入院2日目。いよいよ検査日。
  

検査は午後からのため、口にできるのは少しの水分だけで朝食と昼食は食べることができない。

でもなぜか不思議と空腹は感じなかった。

 

昼過ぎに、看護師さんが優しく声をかけてくれた。

「そろそろ措置室に向かいますね。準備お願いします」

「寝ている間に措置は終わり、目が覚めた時にはここに戻っていますからね」
点滴スタンドを引きながら静かに向かう。

 

措置前準備室で、別の看護師さんから検査の流れについて説明を受ける。
内視鏡で胃の一部の組織を採取する「生検」の説明をあらためて聞き措置室に向かう。

他人事のように聞いていたが、ベッドに横たわると、思わず深く息を吸っていた。
ふと視線を動かすと、診察のときに対応してくれた医師の姿があり一言声をかけてくれた。
その顔を見た瞬間、張りつめていた心がふっと緩む。
 

ああ、本当に検査を受けるんだな。現実が身体に染みてくる。

点滴から静かに薬剤が入ってきた。
「では、始めますよ」――その声を最後に記憶はない。

 

気がつけば、自分の病室のベッドの上だった。
時計を見ると、措置室に入ってから数時間が経っていた。
まず何よりも、「目が覚めた」ことに安堵する。

痛みも違和感もない。ああ、大丈夫だ――。
腕の点滴はまだ続いているが、措置時につけられた酸素マスクと心電図モニターは外された。

検査が終わったという事実だけで、気持ちはずいぶん軽くなっていた。

 

 

しばらくして医師が病室を訪れ

「出血もなく組織は順調に採れました。結果は来月になります」
「明後日退院したら、食事やお酒、運動の制限はありません」と。

うれしい言葉だった。

…が、「食事の再開は明日の昼の予定です」

なんとも悲しい言葉だった。ほっとしたのか空腹を感じる。。。
 

目が覚めたいうだけで、こんなにも心が軽くなるのか――あらためて実感。

 

すぐに妻に連絡を入れた。
「検査は無事終了。明後日からはお酒もごはんもOKだって」
「よかったね、ほんとによかった。おつかれ様」
電話の向こうから聞こえた安堵の声に、胸がぐっと熱くなる。

 

そうだ、私ひとりの身体じゃないんだな。

今さらながら、しみじみ思う。

けれど今は、ただ「目覚めたこと」、そして「無事だったこと」に、感謝したい。

 

病室の窓から見えた青空が、やさしくまぶしかった。