ファントム オブ ザ 成均館 その48 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 ジェシンは頑健だ。ソンジュンと共に、ほぼ寝ていないような毎日でも、少しの間に目をつぶってほんの瞬きの間だけ眠り、そして普通に一日を過ごし、夜、再び明け方まで机に向かう。そんな生活をしていても、別に体は何ともなかった。食事などの時間が決められていて、他の生活が不規則にならないせいだろう、とはユニに薬種茶を飲ませながら話すチョン博士の意見だ。それでも二人ともすごいなあ、とユニは心の底から思っている。けれど。

 

 本当は疲れていないわけはないのだ。

 

 そう思いながらユニは身を固くしている。何しろ動けない。後ろからもたれかかってくる重みに耐えながら。頬をくすぐるおくれ毛の感触に耐えながら。肩口にかかる温かな息遣いを息を殺して感じながら。腰から腹前をしっかりと締め付ける腕の逞しさと、ユニの膝など到底比べられないほど高い位置にある立てた膝のてっぺんに少し怒りを感じながら。

 

 ユニの背後には、それこそ背後霊のように取り付いたジェシンがいて、抱き枕のようにされてしまっているのだ。気が付いたらこうなっていた。中二坊に戻ってきたら、壁際でうつらうつらしているジェシンがいて、サヨンたら風邪ひくよ、と思っただけなのに。そう思って、ちょっと何かを上からかけてあげようと思っただけなのに。ジェシンの物の置き場である棚の脇に無造作に掛けてあったチョゴリをとって、欠けるなら背中かなあ、でも壁にくっついているし、動かしたら起こしちゃう、なんてちょっと傍で悩んだだけだったのに。サヨンが悪いんだ。片膝だけ立てて、そこに頭を付けてるもんだから、伸ばしている足を跨いだだけなのに。だって近くでそっとかけてあげようと思うじゃない。遠くからだと投げつけるみたいになっちゃう。できるだけ近いところから、って足の間に入った僕が悪いの?急に引っ張られて引きずり込まれるなんて思わないよね。

 

 これは、暫くしてから戻ってきたソンジュンに助け出されたユニの言だ。捕まっている間ずっと思っていたらしく、ぶうぶうと流れるように文句を垂れた。ジェシンは寝ぼけた様子でそれを聞き、うん、と伸びをすると、温くて助かったぜ、と一言言っただけだった。

 

 もう!と言いながらユニは薬房に向かった。茶を戴きに行くのだ。夕餉前、食間に飲むといいという事で、夜は今大科のために講堂で勉強していることもあり、この時間に博士から指定されていた。それを見送って、ジェシンはもう一度伸びをした。勿論、さすように感じる視線があるのは分かっている。

 

 「・・・寝るのならちゃんと布団に入られたらいいでしょう。または、今夜講堂に行かずに一晩しっかり休まれたらいいと思います。」

 

 「そんなことして、お前に敵うわけないってわかってるのにやるわけねえだろうが。」

 

 ソンジュンの無表情な顔を眺めてジェシンは吐き捨てた。

 

 「ほんの少し頭と目を休めただけだ。あいつが温かったのは本当だが・・・。」

 

 「キム・ユンシクも迷惑ですよ。」

 

 「そうか?あいつも一緒に寝ればよかったんだ。」

 

 「・・・落ち着いて眠れるとでも・・・?」

 

 「今は俺たちと一緒にぐうぐう寝てるだろうが。寝れるさ。」

 

 ソンジュンは黙った。男二人と同室なのに、ユニはぐっすりと眠れているのは確かただ。成均館に入りたての頃は眠れていなかったことをソンジュンは知っている。緊張して、とか家と違うから、という言い訳をその時は信じていたが、キム・ユンシクが女人だと知ってからは、男二人と同じ空間で寝なければいけなかったユニの心労を少し理解できた。ああ、あの時はそれで眠れなかったのだと。ただ、慣れすぎだ、とも思う。寝てもらいたいけれど、不用心だとも思っている。自分以外の男の目の前でぐっすり寝るなんて、本当はしてほしくない。あんなに密着するなんて、まあ今回は密着したのはジェシンのせいだけれど、それでもいけないことだとソンジュンの理性は判断しているし、感情としては本当にやめてほしいとしか思えない。

 

 「お前だってもたれてみればいい。あいつは、多分、少しは頼られるのが好きだぜ。」

 

 できるものならやってます、とソンジュンは声にならない反論を、精いっぱい表情に浮かべて見せた、が次の瞬間、ハッとしてジェシンを睨みつけた。

 

 「もしかして・・・わざとですか?」

 

 ジェシンはふい、と笑っていた。それが肯定だとソンジュンは判断した。

 

 

 

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