モーツァルト:「フィガロの結婚」をまつもと市民芸術館にて(27日)。

 

出演

アルマヴィーヴァ伯爵:サミュエル・デール・ジョンソン

伯爵夫人:アイリン・ペレーズ

スザンナ:イン・ファン

フィガロ:フィリップ・スライ

ケルビーノ:アンジェラ・ブラウワー

マルチェリーナ:スザンヌ・メンツァー

バルトロ:パトリック・カルフィッツィ

バジリオ:マーティン・バカリ

ドン・クルツィオ:糸賀 修平

バルバリーナ:経塚果林

アントニオ:町 英和

合唱:東京オペラシンガーズ

 

演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ

指揮: 沖澤 のどか

演出: ロラン・ペリー

演出:ローリー・フェルドマン

装置 :シャンタル・トマ

衣裳:ロラン・ペリー&ジャン=ジャック・デルモット

照明:ドゥエイン・シュラー

照明デザイン補 :リー・フィスクネス

合唱指揮:根本 卓也

チーフ音楽スタッフ:デニス・ジオーク

 

正直それほど期待していた公演ではなかったのだが、これが驚くほど高いレベルの公演であった。さすが、セイジオザワフェスティバルである。全3回の公演のうち、今回が最終公演。

 

まず、歌手の水準が極めて高い。なかでも傑出していたのが、スザンナを演じた中国人ソプラノ、イン・ファンである。スザンナはほぼ出ずっぱりなのでこの役は非常に重要だが、すみきってよく伸びる声はとてもこの役に合っているし、そのうえ演技の表情も豊かだ。フィガロ役フィリップ・スライ、アルマヴィーヴァ伯爵役サミュエル・デール・ジョンソンの二人の男声歌手も極めて水準が高い。二人とも比較的シャープで若い声である。参考までにフィリップ・スライは2017年カンブルラン指揮読響によるメシアン「アッシジの聖フランチェスコ」に出ていた人。

伯爵夫人役アイリン・ペレーズ、すでにベテランの域であるが、この役としてはもう少し声の深みと気品が欲しいところ。この人、2010年(もうそんなに前のことだとは驚きだが)の英国ロイヤル・オペラ来日公演「椿姫」で、絶不調で1幕で降板したエルモネラ・ヤオの代役として2幕から歌った人である。

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-10647029584.html 

ケルビーノ役アンジェラ・ブラウワー、こちらも安定しており安心して聴いていられるが、ズボン役で極めて重要なこの役としても魅力というか…なんか、あまり感情移入できない。マルチェリーナ役スザンヌ・メンツァーはかなりのベテランで、声がどうこういう以前に存在感が抜群だ。カーテンコールではこの人への喝采が一番大きかった。

他の歌手も極めて高水準であった。

 

そして沖澤のどか指揮のオーケストラがこれまた予想以上に素晴らしかったのである。12型でピットに入っている音は、新国立劇場で聴き慣れたオーケストラの音とは比べられないぐらいに芳醇で美しい。沖澤のどかの指揮は今回初めて聴いたが、はつらつとした表情で活気が感じられる音楽を作っていた。奇をてらうところが一切ない正攻法の解釈である。

 

演出はロラン・ペリー。サンタフェ・オペラのプロダクションが使用されている。ロラン・ペリーらしく色彩に富んだ美しいステージだが、まあそれ以上の感想はあまりない。ステージが回転式になっており、あちこちに歯車が見えるからこれはオルゴールなのか時計なのか。第3幕の最後、ステージ右端で大きな効果音が聞こえて終わったのだが、私の席からはよく見えず何が起こったのかよくわからなかった。

台詞も、普段このオペラを観ていて笑えるとことでなぜかあまり面白く描かれていないと思われるところがあったのはなぜだろうか。

 

会場にはシャルル・デュトワご夫妻の姿もあった。完売ゆえにまつもと市民芸術館は大混雑。このホール、久しぶりに来たが、導線が非常に悪く、特にトイレはひどい。細い通路の奥に男子トイレ、女子トイレがあるのだが、そこに入る人の列が2列、そしてトイレから出てくる人の列で合計3列が細い通路に出来ていた。会場から退出する際も大変時間がかかる。まあこれは改善しようがない話ではあるが。

 

総合評価:★★★★☆