ディオティマ弦楽四重奏団 シェーンベルク 弦楽四重奏曲 全曲演奏会を、東京藝術大学奏楽堂にて。

 

ディオティマ弦楽四重奏団

 ヴァイオリン:ユン・ペン・ジャオ、レオ・マリリエ

 ヴィオラ:フランク・シュヴァリエ

 チェロ:アレクシス・デシャルム

ヴィオラ:安達真理

チェロ:中 実穂ソプラノ:レネケ・ルイテン

曲目

シェーンベルク:

 弦楽四重奏曲 第3番 op.30

 弦楽四重奏曲 ニ長調

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 弦楽四重奏曲 第1番 ニ短調 op.7

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弦楽四重奏曲 第4番 op.37

 弦楽四重奏曲 第2番 嬰ヘ短調 op.10(ソプラノと弦楽四重奏版)

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プレスト ハ長調

 スケルツォ ヘ長調

 《浄められた夜》op.4

 

今年生誕150周年となるアルノルト・シェーンベルク(1874〜1951)を記念した、弦楽四重奏曲全曲演奏会。さすが東京・春・音楽祭、なんという素晴らしい企画だろうか?自称クラオタとして、これは行かないわけにはいくまい。行く一択!

ということでチケットを購入したのだが、公演が近づくとかなり不安になってきた。よく知っている曲は「浄められた夜」のみ。弦楽四重奏曲はCDも持っていて聴いたことはあるものの、一断片として記憶に残っていないのだ。そして、14時開演・20時終演予定の6時間耐久レース。これは修行を超えて苦行の域に達した企画ではないか?

そんな不安のなか行ったコンサートだが、素晴らしい体験であった。行ってよかったとつくづく思っている。感動した、というのとは違うのだが、極めて貴重な機会だった。

休憩は3回で、ニ長調の後に30分、1番の後に1時間(浅井佑太(お茶の水女子大学音楽表現コース 助教)氏によるスペシャルトークあり)、2番の後に30分。

 

冒頭の3番、いきなり無調の尖った曲でちょっと戸惑うわけだが、構成とか話法は意外に伝統的なのでそこまでの違和感はない。番号がないニ長調の四重奏曲は習作ということなのだろうが非常に聴きやすく、シューベルトやドヴォルザークを彷彿とさせる作風で、すでに完成度は非常に高い。この曲やあとに演奏されたプレスト、スケルツォは習作だが、非常にレベルが高い。こうした習作を聴いて、私はピカソが少年時代に書いた(確か)老人の肖像画が、写真のように精確だったことを思い出した。

1番は調性があるが、すでに習作の域は超えていて細かい部分の洗練度合いが見事。この作風でずっと作品を書き続けてもよかったのでは、と思うほどだった。

第4番はアメリカに渡ってからの作品で、甘さはなく円熟した筆致が見られるが、様式は極めて古典的である。第2番、ソプラ音が3、4楽章に入ることが記憶にある曲だが、かなり難解なイメージである。2日前にリサイタルを開いたレネケ・ルイテンの深みある歌唱が印象的だった。

最後に演奏された「浄められた夜」、弦楽合奏でなじんでいるのでオリジナルの六重奏で聴くとまた新鮮に感じられる。さすがにこのあたりは少し疲れが見えたか。

 

今回1,100人入る奏楽堂に来た聴衆は500名弱。ディオティマが同じ企画をかつてドイツのハノーファーでやったときは、200名程度だったそうだ。東京のオタク層恐るべし!

 

ちなみにディオティマ、2016年に来日し、吉祥寺シアターでシェーンベルクの3、4番を演奏している。そのときの第2ヴァイオリンは女性奏者だったはず。

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12194661757.html

このディオティマ、創立以来結構メンバーが替わっているようで、創立当初の第1ヴァイオリンは千々石英一氏(パリ管副コンサートマスター)だったようだ。

それにしても、シェーンベルクの弦楽四重奏曲は録音で聴いてもあまりその真価がわからなかったのだが、空間の拡がりがある実演で聴くと、その精妙な響きがよくわかってよさが実感できたと痛感。

 

さて久々の奏楽堂。ホールのへそに当たるかなりいい席を取ったつもりだったが、響きすぎて音がふわふわと安定しない。そして、椅子の座り心地の悪いことと言ったら!

しかし桜が咲き乱れる4月上旬の上野のコンサートはとても気持ちがいい。

 

総合評価:★★★☆☆