東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2016-
ポリーニ・プロジェクト~ポリーニ・プロデュースによる室内楽 第一夜
ピエール・ブーレーズ 追悼公演 を、東京文化会館小ホールにて。

ジャック四重奏団
 ヴァイオリン:クリストファー・オットー、アリ・ストレイスフェルド
 ヴィオラ:ジョン・ピックフォード・リチャーズ
 チェロ:ケビン・マクファーランド
ヴィオラ:クリストフ・デジャルダン
フルート:工藤重典
ハープ:篠﨑和子

ベリオ:
 セクエンツァ
  Ⅰ.(フルートのための)
  Ⅱ.(ハープのための)
  Ⅵ.(ヴィオラのための)
ブーレーズ:《弦楽四重奏のための書》 より
 I. a. Vivo - b. Moderato
 II. Assez vif
 III. a. Assez large - b. Assez vif - très mobile - c. Lent, furtif
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第10番 変ホ長調 op.74 《ハープ》

来日中の巨匠マウリツィオ・ポリーニによるプログラム。ベリオのセクエンツァ、ブーレーズの「本」を2日間にわたって演奏し、後半にベートーヴェンの弦楽四重奏曲を配置するというもので、私はこういう企画を見るとすぐに飛びついてしまう。

実は今日の昼まで、このプロジェクトが金・土だと思っていて、たまたま昼に東京・春・音楽祭のページでちょっと確認したらなんと木・金公演だとわかって、しかもチケットをまだ発券していなくて慌ててセブンイレブンにかけこんだ次第。危なかった。

会場に着くとプレトークの最中。白髪のおじいさんが話をしていて、声でわかったが音楽学者の船山隆先生だった。私が若い頃、NHKFMの「現代の音楽」やクラシックコンサートで解説をされていたのを懐かしく思い出す。

今週はいろいろあって疲れていたにもかかわらず、前半始まる前にバーカウンターでワインを飲んでしまった。これがいけなかった。

ベリオのセクエンツァ、最初はフルート。この短い曲のために工藤重典さんが登場するとは贅沢である。いつも通りのきらやかな音色で超絶技巧を披露。
次は篠崎和子さんのハープ。ハープの音色もベリオの音楽だとちょっと普通のハープの印象とはだいぶ異なる。
次のヴィオラを弾いたのはアンサンブル・アンテルコンタンポランに在籍していたデジャルダンによる演奏。この曲のあたりで猛烈な睡魔が…しかしこのヴィオラは超絶技巧で相当聴き応えがある。ただ、ベルリン・フィルのアミハイ・グロスが弾いている映像(ベルリン・フィル デジタルコンサートホールで視聴可)の方がすごかったかも…

続いてはジャック四重奏団によるブーレーズの「書」。2002年にブーレーズ/ロンドン響の来日公演で聴いたとき、さっぱりわからなかったことをよく覚えている。
その後年齢を重ねるにつれて、かつてはピアノ・ソナタやノタシオンしか理解できなかったブーレーズの作品、少しはわかる(というより、聴いていていいな、と思う)ようになってきたと自負している。
しかしながら。今日の演奏、疲れによるあまりの眠さに途中意識を失う。疲れだけではないかもしれない。相当な難曲であり極めて精緻な音楽であることはわかったのだが、やっぱりこの「書」は正直、わからない。私には難しすぎる。「読書百遍意自ら通ず」というから、この曲も100回ぐらい聴いたら本当のすごさがわかるのかもしれない。

後半はジャック四重奏団によるベートーヴェンの名曲「ハープ」。うーん。なんでこんなに音程が悪いんだろうか?特に、第1ヴァイオリンの音程はかなり気になる。アプローチ自体はとてもいいのであるが、そのようなわけであまり感激できず。それでも最終楽章は雄弁な音楽ではあった。

会場にはマウリツィオ・ポリーニと奥様が通路すぐ後ろセンターに座っていた。休憩中に歩いている姿を見て、本当に老けたなと実感。前にも増して背中が丸くなってしまった。いや、この人は私が初めて聴いた1995年の頃から、歳よりも老けて見えたのだ。