ワクチン接種と迷走神経反射 |  ライター稼業オフレコトーク

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アイドル記者を皮切りに、心霊関連、医療関連、サプリ関連、
コスメ関連、学校関連、アダルト関連、体験取材など様々な
分野の取材執筆をしてきました。
ここでは当時の面白かった話や貴重な情報、取材で思ったこと、
記事にできなかった裏話などを披露していきます。

 新型コロナのワクチン接種を受ける際、直前に気分を悪くする人がいるという。あるいは失神してしまう人がいる。打つ前だから副反応とは違う。これは、生真面目で心配性で緊張しやすい人が、ワクチン接種を必要以上に恐れてしまうことから起きてしまう「迷走神経反射」という現象だ。

 

 誰もが接種後の副反応を心配している。38度以上の発熱が続く、腕が痛くて上がらない、気分が悪くなる…一番怖いのが重いアレルギー反応であるアナフィラキシーショックを起こさないかどうか。実際、接種後に死亡している人が1000人近くもいる。恐怖を抱いて当然といえよう。

 

 それでも現在の社会情勢からワクチン接種は受けなければならない状況にある。そこで、せめて接種前に倒れてしまわないように、「迷走神経反射」を起こしたことのある私の体験を述べたいと思う。どういう状態だったのか、どうすれば回避できたのかを。

 

 

 よくコンサートなどで女が失神する。なそうなるのかさっぱり分からなかった。興奮しすぎて呼吸が上手くいかず、酸素不足かなんかで失神するのかなと思っていた。小中学時代も朝の朝礼なで女がよく貧血で失神してが、この時も不思議で仕方なかった。子供の頃は夏が大好き元気だけが取り柄だったから倒れることはなかったし、コンサートには社会人になってよく行った、取材の仕事だったので興奮することはなかった。だから、失神なんて無縁なものだと思っていた。

ところがいい大人になってから初めて失神を経験した。

 

 

 今から10年位前に椎間板ヘルニアを患ってしまった。そのヘルニアでMRI検査をやる時に事件は起きた

 造影剤を静脈に注射して入れるのだが、事前に副作用があると聞かされており、同意書にサインまでさせられたので多少の不安はあった。ネットで調べれば調べるほど不安要素を掻き立てるものばかりが目についた。だんだん怖くなってきた。しかし、大丈夫だろうと無理やり自分に言い聞かせて当日を迎えた。

 

 無理やり平静を保ちながら処置室の丸椅子に座り、ぶっとい針を刺された時だった…。でかくて嫌だな~と思った瞬間、なんとなくお腹が気持ち悪くなってきた。どうしたんだろうと思っていたら看護師が「どうしました? 顔色が悪いですよ」と聞いてきた。その時顔面蒼白だったらしいが、私自身は全然分からない。

 

 次に、なんか眠気が急に襲ってきた。ここで眠ってはいけない…そう思ったが、眠気はますます激しくなってきた。「だめだ、眠い…」そう思って目を閉じた瞬間、すぐに夢を見始めた。

 その夢の中で、やたらの名前を呼ぶ声が聞こえた。しばらくして「やばい、寝ちまった」と思い目を開けた。

 気がつくと、の周りは看護師が数人いて、「気がついた!」「良かった!」と大騒ぎしている。いつの間にか車椅子に乗せられていた。

 私としては検査の前にうたた寝をするという失態をしてしまったと思っていたので、「あ、すみません、うっかり寝ちゃいました」と、会議中に寝て怒られた時の様な謝罪の言葉を口にしてた。

 

 後になって、それが失神だと知った…。1020ほど失神していたらしい。自分では失神という感覚ではなかった。本当に急激な眠気からのうたた寝と思っていた。今でも、目を閉じていく瞬間をハッキリ覚えているくらいだし…。

「へぇ~、これが失神かぁ~」と思いながら1時間くらい点滴を受けていた。医師から、これは迷走神経反射だと聞かされた。

 看護師からは「採血で失神したことはありますか?」と聞かれた。男で時々こうなる場合が多いのだという。しかし、今までそんな経験一度もない…。

 

 迷走神経反射は恐怖・緊張・痛みなどで起こるらしい。自分を守ろうとする気持ちが強いとそうなるらしい。自分ではしっかりしているつもりだったが、毎日続く激痛のヘルニアのため気分が落ち込んでいたし、何よりも副作用の恐怖が心の片隅に残っていたことは否定できない。その他にも、心配事を多数抱えていたのも確か…。

 

 自分が初めてのことに緊張しやすいことは知っていたが、ここまで緊張しやすいタイプだとは思わなかった。事前にMRIのことなんか調べなければ良かった。そうすれば失神なんかしなかったはず。

 しかし、今にして思えば貴重な体験をしたと思う。もうしたくないけど…。

 

 柔道や総合格闘技の絞め技で「落ちる」というのがあるが、それも同じようなものなのだろうか? かつて『新婚さんいらっしゃい』に出ていた夫婦で、柔道家を夫に持つ妻が「裸締め(スリーパーホールド)で失神させられる時がHよりも気持ちいい」と言っていた。そのため、イケなかった時は夫に裸締めをかけてもらい別の絶頂を味わうのだという。

 確かに気持ちいいかもしれない。眠る瞬間というのは本当に気持ちいい。それは誰もが知っているはず。

 

 考えてみたら、小学1年生の時、10メートルの石垣から自転車ごと落ちたことがある。その時「しまった!」と思い、10メートル下の地面が見えた途端、カメラのシャッターが落ちるみたいに目の前が真っ暗になった。失神したのだ。その瞬間は今でも鮮明に覚えている。

 落下中の記憶は全くない。地面に叩きつけられた時の衝撃も覚えていない。そういう現実的な恐怖から逃れるために、自己防衛的に迷走条件反射が起こったのかもしれない。実際、あんな凄い体験をしたのに恐怖感がまるで記憶にない。もし、死んだとしても、肉体的な痛みは感じずにいたことになる。

 

 大人になってからの失神体験は一度でいい。怖くはなかったが、男として格好悪いしね。

 

 これからワクチン接種を打とうとして不安を抱いている人は、私のようにならないようにして欲しい。緊張をほぐす方法を身につけ、無用な不安要素を頭に入れていかないようにして臨んで欲しい。

 

[編集後記]

 失神中に看護師の呼ぶ声が聞こえて我に返ったのだが、あれは生死をさまよっている人が三途の川を渡ろうとした時に、どこからか自分を呼ぶ声が聞こえて意識を取り戻す…というのと同じだったのだろうか。だとしたら、危篤中の人…意識のない人に対して耳元で名前を呼ぶというのは意味のあることなのかもしれない。