健作アニキ |  ライター稼業オフレコトーク

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アイドル記者を皮切りに、心霊関連、医療関連、サプリ関連、
コスメ関連、学校関連、アダルト関連、体験取材など様々な
分野の取材執筆をしてきました。
ここでは当時の面白かった話や貴重な情報、取材で思ったこと、
記事にできなかった裏話などを披露していきます。

 先日、たまたま資料整理をしていたら、自分が新人の頃にインタビューした森田健作アニキのインタビューテープを書き起こした原稿が見つかった。

 80年代は第2次青春ドラマブームで、その影響を受けて元祖青春ドラマの『おれは男だ!』も十数年ぶりに再放送されていたのだ。夕陽に向かって走るというパロディも流行っていて、健作アニキはこの時かなりクローズアップされていた。そのブームもあって、私も取材することになったのである。

 

『おれは男だ!』の本放送がされていた1970年といえば、私はまだ小学生だった。この時は夢中になって観ており、森田健作は千葉真一と並ぶ当時の男の子達のヒーロー的存在。それがまさか、社会人になって仕事として会うことになろうとは夢にも思わなかった。

 テープ起こし原稿を改めて読んでみると、自分が子供の時にテレビを観ながら疑問に思ったことをストレートに聞いていた。そして、それに対して健作アニキは熱く語ってくれている。

 以下は、その再現を一部抜粋したもの。

 

――子供ながらに、ずいぶん老けた高校生が多いなと思って観てました。

「実際、みんな老けてたよ。僕だって二十歳過ぎてたからね。今のドラマ(80年代)は十代に近い人達がやってるみたいだけどね」

――今の子達と違って、みんな学ランをきちんと着てましたよね。

「剣道同好会の部員役に対しては、みんなに学生服のホックを外すなと僕が言ったんだ。チンピラじゃないんだからって」

――有名なセリフに「よしかぁ~君」というのがあるじゃないですか。当時小学生だった自分は、女の子を“君づけ”で呼ぶことに違和感があったものです。

「台本は呼び捨てだったんだ。でも、僕はそれが嫌だったから、せめて“君づけ”で呼んだんだ。それから先生と対立するシーンもあったけど、台本にあった乱暴なセリフは使わずに、敬語を使って抗議するようにしたしね。

 それじゃあ現実的じゃないと言う人もいるだろうけど、でもそれが本当の学生らしさじゃないのかな。生徒が先生に礼儀をつくすのは当然のことじゃない。確かにはみ出てる学生もいる。しかし、それはほんの一部であって、残りの人は真面目にやってるんだ。だから僕達はごく普通の学生を演じたに過ぎないんだよ。

 なのに今のドラマは、悪いところをオーバーに見せて学生らしさを無視してる。いくら校内暴力が問題になってるからといって、教師を侮辱したり殴ったりするシーンを見せていいものなのか? いくら男女関係が進んでるからといって、抱き合うシーンなんかを見せていいのか? 例えそれが現実であっても、そんな怖いシーンばかり見せられたら学校を毛嫌いする人が出てくるよ。

 青春ドラマって、夢があり、希望があり、見終わったあとでスカッとする…これが基本だと思うんだ」

――今は夕陽に向かって走るシーンが笑いのネタにされていますよね。悔しくないですか?

「素直になれよと言いたいね。美しいものを見て感動するのは当たり前じゃない。笑うのは、結局照れてるんだよな。自分一人で観てたら笑わないと思うよ。他の人と一緒に観てるから笑うんだ。

 でも、笑うというのは反応を示してる証拠なんだな。興味がなければ何の反応も示さないよ。夕陽を見てると、本当に希望が湧いてくるということを、ドラマを通じて教えてあげたいね」

 

 

 …とまぁ、こんな感じで延々とインタビューが続いたわけだ。健作アニキの言動は作られたものとか言われるけど、あれは素のままだったと今でも私は思う。

 最後に健作アニキは自分の夢を語ってくれた。

「僕はねぇ、いつか政治家になりたいんだよ」

 当時は現実味が薄かったし、記事の主旨にも合わなかったのでその話はボツにしたが、その後1992年に本当に政治家になるとは思わなかった。そして、千葉県知事にまでなるとは。まさに有言実行! 素晴らしいアニキだな。

 

 取材後、健作アニキは「今日はご苦労さま。ありがとう」と言って、わざわざ自分から握手を求めてきてくれた。長いインタビュアー生活の中で、芸能人から労をねぎらわれ握手を求められたのは、後にも先にも健作アニキだけである。

 

[編集後記]

 カラオケに行くと『さらば涙と言おう』を必ず歌う。『おれは男だ!』の主題歌だ。歌詞も曲も簡単で歌いやすい。子供の時に聴いたヒット曲ってなかなか忘れないものだ。