ファン・ディエゴ・フローレスのリサイタルを東京オペラシティコンサートホールにて。
ピアノ:ヴィンチェンツォ・スカレーラ
・ベッリーニ:「お行き、幸せなバラよ」
”Vanne, o rosa fortunata” (Bellini)
・ベッリーニ:「喜ばせてあげて」
”Ma rendi pur contento” (Bellini)
・ベッリーニ:ラルゴと主題 ヘ短調(ピアノ・ソロ)
Largo e Tema in Fa Minore per Pianoforte solo (Bellini)
・ドニゼッティ:オペラ《愛の妙薬》より「人知れぬ涙」
“Una furtiva lagrima”, from L’elisir d’amore (Donizetti)
・ドニゼッティ:オペラ《ランメルモールのルチア》より
「わが祖先の墓よ……やがてこの世に別れを告げよう」
“Tombe degli avi miei… Fra poco a me ricovero”, from Lucia di Lammermoor (Donizetti)
・ヴェルディ:歌のないロマンツァ ヘ長調(ピアノ・ソロ)
Romanza senza parole in Fa Maggiore per pianoforte solo (Verdi)
・ヴェルディ:オペラ《アッティラ》より「おお、悲しいことよ!でも私は生きていた」
“Oh dolore! Ed io vivea”, from Attila (Verdi)
・ヴェルディ:オペラ《ラ・トラヴィアータ(椿姫)》より
「あの人から遠く離れて…燃える心を…おお、なんたる恥辱」
“Lunge da lei… De’miei bollenti spiriti… O mio rimorso” , from La traviata (Verdi)
・レハール:オペレッタ《微笑みの国》より「君はわが心のすべて」
“Dein ist mein ganzes Herz”, from Das Land des Lächelns (Lehár)
・レハール:オペレッタ《パガニーニ》より「女性へのキスは喜んで」
“Gern hab’ich die Frau’n geküsst”, from Paganini (Lehár)
・レハール:オペレッタ《ジュディッタ》より「友よ、人生は活きる価値がある」
“Freunde, das Leben ist Lebenswert”, from Giuditta (Lehár)
・ドニゼッティ:ワルツ ハ長調(ピアノ・ソロ)
Valzer in Do Maggiore per pianoforte (Donizetti)
・マスネ:オペラ《ウェルテル》より「春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか」
“Pourquoi me réveiller”, from Werther (Massenet)
・ビゼー:オペラ《カルメン》より「お前の投げたこの花を」(花の歌)
“La fleur que tu m’avais jetée”, from Carmen (Bizet)
・マスネ:オペラ《タイース》から 瞑想曲
“Meditation from Thais (Massenet)
・プッチーニ:オペラ《ラ・ボエーム》より「冷たい手を」
“Che gelida manina”, from Labohéme (Puccini)
(アンコール)
・コンスエロ・ベラスケス:ベサメ・ムーチョ
・カルロス・ガルデル:想いの届く日
・キリノ・メンドーサ・イ・コルテス:シエリト・リンド
・トマス・メンデス:ククルクク・パロマ
・アウグスティン・ララ:グラナダ
・プッチーニ:誰も寝てはならぬ
・ヴェルディ:女心の歌
現代最高のテノールの一人であるスター歌手、ファン・ディエゴ・フローレスはペルー生まれの46歳。2000年代からデッカの録音で世界的に脚光を浴び、ドニゼッティ「連帯の娘」のアリア『友よ、きょうは何と楽しい日』でハイCを連続9回歌う録音は大変な話題となった。
そのようななかで来日公演が待たれていて、2011年のボローニャ歌劇場「清教徒」で来日するはずであったのが、海水を飲んで声帯を傷めたとかで来日中止。当時、原発事故の影響で多くのミュージシャンが来日を取りやめたので、実際の理由は原発事故を恐れたためではないかと言われていたが…
あれから8年。やっとの来日公演である。今回のピアノ伴奏のリサイタルと、サントリーホールにおけるオーケストラ伴奏の2公演。
さて、初めて聴くフローレスの生声、冒頭のベッリーニはまだ硬さがあったものの、徐々に調子を上げていって、ドニゼッティ、ヴェルディあたりではだいぶいい感じになっていったのだが、CDで聴いている印象ほどには声の伸びがない…
後半最初はなんとレハール。彼がドイツ語の曲を歌うとは知らなかったのだが、こちらはフローレスの声の良さがあまり感じられなかった。マスネやビゼーのカルメン「花の歌」あたりはやはり上手い。最後のプッチーニも見事であったが、やっぱりパヴァロッティに比べるとなあ…
「冷たい手を」で本プロが終わったのが、20時半。当然この曲で終わるはずもない。
アンコールではフローレス、なんとギターを持って登場。彼はもともとポップス、ロックやペルー音楽に興味を持っていたそうだ。実は私、このギター弾き語りが一番素晴らしいと思ったのだ。何より、本当に楽しそうなのである。ベサメ・ムーチョやシエリト・リンドなど私でも知っている名曲はもちろん、ククルクク・パロマにおける延々続く裏声には驚愕。ピアノが戻ってきてからの名曲3曲は会場が熱狂的に盛り上がった。
ピアノは名伴奏者スカレーラ。しかし驚いたことに、私は彼の演奏を聴くのは20年ぶりだ。20年前はリチャレッリの伴奏だった。彼が今回ソロで弾いたピアノ曲のうちマスネのタイスは超名曲であるが、ベッリーニ、ドニゼッティ、そしてヴェルディの作品は非常に珍しくて、これはこれで大変なききものであった。こんな作品があったとは!
ところで今回のプログラムはなんと2,000円。今回の曲目、入り口そばに紙が貼り出されているだけなので、この2,000円のプログラムを買わないと一体何が演奏されているのかさっぱりわからない。私のように年中演奏会に行っていると、プログラムなど買ってもろくに読まないので原則買わないようにしているのだが、今回ばかりは買わざるを得なかった。こういうやり方ってどうかと思うのだが…
高額ゆえさすがに満席とはなっていなかった本公演、やたらに年輩の女性が多く自分は相当浮いていた。
NHKのカメラが入っていたのでいずれテレビで放映されるであろう。
総合評価:★★★☆☆