イオン・マリン指揮新日本フィルのサントリー定期。曲目は
エネスク:ルーマニア狂詩曲第1番
ガーシュウィン:ピアノ協奏曲ヘ調(Pf:江口玲)
(アンコール)シューマン:トロイメライ
ストラヴィンスキー:火の鳥(全曲)
新日本フィルの定期、昨シーズン私はトリフォニーの会員だった。昨シーズンはプログラムがすごく意欲的で、音楽監督アルミンクの熱意が伝わってきたので何の迷いもなく会員になった。しかし、今シーズンのプログラムはややパンチに欠ける。サントリー定期も実はパンチに欠けるなあ、と思っているのだが、マーラー8番なんかもあって、とりあえず会員になってしまった。
サントリー定期の2回目、前回の1回目は祝日だったのでまあまあの入りだったが、今回ははっきりいってガラガラ。サントリーホールが6割程度しか埋まっていない。曲目がやや渋いのと、出演者の知名度が日本ではそれほど高くないからだろうか?まあ、それ以前にこの不況のオーケストラ運営に与える影響は深刻なものがあろう。ただでさえ苦しい財政事情だ。
今日の演奏を聴くと、お客さんが少ないのが本当にもったいない気がする。
前半の2曲は、それほど自分になじみがある曲ではないのであまり偉そうなことは言えないが、少なくとも後半の火の鳥、これは今まで聴いた火の鳥のなかでも最高に属する演奏である。火の鳥全曲版、今までいくつも実演で聴いたし、そのなかにはサロネン/ロスフィルなど、すばらしいものもかなりあったが、今日の演奏は絶好調の新日本フィルのソリストたちもすばらしいし、何よりマリンの指揮が繊細で、上品。カシチェイの踊りも全然がなり立てないし、かと言って凶暴さが失われているわけでもない。ファゴットが歌う子守歌の弦の伴奏の刻みが、これほどまでに際立って聞こえた演奏は、かつて聴いたことがない。フィナーレの金管も極めて節度が保たれていて、全体のバランスが非常によい。
イオン・マリン、かなりの腕を持っている指揮者と見た。昨年N響でショスタコーヴィチの5番を聴いたが、こちらもなかなかの演奏だったと記憶する。今日の演奏も、前半後半ともに、実に繊細で品がよいのである。
前後するが、エネスクの有名なルーマニア狂詩曲第1番、やはりこうやって演奏会で聴くと、曲自体はやは散漫な印象を受けてしまう。もっとも、エネスクは決してこの曲だけで有名な「一発屋」ではないみたいだが。続くガーシュウィンのピアノコンチェルト、何度も聞いているはずだがあまりなじんでいない曲。江口玲のソロが堅固でありながらジャズののりもなかなかで、こちらもかなりの腕前のピアニストである。