私は基本一般人なのだが“テレビ出たがり人間”でもある。エキストラのバイトでちょくちょく出ていたこともあるが、単独で有名番組に映る機会も多くあった。例えば『パンチDEデート』『嗚呼!バラ色の珍生』『アンビリバボー』などだ。それぞれに裏話があるが、今回は織田無道住職と共に出演した『アンビリバボー』について話すことにする。
私はブックライターとして、今まで住職の本を3冊ほど協力している。そのうちの一冊を読んだ『アンビリバボー』の制作会社がアポを取ってきたのである。「出てくれますか?」の出演以来に私はもちろん「是非是非!」の返事。ゴールデンタイムの人気番組だっただけに超嬉しかった。しかし、それが精神的に裏目に出た。
というのも、恐怖体験を語る収録の時にニコニコし過ぎたからだ。カメラが自分を映してくれていると思うと、怖い話をしていてもついつい目元や口元が緩んでしまうのである。そのためディレクターからは「怖い話をしているのに、顔が笑っているので信憑性がないですよ」とたびたび注意され、おかげで盛り上がる話の箇所もカットされていた。結局30分話をして正味5分もないオンエアだった。本当はもっと怖いシーンの話をしたのになぁ…。
改めて録画されたものを観てみると、怖かったと言っているにもかかわらず、確かに目元や口元が微かに笑っていた。
話の内容は次のとおり。住職とライターとカメラマンの三人が地方の旅館に宿泊した時にオバケと遭遇したという話。旅館の風呂場に居たオバケに対し、再現の途中で住職とライターの私が交互にその時の恐怖体験を語るという構成。
その番組の再現で大嘘が一点ある。それはオバケのいる女風呂を前に、ライターとカメラマンがコソコソと逃げ、ひとり残った住職が風呂場に向って毅然とした態度で印を切ったというシーンだ。
ところが実際は、オバケの声が聞こえた瞬間に、住職は二人を置いて真っ先に部屋へ走り出したのである。怖くて逃げたというわけではなく、実際に居ることが分かり、面倒に関わりたくないために、その場から早く離れたかったというのが真相だ。
だが、その事実は現場に居た者しか知らないオフレコなので、ディレクターには話さなかった。どうしても怖くて逃げ出したように思えるからだ。そのため再現の中では住職が威厳を持って除霊しているシーンが映し出されていた。
住職のテレビにおけるキャラと実像が違うことを知っていた私としては、走り出したところに人間性を感じていた。だが、テレビではやっぱり放映できない…ダッシュしたなんて…。しかし、そのおかげで再現はとても怖い内容に仕上がっていた。
[編集後記]
ゴールデンの番組で30分間の収録=謝礼が3万円。…高いか安いか? 住職はもっともらっているだろう。私としてはテレビに出られただけで満足だけど。
ちなみに『嗚呼!バラ色の珍生』の時は1ヵ月半のロケと20分間のオンエアで10万円だった。あと日テレのボールペンか…。『パンチDEデート』の時は大阪1泊2日の旅費と10分間のオンエアでブランド物のネクタイとサイパン旅行だった。
もひとつちなみにエキストラの時は1日拘束されて冷たい弁当+2000円~3000円以下だった。(注:当時の相場)