NHK交響楽団第2014回 定期公演 Cプログラム2日目を、NHKホールにて。

 

指揮:沖澤のどか

ピアノ:デニス・コジュヒン

女声合唱:東京混声合唱団*

 

イベール/寄港地

ラヴェル/左手のためのピアノ協奏曲

(ソリスト・アンコール)シューマン:トロイメライ

 

ドビュッシー/夜想曲*

 

2019年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝者である沖澤のどか、初のN響定期出演である。私は彼女の指揮を2022年セイジ・オザワ松本フェスティバルにおける「フィガロの結婚」で初めて接したのだが、非常に安定感がありはつらつとした音楽作りをしていたことを覚えている。

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今回のN響定期でも、しっかりした棒さばきで安定した指揮ぶりで、非常にわかりやすい棒を振る人だと思った。身体は小柄なので、指揮姿の視覚的印象はどうしても地味なのだが。

 

今回はフランス音楽3曲。

 

1曲目の寄港地、先日ノット指揮東響で聴いたばかりである。音色はそこまでフランス的というわけでもなかったのだが、ドゥナーミクの幅が広くメリハリが効いている。今更ながら打楽器セクションの優秀さに感心。16型。

 

2曲目はロシアのピアニスト、デニス・コジュヒンが弾くラヴェルの左手。コジュヒンは2017年にもN響定期に出演し、パーヴォ・ヤルヴィの指揮でラフマニノフの協奏曲第4番を弾いたが、曲がマイナーだったこともありほぼ記憶にない。しかし今回のラヴェルはなかなか素晴らしい!情熱的でとても品の良いアプローチだが、強靱すぎない適度の力強さが感じられる。冒頭のコントラファゴットがとてもいい音で、しっかり音程が感じられたのがよかった。エンディングの開放的で抜けるような音響が見事。

アンコールはトロイメライ。つい先日、チョ・ソンジンがアンコールで弾いたばかりだ。クールダウンするにはもってこいのしっとりとした音色で、音響の悪いNHKホールにもかかわらず、3階の私の席までしっかりとまろやかな音が聞こえてきた。

 

最後はドビュッシーの夜想曲。大好きなこの曲を全曲演奏してくれるのは嬉しい限りだ。というのもこの曲、第3曲をカットして第1曲「雲」第2曲「祭り」しか演奏されないケースが圧倒的に多いからだ。第3曲には女声合唱が入るため、経済効率が悪いということだろうか?全3曲を実演で聴いたのは、2008年12月N響定期、シャルル・デュトワの指揮以来である(このときは夜想曲が前半に演奏され、後半は同じ女声合唱が入る「惑星」だった)。ちなみにこの曲、録音ではジャン・マルティノン指揮フランス国立管の演奏が圧倒的に素晴らしい。

沖澤の指揮はここでも抜群の安定を示しており、フランス的エスプリよりも明快でわかりやすい音楽作りが優先していたように思う。第3曲の女声合唱はステージ左手に配置されていた。舞台裏でもよかったと思うが。というのも、ステージ上でダイレクトに声が聞こえると、あまり幻想的な雰囲気がなくなるからだ。

 

今回の公演、正味演奏時間が小1時間で、トータル1時間20分ぐらい。2023/2024シーズン最後の公演であり、休憩なしのC定期最後の演奏会でもある。来シーズンからはコロナ前に戻って休憩あり公演となるからだ。

 

総合評価:★★★☆☆