別に政治が好きなわけじゃないが、私の人生の中でいささか関係していることが多々ある。
編集のノウハウを教えてくれた先輩の一人にY氏がいる。高校時代から政治が好きになり、本当は編集者よりも政治家になりたかったそうだ。
とにかく保守政党が嫌いで、当時は社会民主党のオタカさんの大ファン。いつも講演を聞きに行くほどだった。その後、編集者をやりつつ2000年になってからは、いつの間にか民主党の党員になっていた。
そのY氏、積極的に選挙活動のサポーター(早い話がお手伝いのこと。当時の民主党独特の呼び方)をしており、私もよく手伝わされた。初日のポスター貼りでは、車や自転車を使って走り回ったものだ。
当然、他の党員ともポスター掲示板の前で鉢合わせすることはしょっちゅう。ある都議選の時は、やたらと共産党の夫婦とかち合い、そのうち挨拶や世間話するようになったものだ。候補者はライバル同士でも、党員同士で睨みあうことはなく、同じパシリとして仲間意識が芽生えたものだ。
実はこのY氏、公安当局からマークされている。細かい選挙違反なんて誰でもやっているのだが、一強時代の自民党には甘いが、野党にはチェックが厳しかったという。
ある日、Y氏がマンションの部屋に帰ったら、何者かに侵入され中が散らかっていたことがあった。最初は空き巣と思ったそうだが、そうではない。金目の物は手をつけられておらず、代わりに帳簿や領収書などの書類関係が無くなっていたからだ。証拠はないが、Y氏は公安にやられたと悔しがっていた。
そんな出来事があった数日後、Y氏に電話したら「しばらく俺のところに電話をかけないほうがいい」と言われた。盗聴されているので、私まで疑われるというのだ。のほほんと政治には無縁の暮らしをしてきた私にとって、こんなスパイ映画みたいなことが実際にあるんだと驚いた。
ある日、Y氏の元に区議選に出ないかという話があった。そして、当選したら私を政策秘書にしてくれるという。政治なんかに興味はなかったが、秘書の給料が100万~200万と聞いて気持ちが動いた。しかし、当時はまだ芸能人を取材する現役のライターだったので、大金を取るか、やり甲斐のある今の仕事を取るかで悩んだ。
結局、Y氏が出馬を断念したので、この話は無しになったけどね。
そういえば、私はいつの間にか民主党の党員にされていた。Y氏の手伝いでポスター貼りをしただけなのに。民主党本部からいきなり「会費を払って」という振込用紙が郵送された時にはたまげた。勝手に民主党員にしないでよ。マジ勘弁してほしいと思った。
[編集後記]
Y氏の遠い親戚には、よど号ハイジャック犯がいるという…。国家を敵に回す一族なのかな。