安寿子の靴 | takehisaのブログ

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 今回は、1984年にNHKで放送されたドラマ、『安寿子の靴』を紹介します。演出は三枝健起(さえぐさ けんき)、脚本は唐十郎。大鶴義丹のデビュー作です。三枝健起という人は、かつてNHKにいた演出家で、1980年代に唐十郎脚本の作品を、幻想的に美しく演出したドラマを数多く生み出してきました。1988年の『もどり橋』だけは、故・市川森一脚本ですが、これも幻想的で美しく、自分は三枝健起演出のNHKドラマでは、一番好きです。


 さて、『安寿子の靴』ですが、家出した小学校低学年の少女(泉リリセ)が、中学生の十子雄(としお 大鶴義丹)に、子犬のようにつきまとうという話です。泉リリセという子は、とてもいい表情をする子で、いい演技をしています。少女は、けっして自分の名前を明かしません。「かかしの子」と言ったり、ひらがなで「やすこ」と言ったりします。
本当の少女の名前は、「安寿子」といいます。「安寿子」というのは、産褥熱で死んだ、十子雄の姉(小林麻美)と同じ名前です。このドラマは、『安寿と厨子王丸』がモチーフとなっています。少女は、十子雄に「何かお話をして」とねだり、十子雄は、『安寿と厨子王丸』の話をしてやります。


 『安寿と厨子王丸』とのからみでは、十子雄がボートの上で、姉の安寿子に赤いハイヒールをプレゼントしますが、安寿子は片方の靴を湖に落としてしまいます。安寿子の死後、十子雄はひょんなことから、残ったほうの赤い靴を見つけ、それを大事に守ります。少女が、十子雄が自分よりも赤い靴を大切にするのに嫉妬するのが可愛いです。


 少女を持て余した十子雄は、一度は少女を交番につれてゆき、「迷子です」と言って警官に預けますが、少女は、「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」と叫び、警官が小用に立ったすきに、ガラスを割って逃げ出し、十子雄のところに戻ってきます。少女は、「男の価値は、靴で決まるのよ。」などと、ませたことをいう子なのですが、このときは、「さびしい、さびしいよう。」と十子雄にすがります。少女は、十子雄に『安寿と厨子王丸』の話を十子雄にせがみます。その話の内容は・・・


 不運によって、山椒大夫のもとに売り渡されて、酷使されていた姉安寿と弟厨子王の別れと絆を描いた童話です。そこは、直江の里でした。そこでは、娘は浜で、男の子は山で働くのがしきたりでした。「姉は浜で弟を思い弟は山で姉を思い、日の暮れるのを待って小屋に帰れば、二人は手を取り合って、筑紫にいる父が恋しい、佐渡にいる母が恋しいと言っては泣き、泣いては・・・」 ある日、安寿は山椒大夫に、弟の厨子王と一緒に働かせて欲しいと頼みます。山椒大夫はニヤリと笑い、「『お前が男の子のようになれれば、山で弟と一緒に働けるものを』と言いました。」
弟の厨子王と働くために考えあぐねた安寿は、剃刀を持ち出し、自分の髪を男の子のように切ります。


 少女は、十子雄と一緒に暮らしたいと思っており、この話を聞いて、「私も山にいくからね。」と言うと、タンスの引き出しからハサミを取り出し、手鏡を見ながら自分の髪を短く切ります。


 事件に巻き込まれて、警察に踏み込まれ、十子雄が少女と一緒にいるところを警官に見つかります。二人は警察署に連れていかれ、少女は、母親に引き取られます。少女は、「お兄ちゃん。お兄ちゃん。」と言って泣きます。警察署で、少女の名が「安寿子」であることを知った十子雄が、「それは一緒になって暮らすためではなかった。弟を逃がすためだった。そして、ばらばらになって生きるためだった。さよなら安寿子。さよなら安寿子。姉さんの生まれ変わり。」とつぶやくところで、このドラマは終わります。


 みなさん、ここまでお読みいただきありがとうございました。


 泉リリセちゃんは、一旦学業に戻ったあと、麻山ウランという芸名で女優業に復帰したそうです。小林麻美さんの幻想的なシーンについては、このブログでは触れることができませんでした。すみません。