これは私が好きな映画のひとつ。いや、好きと言うよりも「身につまされた」と言ったほうが正解かも知れない。登場人物の男が、私と同じ情けない体験をしているからだ。
主演は、90年の『ゴースト/ニューヨークの幻』でトップ・スターの仲間入りを果たしたデミ・ムーア。87年にブルース・ウィリスと結婚し、妊婦ヌードを発表したことでも有名だ。そしてもう一人はロブ・ロウ。知らない人のほうが多いと思う。十代の小娘とHしてスキャンダルを起こして以来パッとしないからね。
ストーリーは、この二人が織り成すラブ・ストーリー。恋愛に対して束縛されるのがイヤでエンジョイしたい、結婚に対しても制度や因習に従いたくないという思いを持つ若い二人の男女が意気投合。お互いの一目惚れからベッド・イン、そして共同生活から同棲へと発展していく。初めは、お互いのことを束縛し合わないフリーでクールな自由恋愛を約束していたのだが、所詮愛し合う男と女、思うように事が進むはずもない。二人の前には様々な障害が現れ、毎日些細なことでぶつかり合うようになっていく。そして、喧嘩の挙句に同棲を解消し別れることに…。しかし、皮肉にも別れることによって初めて本当の愛を見つけ、最後はハッピーエンドに!
とまぁ、よくある恋愛模様だし、ラストも予想通りのいかにもアメリカ的なストーリー展開だ。
でも、ここで注目して欲しいのは男の情けなさ。
恋愛の過程で女がだんだん献身的になっていくのを煩わしいと思うようになり、結局は我がままを繰り返した挙句に自分から別れを切り出していく。しかし、別れた後で女の良さを再認識し、何とかよりを戻そうとする。まさに後悔先に立たず。だが、悔やんだところで女の心はかたくな…。こんなことなら「あの時もっと優しくしておけばよかった」…そう思ってしまうもの。
現実的に、こういう失恋を体験する男ってけっこういると思う。そういうやつは、早い話が恋愛下手なのだ。強引さを男らしさと勘違いし、何をやってもこの女はついてくると思い込む、いかに女心を分からない傲慢な男が多いことか…。
女が恋愛の過程で男に尽くすようになると、男は調子に乗って我がままを押し通すようになる。気がつかないんだよね。それが、女を少しずつ傷つけてるってことに。惚れられているという錯覚も手伝ってしまい…。だから、自分の方から強気で別れを切り出したりもする。
逆に、女からも決断を下されることがある。そして、別れた後で初めてその女の素晴らしさを理解できる。恋愛中の自分の我がままがいかに女を傷つけていたかがやっと分かる。
しかし、その時点ではもう手遅れ。一度別れた女の決意は半端じゃない。並大抵のことでは気持ちを取り戻せない。マジでこういう時の女は頑固だ。だが、頑固だけど、心の隅っこに「できればこの人ともう一度…」という思いがあるのも確か。
映画では、その思いを引き寄せることができた。しかし、私は適わなかった。だから、この映画を観た時は泣けた。男のしたことが自分とダブって情けなかった。傷つく女の気持ちがやっと分かって情けなさを痛感した。
だから、この映画は、現在シングル中の恋愛初心者、あるいは恋愛下手の男達に観てもらいたい。恋愛中の男の我がままがどのように女を傷つけていくのか、恋愛中の女はどのように気持ちが変化していくのかが分かる。そこでの気持ちのすれ違っていくさまが理解できると、なぜ別れに至ってしまうのかがよく分かる。
前述したが、私がこの映画で身につまされたと思うのは、初めて愛した女にしてしまった仕打ちがこうだったからだ。そして、この映画を見てから、私の気持ちは「傲慢」→「後悔」→「反省」→「相手を思いやる」へと5年の歳月をかけて変化していった。
ただ勘違いして欲しくないのは、女心を理解するとか、女に優しくするというのは、決して甘やかすということではない。いかに相手の思いを汲み取ることができ、それに対して誠意を持って応えられるかだ。それができれば一方的に自分の気持ちを押し付けることもなくなるし、相手の気持ちも理解できるようになる。そうなることで、いつしか本当の愛を見つけることができるし、育てていくこともできる。
ただし、単なる我がまま女には必要ないけど。
恋愛下手の男達よ、もしくは現在彼女との関係が行き詰っている男達よ、「相手を思いやる」という意味での本当の恋愛のあり方というものを、この映画を観て今一度考え直してみよう。二度と同じ過ちを繰り返さぬように。
[編集後記]
ここで言いたいのは相手に媚びることじゃない。もう男女の傷つく様を観たくない…ただそれだけ…。なぜなら恋愛は互いが幸せな気持ちであることが一番だから。