東京・春・音楽祭The 20th Anniversaryワーグナー『ニーベルングの指環』ガラ・コンサートを、東京文化会館大ホールにて。
舞台祝祭劇『ニーベルングの指環』より
序夜《ラインの黄金》より第4場「城へと歩む橋は……」〜 フィナーレ
ヴォータン:マルクス・アイヒェ(バリトン)
フロー:岸浪愛学(テノール)
ローゲ:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)
フリッカ:杉山由紀(メゾ・ソプラノ)
ヴォークリンデ:冨平安希子(ソプラノ)
ヴェルグンデ:秋本悠希(メソ・ソプラノ)
フロースヒルデ:金子美香(メゾ・ソプラノ)
第1日《ワルキューレ》より第1幕 第3場「父は誓った 俺がひと振りの剣を見出すと……」〜第1幕フィナーレ
ジークムント:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)
ジークリンデ:エレーナ・パンクラトヴァ(ソプラノ)
第2日《ジークフリート》より第2幕「森のささやき」〜フィナーレ
第2場「あいつが父親でないとは うれしくてたまらない」―森のささやき
第3場「親切な小鳥よ 教えてくれ……」〜第2幕フィナーレ
ジークフリート:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー(テノール)
森の鳥:中畑有美子(ソプラノ)
第3日《神々の黄昏》より第3幕 第3場ブリュンヒルデの自己犠牲「わが前に 硬い薪を積み上げよ……」 [試聴]
ブリュンヒルデ:エレーナ・パンクラトヴァ(ソプラノ)
指揮:マレク・ヤノフスキ
管弦楽:NHK交響楽団(ゲスト・コンサートマスター:ウォルフガング・ヘントリヒ)
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
東京・春・音楽祭も今回で20周年。この音楽祭のおかげで、従来では考えられない水準のワーグナーが日本で聴けるようになったことは疑う余地がない。特に、今回もタクトを執るドイツの巨匠、マレク・ヤノフスキがN響を振ってワーグナーを上演し始めた2014年以来は特にそう言えるだろう。
今年の「トリスタンとイゾルデ」、そして今回のワーグナー・ガラにおけるオーケストラの重厚でゴツゴツとした響きは驚くほどであり、昔の日本のオーケストラの薄っぺらいワーグナーとは比べものにならないレベルである。
今回のガラコンサート、3時間ぐらいやるものと思いきや、前半・後半それぞれ45分程度の短いプログラムであった。どうせならもう1曲ぐらいやってくれてもよかったのだが…
先日の「トリスタンとイゾルデ」で見事なクルヴェナールを歌ってくれたアイヒェ、今回は「ラインの黄金」のヴォータンで出番少なし。美声だが、彼の声はヴォータンよりもクルヴェナールかもしれない。
ローゲ、ジークムントそしてジークフリートを歌ったヴォルフシュタイナーは一昨年の東京・春・音楽祭「ローエングリン」でタイトルロールを歌った人であった。
https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12735009792.html
正直、見た目はオジサンなのだが、声に若さはないものの、確かにヘルデン系でいい声である。
そしてジークリンデとブリュンヒルデを歌ったバイロイト歌手パンクラトヴァ、ちょっとクセがある声といっていいだろうか。なんとなくワーグナー・ソプラノとして違和感があるのは、ドイツ語の発音のせいか?まあ私にはわからないが。ブリュンヒルデはオーケストラの音量に負けているところがあったのは意外。
ヤノフスキの指揮は謹厳実直、一切妥協を許さない姿勢であるが、例えばワルキューレ第1幕で、トネリコからノートゥンクを引き抜くシーンなどであっさりと音楽が進んで行くのはいかにもこの人らしい。この指揮者は基本的に見得を切らないのだ。
オーケストラは16型、コンサートマスターはヤノフスキが首席指揮者を務めていたドレスデン・フィルのコンサートマスターであるウォルフガング・ヘントリヒ。この人は指揮者でもあるらしい。オーボエは客演で東京フィルの荒川文吉氏。
会場はものすごい人でほぼ満席、そして会場の外は桜満開とあってこれまた花見客と観光客でごった返していた。コロナ渦の閑散とした雰囲気が遠い昔に思われる。
総合評価:★★★★☆