運の悪さを何とかしたい……。異性運がまるでない……。原因不明の病気をなんとかしたい……。それらの悩みにおいて、医療やカウンセリングでもどうにもならない壁にぶつかってしまった人たちを救う手立ての一つとして「前世療法」がある。
己の前世を知ることで悩みの原因が分かり問題解決の糸口が見つかりる。また、同じような悩みを抱える第三者も他人の前世を見ることで自分の前世を推測できたりする。その結果、自ずと悩みの解決へと導かれていく。
私が心霊ライターとして活動していた時、1980年頃から始まった「前世療法ブーム」は最盛期を迎えていた。その流れで、霊能力者が行っていた前世療法に携わり、直接カウンセリングの現場に立ち会いながら多くの記事を書いてきた。
そして、多くの人が救われている光景を見て衝撃を受けた。カウンセリングを受けた人の約半数は感動の涙を流していた。これは単なる占いなんかではない。催眠療法とも違うと思った。スピリチュアルカウンセリングの素晴らしさを知った。
<90年代の前世療法ブーム>
女性の大半は「前世」というものに興味を持っている。それは占いの一種としてとらえているからだ。しかし、90年代にはこの「前世占い」というのものが、「前世療法」という形で精神治療の一翼を担うようになってきた。
理論的な裏づけがされていないため、日本では占い的な要素が強いとしてまだまだ認知されていなかったが、精神治療の先進国アメリカでは立派な治療として重要視されていた。実際、アメリカのマイアミ大学医学部精神科のブライアン・L・ワイス教授が88年に出版した『前世療法』は全米でベストセラーになり、日本でも91年に翻訳出版されている。
また、薬漬けやただのカウンセリングだけでは治らない原因不明の病気や悩みが、本人の前世を探ることによって解決の糸口が見つかり、それによって心身ともに完治しているという実績もある。
日本では、まだ精神医療として正式に用いられてはいないが、催眠術を使用する人や霊感の優れた人、アロマテラピストなどが、民間治療として独自にカウンセリングを行っている。とくに90年代は年々増加傾向にあり、癒し系治療のひとつとして確立した地位を築きつつあるほどだった。
書籍としては、過去に浅野八郎やエドガー・ケイシー、江原啓之などがベストセラーを出しおり、「前世療法」に関する出版物はますます身近なものになっていた。また、占い的要素から、読む者に感動と教訓を与える人生読本としての要素が高まっていた。
<前世療法との関り>
90年代半ば、少女向け恐怖漫画雑誌において、「前世占い」というコーナーが連載されており、私は途中から担当になった。このコーナーは、様々な悩みを抱えた読者に対し、霊能力者が前世を霊視して、過去の因縁から現在の悩みの原因を突き止め、解決の糸口をアドバイスするというものだった。
従来の少女の占い好きと前世への興味もあって、このコーナーは相談者の顔出しがあるにもかかわらず絶大な人気を誇り、毎月絶えることなく読者から相談の便りが寄せられていた。連載は約4年以上にもわたり、その間に寄せられた相談者の手紙の数は約400通にも達していた。つまり、それだけ読者の関心が強いということの表れであり、いかに興味を持たれていたかが分かる。
その後、漫画雑誌が廃刊してからは、私が担当していた医療系の女子学生向け機関誌に「前世療法」とタイトルを改め、約2年間連載を行った。ここでも女子学生からの人気は絶大で、医療系の真面目な雑誌であるにもかかわらず読者人気ランキングでは常に2位をキープしていたものだった。
その後、インターネット上においてメールマガジンとして発行することに。タイトルを「幸せになるための前世療法」とし、メルマガ誌の大手『まぐまぐ』より隔週で発行を開始。同誌においては、週間ランキングで1位を獲得後に読者が軒並み増えていき、その後は他のメルマガ(8誌)からも発行を開始し、その連載は約2年間続いた。
[補足]
「前世療法」に関しては、実話系週刊誌でも連載され、女性向け雑誌と情報誌でも特集が組まれた。また、テレビではスカパーの『ゲノムの予言』という番組において、私が仲介し前世療法を行っている様子もオンエアされた。
<鑑定を望む幅広い相談者たち>
メルマガの発行は、今まで雑誌で行ってきた「前世療法」において大きな変革を促すこととなった。
それまでは読者が10代前半から20代前半の女性に限られており、鑑定料も出版社持ちで読者には一切かかっていない。悩みの内容も恋愛・友達関係・就職と若者にありがちなものばかり。占い感覚で受け止めていたので深刻な相談は多くなかったのである。
