山田和樹指揮 モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団来日公演を、サントリーホールにて。

 

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲

ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調 [ピアノ独奏:藤田真央]

(ソリストアンコール)

矢代秋雄:夢の舟(山田和樹との連弾)

矢代秋雄:24のプレリュードより 第9番

 

サン=サーンス:交響曲 第3番 ハ短調 Op. 78, R. 176 「オルガン付」 [オルガン:室住素子]

(アンコール)

F.シュレーカー:舞踏劇『ロココ』より 第3番 マドリガル

ビゼー:『アルルの女』第2組曲 ファランドール

 

前日に引き続き、山田和樹指揮モンテカルロ・フィルの来日公演。この日はフランスもので固められたプログラムである。前日同様、協奏曲14型、その他16型。満足度は、前日のプログラムにはかなわなかった。

 

冒頭に演奏されたドビュッシー、フランス語圏のオーケストラらしい音楽話法で、しっとりした各ソロが美しい。もっとも、アンサンブルの洗練度合いで言うとパリやトゥールーズには一歩譲るかもしれない。

 

2曲目は藤田真央が弾くラヴェル。前日に聴いたベートーヴェンの3番同様、彼のタッチは非常にたおやかで、この日のラヴェルも、例えばアルゲリッチのような強靱な打鍵の情熱的な演奏とは一線を画する。テンポも、オーケストラとのかけ合いはともかく、ソロになるとテンポをぐっと落としてじっくりと弾き込むようなところがある。個人的には、少々違和感があるアプローチであり、オーケストラとの対決といった雰囲気はない。第3楽章も高揚感なく、正直音楽が死んでいるのでは?と思っていたら、エンディング直前になってヤマカズが指揮台から飛び降りてヴァイオリンセクションをぐいぐいと煽りだし、フィニッシュに向けて一気に音楽をエキサイティングに盛り上げていった。こういうところの瞬発力は本当にさすがだと思う。ただ、オーケストラはテンポが速い部分では少々粗さが目立った。

アンコールはまず、ヤマカズとの連弾で矢代秋雄の「夢の舟」。以前N響で、河村尚子が山田和樹の指揮のもと矢代秋雄のピアノ協奏曲を弾いたのだが、そのときのアンコールもこの曲だった(ただし、岡田博美による独奏編曲版)。前日のベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番のカデンツァも矢代秋雄。そして、アンコール2曲目は真央君のソロで矢代秋雄のプレリュードから9番。今年、矢代秋雄の周年だったっけか?生誕95周年ではあるのだが。

 

後半はサン=サーンスのオルガン付交響曲。来年2025年6月15日に、ヤマカズはベルリン・フィルの定期演奏会にデビューするのだが、そのときのメイン・プログラムがこの曲なのである。

全体としてテンポがやや遅めであり、細かいところをじっくりと歌わせる傾向があるが、ロマンティックな第1楽章第2部が遅いのはいいとしても、第2楽章第1部が遅いのは緊迫感を欠き、壮大な第2楽章第2部も推進力が弱い。この曲は適度なテンポ設定でないと間延びしてしまうのである。オーケストラ、音色はとてもいいけれど、トゥッティで音が団子になってしまうところがあった。

ヤマカズのアプローチ、前日やりたい放題だった幻想交響曲に比べると極めてオーソドックスで安全運転。この曲であまり暴れると事故が起きるリスクがあるのは確かだが、幻想に比べるとインパクトは圧倒的に弱い。

前日に比べて演奏時間が短いからか、アンコールは2曲。1曲目は全く聴いたこともないゆったりした曲だったのだが、なんとナチスに迫害されたユダヤ人作曲家、シュレーカー(1878〜1934)の作品であった。ヤマカズのこだわりが見て取れる。最後は前日と同じファランドール。昨日と同じプロヴァンス太鼓が置いてあったのでこれは予想通り。地中海的な音色で血湧き肉躍るこの曲はやはり素晴らしい。

 

総合評価:★★★☆☆