東京交響楽団第700回 定期演奏会を、サントリーホールにて。
指揮:イオン・マリン
チャイコフスキー:交響曲 第4番 ヘ短調 op.36
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「火の鳥」(1910年版)
1960年生まれルーマニア出身の名指揮者、イオン・マリン。若くしてウィーン国立歌劇場の指揮者として活躍、その後も著名歌手たちとの共演も多く、著名オーケストラに客演をしているが、この人、実は目立ったポストに就いたことがないようである。
わが国では今までN響や新日本フィルへの客演が多かったが、新日本フィルで今回と同じ火の鳥を演奏したときはなかなかの名演だったようだ(覚えていないのだが)。
https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-10371123819.html
さて今回のプログラムは2曲ともロシアもの。普通では考えられない重量級で、前半と後半にメインプロになりうる名曲が並んでいるのだ。前半後半とも弦は16型通常配置。
前半はチャイコフスキー4番。この曲、もともとフレーズの繰り返しが多く、凡庸な指揮者が演奏すると間延びする難しい曲だと思っていて、実際自分が録音で繰り返し聴いているのはムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルの超名盤(1960年ロンドンにおける録音 41分38秒)とショルティ指揮シカゴ響のこれまた超名盤(1984年録音 42分39秒)のみ。この2つの名盤、冷戦時代の米ソのトップオケによる演奏なわけだが、共通しているのは快速テンポ。そう、この曲はこのくらいのスピードで、引き締まった音で演奏しないと中だるみしていけないのだ。ちなみにバーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルの新盤(1989年録音)の演奏時間は48分29秒。私には全く付いて行けない演奏である。
前置きが長くなったが、今回のマリンの演奏、正直中だるみしていた。この曲の細やかなフレーズをじっくり演奏したくなるのはわかるのだが、そういう演奏は確実に間延びして退屈な演奏になる。演奏時間は約45分。この曲としては長い方である。
フレージングは割と凝っているところもあって、第2楽章冒頭、荒さんの見事なオーボエソロ、ブレスの位置でかなりのパウゼを取っていたのはきっと指揮者の指示であろう。第3楽章のピツィカートももう少し機敏さが欲しかった。
後半は火の鳥。東響ではついこのあいだ(4月)に、ブランギエの指揮で組曲版を聴いたばかりだが、今回は全曲版である。
久しぶりに16型東響のパワフルな音響を聴いた気がする。とても美しい演奏であったのだが、このオーケストラが本来持っている繊細な側面がどういうわけかやや後退していたのと、メリハリある演奏ではあったが全曲を通してストーリー性が感じられなかったからなのか、終曲における盛り上がりと感動は今一つ。細かいところではそれなりにこだわっていたようには思われる。例えばカスチェイ一党の凶悪な踊りにおけるトランペットのフラッター奏法をここまで強調した演奏は珍しいかもしれない。
総合評価:★★★☆☆