一方メルマガの読者は、推定ではあるが10代後半から40代後半と幅広く、30代以降の男性も多くいた。また、購読者のほとんどが社会人ということもあって、メール鑑定は有料にもかかわらず毎月申し込みが殺到し、直接面談による鑑定を希望する者も後を絶たなかった。悩みの内容も人生の深みを感じさせるものが増え、恋愛は言うに及ばず、不倫問題・結婚について・仕事の悩み・人間関係・夫婦間の問題・土地の因縁・原因不明の病気・霊的な現象など多種多様なものとなっていった。
また、雑誌掲載時における大きな違いは、相談者とのやり取りがダイレクトに何度も行われたことだ。それまでは寄せられた悩みに対して、誌面でアドバイスをするという一方通行で終っていた。しかし、メルマガでは相談者が回答に対してすぐに感想を返してくれるのである。そのほとんどは感謝の内容。さらに、その後どのように変化していったかの報告もしてくれるのである。
これにより、今まで行ってきた「前世療法」がいかに悩める人々の役に立っているのかを直に肌で感じることができた。また、相談者だけではなく、その内容を読んだ読者からも「共鳴した」「感動した」「身につまされた」「私もそうだった」などの感想メールが直接寄せられ、当事者以外でも問題解決に至っていることが分かったのである。
そうしてはっきりしたことは、相談者のシチュエーションが違えども、同じような悩みを持った人が結構多いということだった。
例えば、一人の相談者の悩み事を紹介したとする。すると、読者の中には「この人も私と同じ悩みを抱えている」と同調する人がいる。つまりそれは、「前世療法」での回答を読むことにより、その読者も自身の悩みに対して解決の糸口を見つけることができるというわけだ。
さらに気づいた点がある。個々の前世の内容は違っていても、悩み相談に対するアドバイスには共通点があるということ。つまり、ここでの回答は、相談者個人に対するアドバイスだけではなく、同じ悩みを持っている多くの読者に対してのアドバイスにもなっていたのである。
これはまさに「他人の前世を知ることにより、自分の悩みも解決できる!」という間接的な「前世療法」の意味合いを持っている。「人のふり見て我がふり直せ」という諺があるが、ここで他人の苦しみとその解決策を学ぶことにより、読者自身も幸せになるように頑張る為の道しるべとなるのである。
また、読者には直接関係がないように思われている相談者の前世での出来事も、これもまた同じ悩みを持つ人が同じような前世であったりすることが稀にある。そのため自分の前世を知るための手掛かりにもなるというわけだ。
しかし、何よりも重要なのは、前世での出来事が具体的に分かることにより、悩みの原因や解決方法がより分かりやすくなるということ。ゆえに前世の話は必要不可欠となる。
[余談]
直接面談による鑑定では、親切で同情的なカウンセリングに感極まって泣く人が続出した。泣いた理由として皆に共通していたのは「カウンセラーは、私が言いたくても口に出して言えないことを代弁してくれた」というものだったった。これが鑑定を受けるリピーターが多い理由のひとつでもあった。
<どんな相談が多いのか?>
約500人分のデータを精査したところ、大きく8つのテーマに分類することができた。
「男女の仲」「仕事の悩み」「人生の運」「結婚への不安」「前世を知りたい」「自分の将来」「自分の性格」「家族の心配」
メルマガで反響が大きかったのは、「男女の仲」での不倫についてだった。する人もされた人も、やめたいのにやめられない人など、いかに不倫で悩んでいる人が多いかを窺い知ることができた。とくに不倫が原因で精神的に悩み病気になってしまった若い女性の話は、他の人にも戒めになっていた。
次いで反響があったのは、我が子を虐待してしまう母親の話。自身も実母から虐待を受けており、それを繰り返してしまう自分に悩んでいるという相談だった。
救われた人たちを直接見てきただけに、この「前世療法」をただの占いだとか、まがいものだとか言って揶揄することには反発する。
真剣に悩んでいる人たちは、カルト宗教や商売目的のインチキ占い師に引っかかることのないよう、本物の霊能力者もしくは前世療法を真面目に学んだカウンセラーに相談してみてはどうだろうか?
ブームが過ぎても「前世療法」は悩める現代社会において必要な療法だと思っている。