NHK交響楽団第2008回 定期公演 Cプログラム2日目を、NHKホールにて。
指揮:クリストフ・エッシェンバッハ
ブルックナー/交響曲 第7番 ホ長調
現在84歳になるドイツの巨匠、クリストフ・エッシェンバッハのブルックナー7番。
正直言うと全然期待していなかったのだけれど、これは記憶に残る名演奏である!私はN響定期ABC全ての会員であるが、ごくたまにこういう演奏に当たるから会員をやめられないのだ。正直、年に1回あるかないか。
意外なことに、自分がエッシェンバッハのブルックナーの実演を聴くのはこれが2回目。もっと多いと思っていたのだが。1回目は2011年、ウィーン・フィルと来日したときの4番。これも大変な名演だった。
https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-11051379779.html
エッシェンバッハはブルックナーよりもマーラーを得意としている印象が強いが、当たりはブルックナーの方が断然高いというのが今日の結論。
オーケストラは16型対向配置、マエストロは暗譜での指揮だった。
第1楽章の冒頭の悠揚たる表情が、この日名演になることをすでに暗示していた。テンポ設定が抜群によい。かなりゆったりしたテンポだ。エッシェンバッハといえば、割と変態的な解釈が多く私はそれが好きだったのであるが、今回のブルックナー7番は84歳という老境に達したマエストロの、まさに枯淡の境地。全くクセのない自然な表現なのである。自然な表現といっても、ブロムシュテットのあの宗教的確信とも言えるような表現とも異なっていて、ほんのわずかに世俗的な余地も残されている。
金管を鳴らすときはトランペットがほんのわずかに強めだったか。節度を保ちつつよく歌うチェロセクションが素晴らしい。第2楽章もテンポ設定が見事で、淡々とした表現ながら一歩一歩階段を上っていくさまが感動的。シンバルとトライアングルが鳴るクライマックスでは胸が熱くなってしまった。第3楽章以降、金管に若干の粗さは出てきたが音楽の推進力は強く、説得力ある音楽が展開された。フィナーレの最後の音もしっかりと余韻が残り素晴らしい体験となった。
オーケストラは特に木管が見事で、客演のオーボエ、吉井瑞穂さんの音は本当に素晴らしい。抜群に上手いが個性的とは言えないN響のなかで、ひとり主体的に、musizierenしている姿が素晴らしいと思った。彼女の音はまさにマーラー室内管やルツェルン祝祭管の、あの全員参加型のメンバーの音なのである。コンサートマスターはこの4月からN響ゲスト・コンサートマスターに就任した川崎洋介氏。非常にいい感じでオーケストラをリードしている。今後の活躍が楽しみな方だ。
土曜日のC定期、この日はムーティのアイーダとも重なり、2階席などかなり空席が目立ったがもったいないことである。終演後、指揮者へのソロ・カーテンコールあり。
総合評価:★★★★★