フアン・ディエゴ・フローレス テノール・コンサートを、東京文化会館大ホールにて。

 

ミケーレ・スポッティ(指揮)

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

 

ロッシーニ

歌劇「タンクレディ」 序曲

ロッシーニ

歌劇「ブルスキーノ氏」 “ああ愛しい人、そばに来ておくれ”

ロッシーニ

歌劇「セミラーミデ」 “甘美な希望がこの魂を魅惑して”

ドニゼッティ

歌劇「ドン・パスクワーレ」 序曲

ドニゼッティ

歌劇「愛の妙薬」 “人知れぬ涙”

ドニゼッティ

歌劇「アルバ公爵」 “清く美しい天使よ”

ヴェルディ

歌劇「マクベス」 前奏曲

ヴェルディ

歌劇「リゴレット」 “あれかこれか”

ヴェルディ

歌劇「イェルサレム」 “もう一度、愛しい声を聞きたい”

ビゼー

歌劇「カルメン」 第3幕への間奏曲

ラロ

歌劇「イスの王様」 “いとしいひとよ、むなしくも”

マスネ

歌劇「ウェルテル」 “春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか”(オシアンの歌)

グノー

歌劇「ロメオとジュリエット」 “ああ太陽よ、昇れ”

マスカーニ

歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」 間奏曲

プッチーニ

歌劇「ラ・ボエーム」 “冷たい手を”

(アンコール)

カタリ・カタリ

ベッサメ・ムーチョ

ククルクク・パロマ

(以上 ギター弾き語り)

ドニゼッティ:歌劇「連隊の娘」〜僕にとっては何という幸運

プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」〜誰も寝てはならぬ

デ・クルティス:帰れソレントへ

 

いやーすごかった!マジですごい。何という心地よい声なのだろうか?ペルー出身、現代最高のテノール歌手、フアン・ディエゴ・フローレスが3年ぶりに来日した。

 

2000年代にドニゼッティ「連隊の娘」トニオ役のハイC9連続を難なく歌うことで有名になったフローレス、私が初めて実演を聴いたのは2019年の来日だったのだが、正直、そのときはそこまでいいとは思わなかったのだった。今回同様、アンコールでギターの弾き語りを披露していたので、路線変更したのかと思ったぐらいだ。

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12556173631.html

 

しかし今回のフローレスは絶好調だった。やや細めのよく通る声で、得意とするロッシーニでも見事なアジリタを披露してくれたし、「人知れぬ涙」の情感豊かな表現、ヴェルディの雄弁で重すぎない表現、フランス語のオペラの繊細かつ抜けるような発声が心地よい。そして、「冷たい手を」のどこまでも伸びていって突き抜けるような声…

同じNBSが7月に開催したソニア・ヨンチェヴァのコンサートでは正味歌唱時間がとても少なくて「出し惜しみ感」が感じられたが、今回のフローレスは前半から素晴らしい高音をガンガン聴かせてくれて、満足感が半端ではない。

 

第3部とも言うべきアンコールは前回のリサイタル同様ギターを持って登場、味のある弾き語りを聴かせてくれたのだが、これはもうめちゃくちゃかっこ良すぎる!これだけでリサイタルを開いて欲しいぐらいだ。そして、そのあとはなんと連隊の娘!まさか、実演でフローレスのハイC9連発を聴けるとは…感激である。

 

というわけで、予想をはるかに上回る満足度となった。

オーケストラは東京シティ・フィル。指揮のミケーレ・スポッティはまだ20代だが、しっかりとフローレスの歌に合わせて全くストレスを感じるところがなかった。シティ・フィルは12-9-8-8-6という小編成ながら非常によく鳴っていた。

 

会場はほぼ満席だった。ちなみに私の隣はなぜか空席、台風の影響で来られない方もいたようで、NBSは払い戻しするようだ。

18時開演で、20分の休憩を挟み20時半前に終演。会場に貼られていた紙には終演予定20時45分とあったが。

それにしても、ほぼ満席のコンサートで、1箇所とはいえアルコールも飲めるようになったし、意味のない時差退場はもう誰も守っておらず形骸化しているので、あとはマスクを外すことと、ブラボー解禁をなんとかしていただきたい。こんなすごい声を聴いてブラボーを叫べないとは。

 

総合評価:★★★★★