ファントム オブ ザ 成均館 その35 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 しばらく経ってからある、毎月恒例の試験では、何人もの落第者が出た。そのうち、明らかに不正な試験の受け方・・・回答を試験中に共有したり、試験範囲に当たる文言をいくつも書き連ねた紙を隠し持っていたりしたのを現場で押さえられたものは退学処分となった。上斎生にも下斎生にもそれらの行為を行ったものはいて、厳しく詰問された彼らは、今までも同じようなことを繰り返していて、まさか見つかるとは思っていなかった、と白状した。逆に、今になって、どうして自分たちの時に、と言うので聞くと、手法はこうすればいいと教えられたものらしい。不正のやり方が代々伝わるなんて、と博士たちを嘆かせたが、薄々はそういう事はあると知られていたことだ。現場を押さえるほどの努力をこちらもしなかったから、と博士側も反省し、自分たちの処分を王様に伺うべきか、という話にすらなった。

 

 成均館を挙げての大騒動だった。普通に成績が悪く落第したものは、退学は免れたものの、自分の実力不足、勉強不足を棚に上げて、他を妬むものだっていた。例えばイ・ソンジュンは妬みの対象にならない。自分たちと比べ物にならない頭脳を持っていると皆分かっているからでもあり、彼を妬んでも自分たちに有利になることは一つもないという、親の立場の違いによる劣等感もあるせいだった。ジェシンに対してもそれは変わらず、だから妬まれるものは、どうしてあいつは成績がいいんだ、と首をかしげることのできる立場の者だった。この場合、キム・ユンシクはその対象になる。

 

 成績の良さはやはり勉強量によるとソンジュンなどは思うのだが、それを彼らは理解しない。学堂に行く体力も、財力すらなく、教えるべき父親さえ亡くしているはずの青年が自分たちより出来がいいことが認められないのだ。何かあるに違いない、何かずるいことをしているに違いない、そう思いたいのだ。キム・ユンシクと称している娘の毎日の努力を見ているソンジュンやジェシンにとって、その勉強量を裏切らない結果を出しているだけだと思うのに、他はそうではない。そして頭の悪いものはそれを口に出す。その根も葉もない妬み嫉みの言葉に乗る頭の悪い者たちもいるのだ。

 

 博士たちに上訴した者がいた。本当にキム・ユンシクに実力があるのか、何か温情があるのではないのか、そういう内容の上訴状を見て、呆れる博士たちは一つ解決方法を提示した。疑うなら、疑いの内容が正当なのか試してみればいい。公開諮問を行おう。キム・ユンシクと訴え出たもので競えばよい。実施は三日後。それまで、それぞれ他の者との接触をなくすのだ。とは言っても日中に講義を休ませるわけにはいかない。成均館儒生としての生活は真っ当に行わせなければならない。だから夜、博士の見張りの元、指定の部屋で眠らせる。勉強道具は持ち込んでよい。毎日の講義の復習、準備を妨害するものではない。

 

 「これを大騒ぎにして親が上訴でもしたら、成均館の自治に影響が出る。役人にしゃしゃり出てこられるのは面倒だ。」

 

 そう言い放った博士たち数人を筆頭に、諮問試験の内容は極秘で特急で作られた。その博士たちとの接触はどの儒生も禁じられ、あれよあれよという間にユニは三日の晩を過ごす博士たちの宿舎の一部にある部屋に行くことになった。講義の本と筆記用具、そして多少の身の回りの物を抱えて、ユニは成均館で初めて一人の夜を過ごすことになった。

 

 断れねえよな、とジェシンは言ったのだ。ソンジュンも頷いた。

 

 「お前は・・・大丈夫だ。」

 

 「君はやれるよ。」

 

 二人はそう言ってユニを励ましてくれた。ヨンハは、菓子をそっと荷物の中に紛れさせてくれた。それでもユニは不安で、それは顔に出ていたに違いない。するとジェシンがそっと肩を押さえた。

 

 「お前はちゃんとやっている。それに・・・お前には・・・。」

 

 そう言って口を閉ざしたジェシン。気を取り直したように、ユニの肩をバンバン叩いた。

 

 「文句を言う奴なんてへこましてこい!お前には力がある。俺は知っている。」

 

 ジェシンの不自然な話のそらし方は気になったが、それでも励ましてくれた気持ちがうれしくて、ユニは精いっぱい笑って見せた。

 

 

にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村