ディオティマ弦楽四重奏団の演奏会(2日連続)を、吉祥寺シアターにて。

 

第1日目

シェーンベルク:弦楽四重奏曲第3番

ブーレーズ:『弦楽四重奏のための書』より IIIa, IIIb, IIIc, V

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第14番 嬰ハ短調 op.131

 

第2日目

シェーンベルク:弦楽四重奏曲第4番

ブーレーズ:『弦楽四重奏のための書』より VI

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ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第15番 イ短調 op.132

 

実は恥ずかしながら、私はディオティマ弦楽四重奏団という団体を今まで全く知らなかった。その上、彼らがどこの国のどのような団体なのか、全く知らないまま演奏会に臨んだのである。

しかし、1日目の1曲目、シェーンベルクの弦楽四重奏曲第3番の冒頭を聴いて驚愕してしまった…

シェーンベルクの弦楽四重奏曲が、これほどまでにたおやかで伸びやかに聞こえるとは!そのうえ、濃密で官能的な響きも持ち合わせているのだ。シェーンベルクの弦楽四重奏曲、CDで聴くとあまりに強烈で、正直ギスギスして聞こえてしまうことが多いものだが、彼らの明るめの音色は十二音技法の難解さを感じさせることがないのである。これはすごい体験だった。難解なシェーンベルクであるが、こういう演奏で聴くことができればもっと普及していくのではあるまいか。

 

彼ら4人はパリとリヨンで学んだということだが、息はぴったり合っているし、音色がとても均質でムラが全くないのである。そして、言うまでもないがあまりにも精緻なアンサンブル。

 

その精緻さはブーレーズの演奏で特に顕著である。難解なブーレーズの「書」、ついこの間、東京春音楽祭のポリーニ・プロジェクトでジャック四重奏団の演奏を聴いたばかり。何度聴いても難解な音楽であることは変わりないのであるが、ディオティマのような名手たちの演奏で聴くと、やはりブーレーズの音楽は知的ですごいということだけは確信できる。無数の音の断片が、きらきらと空中に浮遊して輝きを放つ。ディオティマが音価をとても大切にして演奏していることだけは実によくわかった。

 

2日とも後半はベートーヴェンの後期。もともとこのプログラムは、シェーンベルクが4番の四重奏曲を、自作4曲の弦楽四重奏曲とベートーヴェンの後期4作と組み合わせて発表したことにヒントを得ているらしい。ディオティマはこれに、ブーレーズの書を加えてプログラムを構成した。それにしてもシェーンベルク、ブーレーズ、ベートーヴェン後期と超難曲のオンパレードであるにもかかわらず、全く疲れを見せないのが彼らのすごいところだ。

 

東京春音楽祭のジャック四重奏団も、前半にブーレーズ、後半にベートーヴェンを持ってきていた。そのジャック四重奏団は、前半精緻なブーレーズを聴かせたのに対し後半のベートーヴェンが今一つで、ベートーヴェンはやはり大変に難しいのだということを逆に知らしめる結果となってしまったのだ。

http://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12150362445.html

http://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12151101182.html

 

今回のディオティマのベートーヴェン演奏、初日の14番はやや切り込みが浅く、ベートーヴェン後期の謹厳さがあまり感じられなかったのであるが、2日目に演奏された15番は、ベートーヴェン後期特有の陰影を強く感じさせる緊密な演奏であった。

 

ちなみに演奏会場の吉祥寺シアター、武蔵野市民文化会館が改修工事中のために選ばれた会場。音はデッドだが手に取るように音が聞こえるのはいい。聴衆は極めて意識が高い人ばかりだった。

 

ディオティマ、この後も演奏会は続いて、6日は第一生命ホール、その後は武生国際音楽祭に出演とのこと。