インフルエンザの予防接種はおじさんと呼ばれる年になっても、一度も受けたことがないのが自慢だった。個人的な予防としては、手洗いとうがいをマスクとビタミンC摂取を欠かさないくらい。どんなに大流行してもインフルエンザにかかったことはなかった。過去形になっているのは、約5年前に生まれて初めてかかったからだ。
風邪は年中ひいていた。ひきやすい体質であることは分かっていた。しかし、微熱が1日あるだけで、一晩寝ればすぐに治っていた。
だから、その日も風邪だと思っていた。外出先で、急に悪寒が走り微熱が出てきたが、高熱ではないし関節も痛くない。確かに、訪問先の編集部にインフルエンザが2名発生していたが、大きな接点はないので感染のリスクは少ないはず。だから、友人には冗談気味に「インフルエンザにかかっちまったかもしれない」と笑いながら言っていたものだ。
いつも風邪くらいでは病院には行かないのだが、時期が時期だ。なので翌日、念のために自宅近くのクリニックで診察を受けることにした。一晩寝たら熱も下がっていたので楽観視していた。
しかし、検査の結果は陽性だった…。
納得いかないので医者に食って掛かった。今は熱もないし、ぴんぴんしている。どういうことだと。
医者は、私が持参した『お薬手帳』を見ながら言った。
「毎日飲んでるヘルニアの薬でロキソプロフェンが効いていたのかもしれませんね。これは、痛みや炎症や発熱の原因物質を抑える成分があるんです。そのおかげで症状が軽かったのかも。」
「じゃあ、ここ数年ちょくちょく風邪は引いていたんですが、それはインフルエンザにかかっていたかも知れないのに、ヘルニアの薬のおかげで典型的な症状が出なかったってことですか?」
「十分、有り得ます。」
変な話だ。ヘルニアのための薬を飲んでも腰痛は治まらなかったのに、インフルエンザの予防にはなっていたなんて。以後、ヘルニアの薬はインフルエンザシーズンまで飲まなくなった。
[編集後記]
予防接種すればいいじゃんと言う人もいたが、注射してもインフルエンザにかかる人はいる。だから、先端恐怖症の私としては、これからも予防接種をしないつもり。