㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。
ご注意ください。
「いい天気だね!」
とユニが伸びをしながら叫ぶほど、打杖大会は快晴の空の元その日を迎えた。単なる儒生たちの競技大会なのに、国をかけた戦いでも何でもないのに高揚するのはなぜだろう、と思いながらも、気持ちが浮き立つのを止められない。
あんなに嫌だったのになあ。
とユニは朝餉に向かいながら思う。行事は邪魔、早く学んで早く結果を出し、俸給がもらえる官吏になりたい。俸給がもらえるだけでなく、官吏になれば両班という身分以外に地位や官位がついてくる。経済的な問題と、無官位の家であるという不名誉を一気に挽回できるのだ。そう思って、一日講義が止まる上に、毎日行事のための準備や練習で時間を削られることに疑問を抱いた一年目。手射礼では努力の末に勝ちを得る達成感を味わった。これは小科での好成績とはまた違った感激ではあった。小科はユニにとって好きな学問の試験だから、努力するのに辛い思いはなかった。大変な中に楽しみがあった。だが弓の鍛錬は最初は特に本当につらかった。体力的にも、そして一朝一夕では身に着かない技術的にも。しかしそのできないことを積み重ねて勝ち取ることの喜びは半端なものではなかった。特にそのとき、西掌議ハ・インスと成均館の去就をかけて戦っていたようなものだったから、余計に勝利の喜びが勝ったのだろう。
昨年の打杖大会は、ソンジュンの負傷により相手方にも心理的な圧がかかったため結局東斎が勝ったが、あまり気持ちの良い思い出ではない。あの時、政治的な関係が見え隠れして、ユニはひそかにつらかった。こんな儒生のお遊びのような球技にも、世の力関係が影響するのだと目の当たりにした。相手方は、ユニや他の儒生たちに反則を仕掛けることに躊躇をしなかった。何をやってもいいかのようにとびかかってきた。だが、ソンジュンがユニをかばって打棒で打たれ倒れたとき、彼らはソンジュンの様子を気にしながらも、次に伺い見たのは王様の近くに控えていたソンジュンの父親左議政の様子だった。真っ先にソンジュンを介抱したのは、それこそまだあまり仲がいいとは言えなかったジェシンだったのだ。ユニは恐ろしさに立ちすくんでしまっていたが、それでもユニの目には、顔色を失うハ・インスの表情、インスから少し距離をとろうとする西斎の選手たち、そう、まるで関係ないとでも言うように。そしてソンジュンの父親にしきりに頭を下げる、おそらくハ・インスの父親であろう姿が映っていた。謝るべきは打たれたソンジュンなのに。介抱することが先なのに。この世はそれすらも順番が地位によって狂う。明らかに戦意をなくした西斎に勝っても、嬉しくもなんともなかった。正しい試合がしたかった。
だが今年は、とユニは思う。競技内容を知り、未知のことではなくなった打杖は、ユニにとって意味を持った練習ができたし、自分の体を自分の思うように操れたらやはり気持ちが良かった。球が狙っていた方向に過たず飛べば、練習を見てくれたジェシンも満足そうにうなずいてくれた。認められたらやはりうれしいのだ。そして何よりも、昨年と最も違うのは、敵味方である西と東の清斎に分かれていても、似たような年の儒生たちに誘われて一緒に球を打ち合い、ドヒャンにもあれから何度か付き合った。楽しかった。体を動かして疲れてしまうが、それでも気分がいいと案外他のこともちゃんとできるものだ。逆に時間の使い方はうまくなった。毎日練習があるから、と予復習も集中して行い、課題は早めに取り掛かり対策をする。そうやって睡眠時間も確保し、体は生き生きと動いている。
「これから生きていくために、何でも経験しないとダメなんだなあ。」
ユニは小声でつぶやいた。お腹が空いているから、先頭切って食堂に向かっていた。すぐ後ろをソンジュン、その後ろをジェシンとヨンハが大股で追ってきているのを承知で。つぶやきは本当に口の中で消えたから聞こえなかったろうと思う。でも、振り向いた三人は柔和に笑っていた。
「頑張ってね!ソンジュンとサヨン!」
そう、張り切っていてもユニは基本補欠だ。二人はほとんどの競技に出ることになっているのだ。昨年とは違い、ヨンハが勝手気に選手名簿に書いたのは二人の名前だった。自分とユニの名は補欠にちゃんと回してあった。
ソンジュンは頷き、ジェシンは元凶であるヨンハの側頭部を小突いた。いてて、とうめくヨンハはそれでも笑っている。
「楽しみだよな~、テムル!」
うん、ヨリム先輩。僕、自分の人生をちょっと好きになったみたい。
ユニはそう思いながら頷いて見せた。