧倒的にLSOに軍配が上がるだろう。コールアングレのソロの音色にはたまげた。N響など日本のオーケストラも相当上手くはなっているが、こうした音色を聴くとやはりまだまだ欧米のトップオーケストラとは差があるということを思い知らされる。

パッパーノの指揮は割と実直で、デュトワのようなエレガンスや鮮やかさは感じられないが、その分オーケストラの素晴らしい音色を存分に引き出していた。

 

2曲目はユジャ・ワンが弾くラフマニノフ、なぜか1番!ユジャは2015年にコンセルトヘボウ管と来日したとき、チャイコフスキーのマイナーなピアノ協奏曲第2番を演奏したことがあったが、ラフマニノフでも2番、3番ではなく1番というところがミソだ。ユジャのピアノは変わらず強靱な打鍵、完璧なテクニックと研ぎ澄まされた弱音が見事で、このマイナーな1番の協奏曲でも非常に華やかな印象を受ける。

オーケストラは金管が特に素晴らしく、立体的な膨らみを持っていて輝かしい。

ユジャは今回も派手なボディコン(死語)のドレスに高いピンヒールで登場。あのピンヒールでペダルを踏めるのだろうかと心配になってしまう。ピョコンとしたお辞儀は相変わらずだ。アンコールはグルックとシューベルトを続けて演奏。

 

後半はサン=サーンスのオルガン交響曲。

LSOの音は非常に濃厚で密度が濃く、かなり重たいイメージに仕上がっていた。パッパーノ、テンポが全体に遅めなのでさらに重さが際立つ。個人的にはもう少し速めのテンポで軽やかな演奏が好きなのだが。学生時代に慣れ親しんだのが華やかなマルティノン指揮フランス国立管で、実演ではシャルル・デュトワの繊細かつ鮮やかな演奏が好みなのである。今回のパッパーノといい、5月に来日した山田和樹指揮モンテカルロ・フィルといい、なぜこう間延びするほどテンポが遅いのだろうか。

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12853994929.html 

ところで、今回、第1楽章第2部で、弦がディヴィジされていることに初めて気付いた…

第2楽章第1部で、ピアノの隣でサスペンド・シンバルを叩いていたオジサンが第1部の終わりにさっとピアノに移動し、第2楽章第2部のピアノ連弾に加わった。シンバルとピアノを掛け持ちとは。かっこいい!ところがその連弾の冒頭が、どうやら譜面の別の場所を開いていたようで完全に欠落…このピアノ連弾は色々と事故が多い箇所ではある。

 

アンコールはフォーレのパヴァーヌ。フルートのソロがとても繊細でいい音である。

 

弦は前半が14型、後半が16型で、ヴァイオリンは両翼配置、ヴィオラが左手奥、チェロとコントラバスは右手奥という配置だった。

 

総合評価:★★★★☆