お祭り大好き! その19  | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 ユニが相変わらず練習していると、肩を叩くものがいる。振り向くとドヒャンがにこにこと立っていた。

 

 「熱心だなあ!俺と一緒にやろうか、テムルよ。」

 

 「えっと・・・僕と兄上は敵同士だよ。」

 

 あっはっは!と豪傑笑いをしたドヒャンは、ユニの肩に腕を乗せ、肩を組んできた。

 

 「補欠同士だ!誰にも迷惑は掛からん!」

 

 ゲラゲラと笑い組んだ肩に置いた手でバンバンと叩いてくる。それもそうか、とユニも笑い返し、何をするの、と聞いてみた。打ち合いながら走る練習を提案されてやり始めると、周りでウタクやヘウォン達が手を叩いて囃す。ドヒャンは力が強いから球も速いし強いが素早さはユニの方が勝っている。そのちぐはぐさが面白いらしく、皆大笑いしながらどちらかに肩入れして応援していた。

 

 「おおう。テムルってば人気者じゃないか。」

 

 恰好だけは勇ましいが、棒を振っているのを見たことがないヨンハが笑った。野次馬は西斎東斎どちらの儒生もいるが、八割がたユニの方を応援していた。ドヒャンには、からかい交じりの掛け声がかかり、それはそれで応援の一つなのだろうが、少々ふざけた感じが抜けない。

 

 「ドヒャン相手に負けてんじゃねえよ。あいつの球筋なんか見え見えじゃねえか。」

 

 ジェシンがだらりと長衣を着たやる気のない格好で腕を組んでいる。棒すら持っていない。ただ、ジェシンがこの広場に来るのはユニの指導のためだけなのでいつもの格好ではあるのだが。

 

 「ドヒャン先輩は囲碁はされないんでしょうね。」

 

 とソンジュンが真面目に分析していた。ユニはドヒャンの球の強さというか重さに打棒が押されがちだが、確実にドヒャンが打つだろう場所に足が間に合っているのだ。ジェシンの評はユニには厳しすぎるのでは、と暗に言い返しているのだ。

 

 「あいつは囲碁なんかより酒飲んで騒いで時間を潰す奴だぞ。先読みなんかするかよ。分かりやすく前にしか進まねえ。」

 

 ああ~、と声が上がり、そして笑い声も起こる。ユニが打った球をドヒャンが空振りしたのだ。球は転がり、ウタクの前で跳ねてその手のうちにすっぽりと収まる。また笑いが起きた。

 

 「前の時も思ったけど、テムルは足速いよな。」

 

 「ドヒャンとは大違いだ。」

 

 二人の競技における特性を言い合って笑う儒生たちの前で、ドヒャンはむん、と胸を張った。

 

 「俺様が控えているんだから西斎は勝~つ!」

 

 俺様が補欠になるぐらいだからな、と足を踏み鳴らすドヒャンに、皆からかいの声を掛ける。

 

 「ドヒャン!お前なんかすぐに息切れするだろ?!」

 

 「今だってちょっとしか動いてないのにさあ~。」

 

 ドヒャンは肩で息をして顔も真っ赤だ。

 

 「テムルはまだまだいけそうだな。」

 

 「息も上がってないぞ。」

 

 「ドヒャン、酒の飲みすぎなんだよ。」

 

 貴様ら~~!と自分へのさんざんな評価にまた足を踏み鳴らすドヒャンだが、ユニが隣にやってくると、テムルよ~、としなだれかかった。

 

 「あっちでこっそり秘密練習しようぜ。こんな奴らがいるところじゃ、集中できないだろ。」

 

 「でも、ここが一番凸凹が少ないじゃない、兄上?」

 

 「そうだなあ、そうかなあ、テムルがそういうなら仕方がないな!」

 

 すぐに意見を替えるドヒャンに皆は笑うしかない。ドヒャンは派閥の枠を超えて、キム・ユンシクという少年のような儒生をかわいがっている。それはもう周知の事実だし、損得を超えたドヒャンの年下の同窓生への愛情と、素直にその愛情を受け取る少年儒生の間に、何の濁りもない友情を感じるから、誰もその関係に邪魔をしない。むしろ面白い出し物として楽しんでいる風でもある。

 

 「・・・楽しそうだな、テムル。」

 

 「ドヒャン相手だ、仕方がねえ。」

 

 「・・・でも・・・万が一・・・。」

 

 その先は言わなかったソンジュンだが、ジェシンもヨンハも分かる。もし、万が一、ドヒャンがユニの秘密に気が付いたら。彼女が体の接触を許すのは、自分たち三人以外にはドヒャンだけなのだ。自分たちは彼女が女人だと知っているから、逆に気を付けているが、ドヒャンは全力でユニを抱きしめ、肩を抱き、頬に触れる。かなり年上の男。もし、が本当になるかもしれないという危惧はいつも持っている。だから普段は、仲良くじゃれているドヒャンとユンシクをさりげなく引き離してしまうのだ。

 

 「その時は、協力させるさ。」

 

 静かに言ったヨンハは、表情だけは柔和にほほ笑んだまま、戯れるドヒャンとユニの姿から目を離さなかった。

 

 

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