先日、エスパー伊東の最新状況が報道されていた。今は痴呆症となり老人ホームに入所しており生活保護を受けている状況だという。全盛期で話題になっていた頃を知っているので何となく寂しい思いがする。
初めて会ったのは心霊雑誌での『恐怖体験インタビュー』の時だった。
当時はオカルトサークルに参加しているというので、さぞかし怖い話を聞けるのかなと思ったが、大したことなかったのを覚えている。まぁ、飄々とした人だからね、本当に怖い話も怖く感じなかっただけなのかもしれないが…。
その話のひとつ…当時オカルトサークル仲間三人(本人・男友達・女友達)と、車で心霊スポット巡りをした帰り道、夜の山道で何か人が横たわっているような黒い物体を見かけた。もしや死体ではと思い、すぐに車を止めて駆け出して行ったが、そこには何もなかった。
三人とも確かに見たので見間違いではないはず。しかし、実際には何もない…。事故の痕跡もなかった。首をかしげて車に戻ろうとしたが、霊感のある女友達だけは青ざめた顔をして「あれは霊体だった」と酷く怯えていた。その後、女友達は死んだ…。
これだけ聞くと祟りかと思えてしまうが、女友達が死んだのは数年後であり、もともと心臓に持病があっての病死だったという。つまり死因はあの時に見た霊とは関係がなかったのだとあっさり教えてくれた。「祟りだったのかも…」とでも言ってくれれば怖さが増すのに、正直に持病のことまで話してしまうところがエスパーらしいと言えばエスパーらしい。
私が影響を受けた話がある。エスパーはいつも夜の東京タワーの頂上を眺めていると言う。そこはUFOが飛来するかららしい。その話は聞いたことがあり、かなり有名な都市伝説だ。
エスパー自身何度も目撃しているそうだ。ならば、写真を撮っているのかと思えば一枚もない。ただ見て驚いていたとのこと。そう何度も目撃しているのなら写真くらいは撮って欲しかった。そうすれば信憑性があるというものだし、UFO評論家にもなれただろうに。
その話を聞いてから、私も夜の六本木に行くたびに東京タワーの上空を眺めるようになってしまった。未だに目撃したことはないが…。そこのところはエスパーの影響をモロ受けてしまっている。
なるほどと思った話もある。岡田有希子の飛び降り自殺について不思議現象を語り合っていた時だ。
私とユッコは名古屋在住時代に同じ区に住んでおり、出身中学が同じなのである。それもあって早く取材をして地元の話でもしたいと常々思っていた。
そして、ユッコが飛び降りた1時間後、私は現場を偶然通っていた。人だかりがあったので何だろうとは思っていたが、後で自殺の話を聞いてショックを受けたものだ。
そのことを取材テーマとは関係のない雑談としてエスパーに話したのだが、真剣な顔つきで「それは『おびき寄せ現象』というんです。あなたの会いたいという強い思いが引き寄せたんです」と言うのである。
その時は「へぇ~、そうなんだ」としか思わなかったが、実際にそういうのは有り得るということを霊能力者から聞いて後日ビビってしまった。もし1時間前に落下現場となったほか弁屋でいつもののり弁を買っていたら、私は別の意味で会っていたかもしれないからだ。というか、巻きぞえをくっていたかもしれないという方が現実的で怖いけど…。
ユッコの話では、他にエスパー自身が同時刻にほか弁屋で弁当を買う予定だったことや、彼女の死を予言した占い師や死ぬという予知夢を見たというエスパーの妹さんの話などもあったが、やはり飄々とした顔で淡々と話すので、あまり怖さを感じなかった。まぁ、そこを上手くアレンジして書くのがライターの仕事でもあるが。
一番引いたのは、心霊写真収集が趣味なので編集部にあるのを下さいと言われた時。心霊雑誌なので読者から送られてきた心霊写真が山ほどストックしてある。それらの写真を見て目がギンギンに光っていた時が、一番狂気を感じた時だった。
[編集後記]
とても良い人柄なのだが、芸能界には向いていないと思った。しかし、タレントでなければ普通の社会生活を送れなかったのかなとも思う。