緑の果て | takehisaのブログ

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 今回取り上げる、三枝健起演出、唐十郎脚本のNHKドラマ『緑の果て』は、今までご紹介したものとはかなり異なります。南米のエクアドルが舞台で、幻想的ながらも、ラテンのリズム、ジャングルとアマゾンの壮大な風景に反して、ものすごく哀しいドラマです。
 エクアドルに住む女性ヴィオレッタ(マリセラ・パルペルデ)に、病気の兄から預かった小包を届けに来た青年、田口(大鶴義丹)が主人公です。


 最初に田口が訪れた、エクアドル最大の商業都市グアヤキルで、ジャパニーズレストランを経営する不思議な老人、御子柴さん(藤戸鶴也)と出会います。田口は、御子柴さんから紹介された胡散臭い男、影山さん(石橋蓮司)と成り行きで行動を共にすることになります。


 田口の兄が、かつてマグロ漁船で喧嘩に巻き込まれて怪我をし、グアヤキルの病院に入院した時の看護婦ヴィオレッタとおそらく婚約していました。しかし、田口の兄は病に倒れ、帰国後エクアドルに行くことは、もはやできません。兄は田口にエクアドルに行ってヴィオレッタに会い、小包を渡すよう頼みます。手がかりは、ヴィオレッタの住むアパートの住所と銀行の受け取り票だけです。しかし、兄から聞かされた住所にヴィオレッタはいないと影山さんから聞かされます。


 ヴィオレッタは、田口の兄のために、病院の薬事室から、抗ウィルス剤を12種類も盗みました。そして、その薬を田口の兄に与えました。それを「医務局のがめつい奴」につかまり、金を請求されます。そのため、ヴィオレッタは窮地に陥り、売春婦にまで身を落としていました。


 田口がマーケットでカバンを盗まれたのを、宮沢りえ演じる「もう一人のヴィオレッタ」日系人のマリア・ヴィオレッタ・ノリコ・ナカムラ(以下ヴィオレッタ・ノリコ)が取り返してくれます。


 紆余曲折を経て、ヴィオレッタ・ノリコと影山さんの導きでようやく、コカで兄の恋人のヴィオレッタに会えた田口は、兄から預かった小包を彼女に渡しますが、開封した彼女は、怒りを爆発させて、小包を投げつけます。小包は破損して、中からは、兄とヴィオレッタの婚約を示唆するものが出てきます。彼女は言います。「今さら何よ!そんなものが何になるっていうの!私は待っていたわ。」と。しかし、田口たちが去ったあと、ヴィオレッタは、壊れた小包を愛おしそうに手に取ります。


 みんなが、相手を悲しませないように、嘘をつきます。
「私の夫に手を出すのはやめてください。そして、平穏かつ幸せな生活に波風を立てるのはやめてくれませんか。」と影山さんがヴィオレッタの言葉を曲げて通訳してくれましたが、田口にはすべてが分かっていました。ヴィオレッタ・ノリコが、「どうだった?会えたの?落し物受け取った?笑って、喜んで、それで何て言った?」と聞くと、田口は、「ずっと待ってたって。」と嘘を言い、ヴィオレッタ・ノリコを喜ばせます。ヴィオレッタ・ノリコの母親は、日本にいるノリコの父親に手紙を書いては、宛先不明で戻ってきていましたが、それは、ノリコの母親が、ノリコを悲しませないために、もういない父親に「返事のない手紙を書いていた。」ことを告白します。ヴィオレッタ・ノリコは言います。「私の日本語はどうなるの?どうやって忘れていけばいいの?」と。


 みなさん、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


 ラストで田口の靴を磨く、顔を靴墨で真っ黒にして、破れかぶれのハットをかぶった日系人の少女(身を落としたヴィオレッタ・ノリコ?)の腕に田口は、兄がヴィオレッタに送ったブレスレットをはめてやります。


 これは、女性であることの悲しさを感じさせるドラマです。