ヒラリー・ハーン ヴァイオリン・リサイタル (ピアノ:アンドレアス・ヘフリガー)を、東京オペラシティコンサートホールにて。

 

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 Op. 47 「クロイツェル」

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第10番 ト長調 Op. 96

(アンコール)

バッハ:パルティータ第2番~サラバンド(ヒラリー・ハーン)

ワーグナー(リスト編曲):イゾルデの愛の死(アンドレアス・ヘフリガー)

佐藤聰明:微風(ヒラリー・ハーン、アンドレアス・ヘフリガー)

 

来日するたびに必ず聴く現代最高のヴァイオリニスト、ヒラリー・ハーンだが、なんと来日は2018年12月以来、4年半ぶりである。前回はバッハの無伴奏ソナタ&パルティータ全曲と、バッハのヴァイオリン協奏曲でバッハづくしであった。

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12423720542.html

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12424191481.html

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12425772579.html 

というわけで、かなり久しぶりのハーン。

 

今回のプログラムは意外だ。ベートーヴェンのソナタ2曲だが、演奏時間は正味70分程度。しかも、有名なクロイツェル・ソナタは後半ではなく前半。

結論から言うと……今まで聴いたハーンの演奏のなかでは、一番地味というか、感激が少ない演奏会だった。

 

高校生のときにバッハの無伴奏で鮮烈デビューを飾った天才ハーン。彼女の演奏は、知性、情熱、技巧の3つの要素が、高い次元で一体化しているすごさがあるのだが、今回のベートーヴェンについて言えば、「情熱」が以前の演奏に比べてかなり後退した感があったのだ。特にクロイツェル、自分はもっと熱く前進するタイプの演奏が好きなのだが、比較的淡泊で淡々とした演奏である。10番であればまだそういうアプローチもありだろうが…

ピアノは名手アンドレアス・ヘフリガー。著名なテノール歌手エルンスト・ヘフリガーを父に持ち、兄のミヒャエルは長らくルツェルン音楽祭の芸術監督を務めたという音楽一家だ。彼の演奏、1998年に武蔵野市民文化会館でリサイタルを聴いて以来だが、このヘフリガーの演奏もそれほど熱くなる演奏ではなく端正なもの。クロイツェルではなんとなく変な音が混じっていたような気がするのだが。

 

短いプログラムゆえ20時半過ぎには本プログラム終了、その後ある意味予想通りヴァイオリンとピアノがそれぞれソロ、最後がデュオ。

ハーンが弾いたバッハは彼女の定番だが、やはり全曲を聴いたときに比べるとテンションが低め。

ヘフリガーはまさかのイゾルデの愛の死!この曲をやってくれるのは個人的には大歓迎だが、まあ、ベートーヴェンのソナタのあとにアンコールで演奏する曲ではなかろう。ちなみに音は濁り気味だった。

最後は「27のアンコールピース」から佐藤聰明の作品。2016年の来日公演でもこの曲をアンコールで演奏した。「微風」というタイトルどおり、非常に繊細で弱々しい音の音楽だ。

 

この日の会場はヴァイオリンを持った若い人が多い。ハーンはInstagramに「100日間の練習」という練習動画を上げているそうだが、その影響もあるのだろうか?CD売り場には長蛇の列が。CDを買うとサインがもらえる、ということらしい。

 

総合評価:★★★☆☆