クリストフ・エッシェンバッハ指揮ウィーン・フィルハーモニーの来日公演を、サントリーホールにて。曲目は

モーツァルト:交響曲第34番ハ長調K338

ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」


マエストロ・エッシェンバッハは最高だ!私はかつてから、ごくノーマルなクラシックファンにはあまり賛同されることがないであろうこの変態的な巨匠のことをことあるごとに賞賛し続けてきたが、それでも今日ほどすごいと感じたことはかつてないかもしれない。


後半のブルックナー、これが驚くべき名演だったのだ。


冒頭の弦のトレモロの厚みも見事であるが、弦の音が鳴り始めてからホルンが鳴るまでの時間の長いこと!実にスケールの大きな、息の長い音楽なのだ。金管の強奏は非常に力強く、ウィーン・フィルにしてはかなりエネルギッシュ。かと思うと、弱音部分は驚くほど彫りが深い音楽になっていて磨き上げられている。ウィーン・フィルの来日公演で、これだけの完成度の演奏はそうそうないのではなかろうか。

この曲、録音・実演を通して相当な回数を聴いてきたが、第4楽章のコーダの悠揚たる運び、ここは今まで聴いたあらゆる演奏のなかでも最高で、本当に感激して涙が出そうになった。この曲の第4楽章って、3楽章までに比べるとなんかださいな、というイメージがあったのだが(ブルックナーの交響曲って、第4楽章が弱いと思っていた)、今日の驚くべき演奏を聴くと今までブルックナー先生の書かれたフィナーレにいかに失礼な感想を持っていたのかを痛感する。

後半は弦14型対向配置、1stVnキュッヒル、シュトイデ、2ndVnリッシー、Vlaコル、Vcバルトロメイ、Flシュルツ、Hrトムベック、Timアルトマン、あとは私にはわかりませんので詳しい方のHPをご参照ください。Obはチューリッヒ歌劇場首席のBernhard Heinrichsとの情報。

http://www.kammerorchester.com/de/artists/view?id=2733

それにしても、引退後のアルトマンのティンパニでブルックナーが聴けるとは思わなかった。この人が叩くと、ウィーン・フィルの音は抜群に締まって、いかにもウィーン・フィルの音になるから本当に不思議だ。

前半のモーツァルトは10-10-8-6-3。サントリーでこの編成だと少々響き過ぎるが、こちらはオーソドックスな名演。エッシェンバッハよりもウィーン・フィルのパワーが強い演奏だった。こちらのObの金髪美人はシュターツカペレ・ドレスデンの首席のフランス人、セリーヌ・モイネとの情報。彼女のウェブサイトに、はっきりとウィーン・フィルのツアーに同行することが記載されている。

http://celinemoinet.com/news

それにしても、オーボエのトラ2名もかなりのレベルのオケから首席を連れてきているところはさすがウィーン・フィルである。


これだけの水準の演奏のあとである。当然アンコールなどない。オケが引いたあと、マエストロ・エッシェンバッハが呼び出されて喝采を浴びた。


今日の客席はほぼ満員。毎年のことだが、ウィーン・フィル来日公演の客席はとても静かだ(今日は一部例外もあったが)。ウィーン・フィルやベルリン・フィルの来日公演の客席の静かさは驚くほどである。

毎年のことながら、楽友協会のアーカイヴのオットー・ビーバ博士(音美波)の曲目解説(無料!)は非常に参考になる。そんじょそこらの曲目解説とは全く異なる視点のものだ。