霊感女性が体験した怖い話・1『異次元への廊下』 |  ライター稼業オフレコトーク

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アイドル記者を皮切りに、心霊関連、医療関連、サプリ関連、
コスメ関連、学校関連、アダルト関連、体験取材など様々な
分野の取材執筆をしてきました。
ここでは当時の面白かった話や貴重な情報、取材で思ったこと、
記事にできなかった裏話などを披露していきます。

 ホラー系インタビューライターとして活動していた私は、数多くの著名人や一般人から恐怖体験インタビューを試みてきた。いわゆる「本当にあった怖い話」であり創作ホラーではない。

 そこで、つい最近取材した、一般人で霊感のある50代の主婦から聞いた恐怖体験の数々を物語風に紹介しよう。

 

 

プロローグ:

【臆病な霊感体質者が平穏無事である為に】

 

 霊能者と呼ばれる人は当然のことながら霊感があります。そのような人たちについていつも思うのは「当たり前のように見えてしまう霊が怖くないのか?」「霊に襲われたりすることはないのか?」という疑問です。

 

 私は橘美由紀(仮名)。50代の専業主婦です。小さい頃から不思議な現象を体験したり、怖い目に遭ったりしていたので、おそらく霊感体質なのだと思います。本当なら「自覚している」と言うべきところを、わざわざ「思う」と言うのは、自分がそうであると認めたくないからです。だって、怖いじゃないですか。

 それに、私はこのことを誰にも話したことがありません。友だちが私を気味悪がってしまうからです。それに、一緒にいるだけで怪奇現象に巻き込まれたり、最悪の場合、命の危険にさらされることがあるかもしれないからです。

 

 実際、そのようなことがありました。それからは危険を感じる場所に一切立ち寄らないようにしています。どちらかというと臆病な方だし、家族ともども無難な人生を送りたいからです。

 おかげで霊からの自己防衛本能が身につき、どうすれば怪奇現象を回避できるかが分かるようになりました。

 私は霊の存在を受け入れられるほど強い人間ではありません。霊能者のように対峙する力もありません。ただ平穏無事に過ごしたいだけなのです。

 おそらく私と同じような体験をしている方、そして同じ考えの人がいらっしゃるのではないでしょうか。そのような人たちのために、私が経験したことを参考にし、今後の糧としていただければと思うのです。

 

 

 私は、生まれも育ちも東京の浅草で、実家は浅草寺の近く。陽当りの悪い木造平屋建ての古い一軒家でした。

 浅草は古くから関東大震災や東京大空襲などで焼け野原になり、多くの人が亡くなっています。そのため土地が祟られているというのはよく聞かれる話。それゆえに繊細な神経の持ち主は、自ずと霊感体質になってしまうのではないかとも言われています。もちろん確証はありません。でも、そのような理由で、私があの陽当りの悪い家で霊感体質になってしまったというのなら、否定はできないと思うのです。

 

 

 

浅草小学生時代:

【子どもを異次元の世界に誘う真夜中の罠】

 

 初めて霊的な現象を経験したのは小学1年生の時でした。夜中にトイレに行きたくて目を覚まし、寝室から廊下に出た時のことです。なぜか廊下が揺らいでいるように見えました。初めは寝ぼけているのかと思い気にしなかったのですが、いざトイレのある玄関先へ向かおうとすると、廊下が先へ先へと伸びていくように見えたのです。

「えっ……? なに? うちの廊下ってこんなに長かったっけ?」

 そんなことはあり得ません。目を擦ってよく見たのですが、まるで植物の枝のように廊下が少しずつ先に伸びていくのです。廊下の先に見えるはずの玄関がみるみる遠のいていきます。

「あんな遠くまで行けない。漏れちゃうよ」

 暗闇の廊下の中で一人佇む私……。本当は怖い現象なのですが、この時はまだ子どもだったので「なんでこんなことが起きてるんだろう?」という不思議に思う気持ちと腹立たしさしかありませんでした。

「トイレを我慢しておねしょしたらママに怒られちゃう」

 今起きている不可思議な現象よりも、お漏らしをして母親に怒られる現実の方が怖かったのです。

 

 

 どうすればいいのかと迷っている時、廊下の先からパタンパタンという音が聞こえてきました。目を凝らしてよく見ると、玄関先に置いてあるゴミ箱の蓋が勝手に開閉しているではありませんか。いや、勝手にではありません。さらによく見ると半透明の二人の男女が開けたり閉めたりしているのです。

「うちのゴミ箱になにしてるの?」

 まったく訳の分からない行動です。そのうち女の人が私の方を向き、おいでおいでと手招きを始めました。

「え? なに? なにか見せてくれるの? そこになにかあるの?」

 子どもは手招きされると好奇心を掻き立てられるもので、私も恐怖よりも興味の方が優っていました。そのため体が少し前に出かかった時、女の人がニヤッと……。一瞬ぞっとし、そこに行ってはいけないのではという思いが頭の中で浮かびました。でも、おいでおいでの手招きは、私の体を自然と引き寄せるような力を発していたのです。

 

 

 そして、意を決して足を一歩踏み出した時、突然、背後から手をつかまれたような感覚が!

「きゃっ!」

 びっくりして振り向くと、そこには亡くなったはずの祖母が立っていたのです。祖母は真剣な顔をして首を横に振りました。まるで、あそこへ行ってはいけないという感じで。

「でも、ゴミ箱に誰かいるし、トイレにも行きたいんだもん」

 前方を見ると廊下はまだ伸び続けていて、玄関も男女の姿もいつしか豆粒大くらいの大きさになっていました。

「ほら、早く行かないと追いつけなくなる」

 それでも祖母は首を横に振るだけ。そして、す~っと姿を消していきました。

 と同時に私は正気に戻り、寝室にいる両親のもとに駆け込んでいきました。

「ママ、起きて! お婆ちゃんが! 廊下が伸びてる! ゴミ箱に人が!」

 パニックになっていて、自分でもなにを言っているのかわかりませんでした。そのため母は不機嫌そうな顔で言いました。

「なに言ってるの、あんたは。寝ぼけてるんじゃないの!」

 母親と一緒に寝室を出た時、そこはいつも通りの廊下でした。さっきのはいったい……?

 

 

 あの時はなにがなんだかわからなかったのですが、今にして思うと、あの伸び続けた廊下は現世とは違う異次元への道だったのかもしれません。ゴミ箱はその入り口だったのでしょうか? もしかしたら私はゴミ箱の中に閉じ込められて、そのままどこかに……。

 それを祖母が助けてくれたのかも。もし、あのまま進んでいたら神隠しにでもあっていたのでしょうか? 当時は不思議としか思わなかったのですが、大人になった今は危ない状況だったんだなと改めて恐怖しています。

 

 

 小さな子どもは純粋な心ゆえに、大人には見えないものが見えています。さまざまな現象に遭遇しています。それに対して大人は、まず信じてあげることが大事です。頭ごなしに否定したり疑ったりしないでください。助けを求める子どもの言葉には素直に耳を貸して、親が守ってあげましょう。それと、夜中は決して一人で行動させないことです。