ちょこっと政治の話「貴重な選挙活動体験談」 |  ライター稼業オフレコトーク

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アイドル記者を皮切りに、心霊関連、医療関連、サプリ関連、
コスメ関連、学校関連、アダルト関連、体験取材など様々な
分野の取材執筆をしてきました。
ここでは当時の面白かった話や貴重な情報、取材で思ったこと、
記事にできなかった裏話などを披露していきます。

 選挙活動に直接関わったことがある。

 ライター稼業の傍らモデル事務所にも籍を置いていた若かりし頃の。モデル事務所最初の仕事が選挙活動の応援だった。それにしても、雑誌やテレビだけじゃなく、こんな仕事もあるんだと、私自身驚いた。

 

 その時は統一地方選挙があるというので、は千葉県の某県会議員候補の応援で他の同僚二人と共に派遣されたのである。2週間近くも千葉市のビジネスホテルに宿泊しての出張になるのだが、ギャラがいいというので引き受けた。(モデル一人につき日当が3万円。ただし、事務所に2万円の手数料を取られるので、実際手にするのはたった1万だけ。このことは後で知って、派遣されたモデル仲間全員は労働量に見合わないと怒っていたが

 それにしても疑問だったのは、な新人で素人同然の私がこんな大きな仕事に選ばれたのかということだった。

 実は、候補者が前議員だったのだが、汚職が発覚して辞職させられたという過去を持っていたのだ。そこで今回の選挙ではクリーンなイメージを作るために、「真面目そうな好青年」風に見えるが抜擢されたのだという。

 確かには、喋らなければ真面目そうだとよく言われる。また、おばさん層の票を取り込むという役割もあったらしい。確かに、おばさんと子供にはもてる。

 裏事情を知って、こんなこと(汚職議員のイメージアップ作戦)に利用されたのかと思い愕然としたが、金のために妥協した。

 

 毎日朝早くから夜遅くまで選挙カーに乗って千葉県を駆け巡りマイクでがなりたてた。いつもは、「うるせー!」と思っていたことを、自分がやっているのだから皮肉なものだ。

 千葉駅の前で車の屋根に乗って演説している時などは、候補者の斜め後ろに立って、おばちゃんに愛想を振りまくし…。こんな媚びた作り笑顔を見知らぬ不特定多数に振りまくのは初めてだった。

 

 数日も経つと、候補者の演説真横で聞いていることに飽きていた。そのため集まった聴衆をウオッチングしていると、選挙に関心のない人からの悪口がけっこう耳に入るようになってきた

「うるせぇんだよ」「どうせ公約なんか実行しないくせに」「早く終われ」などなど。確かにその通りだとは何度も頷いた。

 そんなを見ていた候補者が、演説が終わった後で「君はいいタイミングで僕の話に相づちを打ってくれたね。気分良かったし、効果もあったよ」と誉めてくれ

 いやそんなつもりで頷いたわけでは…。

 

 

 まだ選挙に関心がなかった頃、街頭演説会にけっこう多くの人が集まってるのを見たことある党首クラスが演説するのなら、選挙に関心のない人でも集まるのは当たり前。しかし、の候補者は有名でもないし、ましてや元汚職議員だ。なのに集まる。とくにある工場やある企業の前などでやると、従業員が制服姿のまま集まってくるのだ。

 後で分かったことだが、候補者と工場&企業のトップはつながっていたのだ。だから、従業員達は上司の命令で聞きたくもない演説を聞きにしぶしぶ出てくるというわけ。候補者に代わってが心の中で謝っておいた。

「こんな汚職前科のある人のために仕事を中断させてしまい申し訳ありません

 

 このことで分かったのは、選挙の大勢はどれだけ組織票を取り込めるかで決まるということだった。実際、選挙期間の3分の2を終えた時点で、候補者自身が「当選確実になったよ」と周囲に漏らし余裕こいていたからだ。何が一票の重みだよと思った。これ以降、はしばらく投票に行く気が失せたものだ。

 

 

 街頭演説するとテレビカメラが撮影に来る。私はイメージボーイとして、候補者の横にいたもだから、この時ばかりはけっこう地元のニュース番組に映ったらしい。特に顔半分が…。

 

 雨が降っても大雨以外は差してはいけない言われた。そのためスーツの下に薄手のレインコートを着るのだが、これが蒸れて蒸れて気持ちが悪いったらありゃしない。だから、傘を差さない小雨の日の演説が一番いやだった。

 

 選挙カーの窓から手を振ってる時だった。一人の禿げたおじさんが何かを叫びながら、ペットボトルを回しながら車を追いかけてきた。

「熱心な支持者だなぁ~」と思いながら、「応援ありがとうございます」と感謝の言葉を述べた時だった。その人は「さっきからうるせぇって言ってんだろが、バカヤロが!」と叫んでペットボトルを投げつけてきたのだ。

 なんか虚しかった…。

 

 

 の候補者は違う意味有名人だったから新聞社の取材がよく来てた。なんといっても元汚職議員の出直し立候補だったからね。でも、記者が挑発的な質問をするもだから、候補者はいつも怒ってた。「マスコミは嫌味な質問ばかりしてきやがる」と。

 でも、その時はの本業もマスコミだったから、記者の気持ちの方が理解できた。ありきたりの質問したって面白くないに決まっている。それらの質問に対して真摯な態度とユーモアで答えるだけの余裕がないから落ちるんだよ。

 …そう、は落選した…。

 

[編集後記]

 2週間後、帰宅したは、母親に選挙の仕事をしてきたんだよと話をした。すると、母親も若い頃にウグイス嬢をやっていたことが分かった。

「親子しておんなじことやってるねぇ~」と笑いあった。

 ちなみに、母親のほうの候補者も落ちたそうだ。そういえば、ポスター貼りの手伝いをした時の候補者も落ちたっけ。どうも、うちの家系の者が選挙に関わるとみんな落ちる…。