ラハフ・シャニ指揮 ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団来日公演を、ミューザ川崎シンフォニーホールにて。
指揮:ラハフ・シャニ
ピアノ:藤田真央
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番 ニ短調 Op. 30 (ピアノ:藤田真央)
(アンコール)
プロコフィエフ:10の小品Op.12〜第7番「前奏曲」
ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第8番(ピアノ連弾版)
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 Op. 68
(アンコール)
ヨハン&ヨゼフ・シュトラウス:ピツィカート・ポルカ
オランダの第2のオケ(当然、オランダのトップオケはコンセルトヘボウ管)であるロッテルダム・フィルの実演を聴くのは2013年、当時の監督であったネゼ=セガンとの来日以来10年ぶりだ。今回のミューザ公演、S席18,000円ということで、来日公演としては良識的な価格設定であるといえる。
ゲルギエフ、ネゼ=セガンとの来日のときも感じたのだが、このオケ、決して巧いというわけではない。しかしある意味上品なテイストの響きを持っているのが特徴的だと思っていた。
しかし、今回の演奏はいただけない。ミューザのようなすっきりした響きのホールだと、オーケストラの実力が如実にわかってしまうということなのかもしれない。後半のブラームス、アインザッツはそろわないし、アンサンブルが緩めでソロもパートによっては微妙だった…そして、何より音が薄くて深みが感じられないのである。
弦は14型(ヴィオラはなぜか9人)対向配置だったが、ベルリン・フィルならともかく、この薄い音色のオケであれば16型で演奏してほしかった。
それにしても、ブラームスの1番という超名曲、数多くの超名録音に接し、実演でも過去あまたの超名演を聴いてきた身としては、今回のシャニの演奏を聴いて新しい発見は何もなく、この指揮者が何をしたいのかさっぱりわからなかった。第1楽章提示部の繰り返しはなし。
さて前半は超人気ピアニスト、藤田真央が弾くラフマニノフ3番。この日のチケットは完売だったが、言うまでもなく前半出演する真央君の人気あっての完売である。私自身、藤田真央は日本のピアニストの中でも傑出した逸材で、世界に通用する天才だと思っているが、何よりも女性に大人気で、日本人ピアニストのなかでは、反田恭平、辻井伸行、内田光子らと並びチケットの売れいきが抜群の演奏家なのである。
ラフマニノフの3番は超難曲であるが、藤田真央が弾く姿はとても楽しそうで、この曲が超難曲であることをみじんも感じさせない。テクニックは言うまでもなく完璧で非の打ち所がない演奏であったのだが…藤田真央のピアニズムは、モーツァルトの天真爛漫な音楽とか、アンコールで演奏されたプロコフィエフの清明な音楽の方に適性が発揮されるように思われる。本人がラフマニノフを好きなのだろうけれど、ちょっと軽すぎる感があり、もう少し重厚でスケールが大きいとよいのだが…ホロヴィッツ&オーマンディの壮絶なライヴを聴いて育った自分がいけないのかもしれない。
シャニ指揮ロッテルダム・フィルの伴奏が平坦で、起伏に乏しかったのは残念。
アンコールはプロコフィエフ、これは本当に素晴らしくて、こういうキラキラした音が彼の持ち味だろう。アンコール2曲目はピアニストでもあるシャニとデュオで、スラヴ舞曲第8番。
シャニの指揮は昨年のPMFで一度だけ聴いたことがあるが、そのときの印象はほとんどない。
https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12756824413.html
ロッテルダム・フィルとイスラエル・フィルのシェフを務めるということでそれなりの逸材なのであろうが、特段オーラも感じられないし、今回の演奏を聴いても「?」しか残らなかった。指揮棒を使わない指揮は、やはりピアニストであったバレンボイムや、アシュケナージを彷彿とさせる。
火曜日という平日であるにもかかわらずミューザが満席になるというのは、やはり真央君の人気はすごい。客席の大半が女性で、女子トイレは長蛇の列だった。ラフマニノフが終わってすぐに多くの女性がスタンディング・オベーションをしたのだが、正直、居心地が悪い…
ところで、コロナの扱いが5類になってすでに2ヶ月近く経つにもかかわらず、ミューザのバーカウンターは未だに閉鎖中。幕間に何もドリンクがないというのはコンサートホールとしてはいかがなものか?家に帰ったらミューザからDMが来ていて、なんとドリンクコーナーが「期間限定」で復活するそうだ。期間限定(7月22日〜8月11日)である!意味がわからん。
総合評価:★★☆☆☆