ファントム オブ ザ 成均館 その37 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 三日後の夕、公開諮問は行われた。もう、席についた時点で勝敗は明らかだった。緊張はしているが落ち着いた明るい顔色で座るキム・ユンシクと、眼の下を真っ黒にしてきょろきょろと目を落ち着かなそうにさまよわせる三人の儒生。ジェシンなど鼻を鳴らしてしまい、隣のソンジュンに肘をつつかれた。

 

 夕方に行われたのは、午後の講義までは成均館の予定を崩さないためだった。こんな茶番をわざわざと、と眉を顰める博士もいたという。茶番、と聞きとがめたのはその口ぶりに対してだろう。それぐらい、最初からばかばかしい言いがかりのために対処しなければならなかったというある意味怒りに博士たちは満ちていたのだ。

 

 五問の短い問いに字数を限って解答を書くという形をとった。計四名で同じ問題に答えさせるからだ。五問で勝敗がつかなければさらに三問、足りなければまた三問、一応用意をしてある。しかし博士たちは十分すぎるだろうと思っていたらしいとはのちに聞いた。問題自体は限りなく作成できるから、出てきた案をポンポンと採用し、模範解答を作っておくなど博士たちにとっては朝飯前のことだったが、最初の数問で決着などつくだろうと予測をしていたのだ。それぐらいキム・ユンシクことユニと他の三人の能力には差があった。

 

 講堂の下座には見物する儒生たちがひしめき、最初の問いにすらすらと筆を動かすユニと、眉を盛大にひそめながらなかなか筆が進まない三人の様子は、くすくす笑いとため息を誘った。勿論解答は読み上げられ、博士たちだけでなく儒生たちにもその優劣が分かるようになっていた。ユニの回答の時には、ソンジュンや他優秀な儒生たちの首が頷きの形に動き、他の儒生の時には何を言っているのだ、という顔をあからさまにする。五問が終る時には、もう講堂の雰囲気からして勝敗は決まっていた。

 

 「このような突発的な時に本当の実力が出る。学びの差、というものが出るのだ。文句を垂れ流す前に、己を磨くことだ。」

 

 

 「完膚なきまで、ってところだよな~。」

 

 「博士たち、容赦なかったな。」

 

 口々に言いながら講堂から儒生たちは散っていった。ユニは、静かに自分の筆記具を片付けて、ジェシン達の方へ向かおうとした。するとユニに負けた儒生の一人が叫んだ。

 

 「どこかで問題を見たんじゃないのか、キム・ユンシク!お前、まだ講義でとっていない内容も答えられるなんておかしいだろう!」

 

 ユニは首をかしげて儒生を見ると、

 

 「講義ではとっていないけれど、本自体は何度もよみかえしていますから。」

 

 と答えた。儒生の叫び声に反応して講堂に再び飛び上がってきたジェシンがユニの後ろに立つ。遅れてソンジュンもやってきた。

 

 「字面だけ読んで覚えるだけだったらあんな回答できねえよ。思考しながら読んでるんだろ。お前も真似したらどうだ。」

 

 ジェシンが吐き捨て、そうだろ、イ・ソンジュン、と投げかけた。するとソンジュンも少し思考してから頷いた。

 

 「何を言いたいのかを読み取り自分の言葉にすることで知識は血肉となります。一回一回をきちんと意識して学ぶことで思考は深まりますね。」

 

 「僕、そこまで意識してたかなあ・・・でも僕はいつも時間がないと焦っていたから、一回一回が必死なんだよ。」

 

 もうその時、儒生たちの存在は薄れていった。反論すらできなかったからだ。声も出ない儒生たちを置いて、ユニはジェシンとソンジュンに引き連れられて講堂から出た。

 

 「テムル!見事だったけどさ、あいつらに・・・何の罰も与えなくていいのか?」

 

 諮問がユニの圧勝で終わった後、博士に聞かれたのだ。皆を騒がせ、大事にした者たちに何か条件はあるか、と。成均館側としては、反省文の提出と書庫の整理という作業の奉仕を命じたが、他に何か望みがあれば罰則として取り入れるといったところだろう。早々に講堂を後にしたハ・インスなら、成均館を辞めさせろ、ぐらいは言うんだろうし、とヨンハは笑っている。しかしユニは何も望まなかったのだ。

 

 「別に・・・危害を加えられたわけじゃないし、僕の努力を疑われたのは悲しいけど・・・でも僕、こんな正しい形の競い合いなら、ちゃんと対等に対決できるかから、不満はないよ。」

 

 そしてユニは中二坊に戻った。また5のつく日に霊廟詣でが始まる、そう思いながら。

 

 

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