ファントム オブ ザ 成均館 その25 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 試験の結果に一番頭をひねったのはユニ本人だった。勿論遅れた分は全力で取り戻す努力もしたし、勿論いつもの試験前の努力だって同じようにした。かなりの勉強量だったが、こればかりは、ハ・インス曰く自分の『体調管理の失敗・失策』の結果なのだから仕方がない。確かに取り戻すために頑張った。ソンジュンにもジェシンにも頼ってひたすら勉強した。そう、必死に。

 

 だからといって自分がそんな急に頭が今までより良くなるわけではないのは分かっている。例えばソンジュンと自分の成績に差があるのは、本人の能力の大小もあるとはいえ、矢張り今までの積み重ねが大きいと、ソンジュンの毎日に努力を見て理解していた。彼の恐るべき知識量は、その学問への取り組みの姿勢の賜物なのだ。今回だってソンジュンを越すことはなかった。それでもできるだけの努力を、と今までやってきたおかげで、小科二位で成均館に入っただけの結果を残してきてはいる。けれど、矢張り儒学の聖地、成均館。ソンジュンだけではない優秀な儒生は多くいて、当然ユニはその中で浮き沈みしている。今回は自分の勉強不足が最初から想定されていたのだから、後れを取らないだけの成績がせめて取れたら、と少し後ろ向きの思いで受けた試験ではあったのだ。

 

 受けた時は、思っていたよりは書けた、と安心していた。手ごたえがあったというよりは、心配していたよりはましだった、という心境だろう。元から後ろ向きの考えだったのだから、安心でとどまったその感想は、結果が分かったときに大きい驚きをユニ本人にも与えた。勿論周囲も驚いたが。

 

 「やるじゃないか、テムル!」

 

 肩を叩く笑顔のヨンハに、ユニはうれしかったが戸惑いも正直に見せたので、ヨンハも笑顔をひっこめた。

 

 「どうしたんだ?」

 

 「えっとね・・・こんなにいい成績になると思ってなかったからびっくりしたっていうか・・・。」

 

 「まあ、休んでたのそこそこ長かったからな~、でもテムルがよく勉強したのは事実じゃないか。」

 

 「うん。やった。勉強は一生懸命したよ。でもさ、すごくすごく足りない気がしてたんだよね。だから驚いたの。」

 

 「お前に合う問題だったんじゃないのか?」

 

 「う~ん・・・どうなんだろ。合う合わないを言えるほど、僕、偉くない・・・。」

 

 ふうん、と首をひねったヨンハは、

 

 「じゃあ、休んでいる間の講義の内容をさ、取り戻している最中、ダメだ、分からない、追いつけない、って思うことはなかったかい?」

 

 と聴いてきた。

 

 「えっと。確かに、休んでみるとさ、一講義の内容がいかに多いか、ってのはよくわかったよ。博士の講義なしに理解するのは、講義の時間よりかかるね。教えていただくことのありがたさが分かったよ。だけど・・・まあ、分からない、追いつけない、って程ではなかった。」

 

 「本自体は読んでいるものばかりだったんだろ?」

 

 「うん。僕本だけは頑張って読んできたから。父上が遺してくださってたし・・・。なんだかさ、今回必死に本を読んでたらさ、父がお弟子さんに教授しながら音読していた声が頭の中で流れていたような気持になった・・・だから気持ちよく頭の中に入ってきたのかなあ・・・。」

 

 「声?」

 

 「うん。自分の声で読んでるんじゃなくて、父の声で読み聞かせてもらってる感じがした部分が沢山あった。そこの言葉はすんなりと記憶に収まったし、意味や意義づけも理解が速かったかも。」

 

 そっか、とヨンハはそのまま肩を抱いてユニと食堂に向かった。それ以上話は広げなかった。二人の会話を黙って聞いていたジェシンとソンジュンも何も言わなかった。いつも通り夕餉をとり、三人はユニの食欲が減退していないことを、その健啖ぶりで確認して安心し、そしていつも通りの夜を迎えた。ジェシンは詩集を読み、その邪魔をヨンハがして、ソンジュンとユニはその日の復習や明日の予習をする。ソンジュンが自主的に本を読み続ける中、ユニは筆写の仕事を一日の予定分仕上げる。そして就寝。

 

 試験後の5の日の夜まで、平凡な四人の毎日は続いたのだ。

 

 

にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村