ファントム オブ ザ 成均館 その21 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 「呪いなんか関係ねえ、それはわかってる。だが、気になる。」

 

 「ドヒャンが見たことか?」

 

 「そうですね。俺も気になります。」

 

 「ドヒャンは老論だが、シクをかわいがっている。シクに都合の悪いことを仕立て上げるほど策士でもない。」

 

 「ほめてるのかけなしてるのか・・・だがドヒャンがテムルを心配してのことだっていうのは分かるなあ。」

 

 「老論は関係ないと思います、コロ先輩・・・。けれど、確かに今回キム・ユンシクが体調を崩したのには、少々心当たりもありますから気にはなりますね。」

 

 そう言いだしたソンジュンを、ジェシンとヨンハはば、とにらんだ。

 

 「分かってることがあったんならさっさと吐け。」

 

 「なんだよ~俺がテムルのこと何にも知らないみたいじゃないかぁ~。」

 

 そう絡んでくる二人の先輩に構わず、ソンジュンは口を開いた。

 

 「大したことではありません。けれど最近・・・もう一月は越えているでしょうが、キム・ユンシクはものすごく予、復習や筆写の仕事の速度を速めるのに必死で・・・というか、他に時間を使わなくてはならないかのように急いでいた様子に見えてたんです。」

 

 「あいつがくそまじめに机に向かってるなんて、いつもと変わりねえだろうが。」

 

 同じ部屋にいるジェシンがそう言い返したが、言い返しながらも最近のユニの姿を思い出そうと沈思した。だからヨンハが、

 

 「無理をしてた、ってことか?」

 

 と聞くと、ソンジュンは曖昧に首を縦に振った。

 

 「最終的には無理をしたことになったのかもしれません。就寝する時間はそれほど以前と変わっていないんです。体に無理をかける事があるとすれば・・・。」

 

 夜中。見た目の睡眠時間が変わらないのであれば、眠っているはずの時間に眠っていないとしか思えない。体を壊すような極端な天候もなく、食事もきちんととり、講義の時間が変わったわけでも、処理できないほどの筆写の仕事を請け負っているようでもない。少し時間が押せば、速く寝ろと言われるまで寝る時間を遅くして筆写の仕事を仕上げたりしていた姿を、そう言えばここ最近見ていない、とジェシンも頷いた。

 

 「・・・俺たちも見に行くか・・・。」

 

 「そうですね。それがいいと思います。」

 

 「え~、おれ幽霊怖いんだけど!」

 

 騒ぐヨンハだが、それが振りだとは分かっていて、二人は相手もしなかった。何も無いのならそれでいい。だが、気になることを知らぬふりはできなかった。

 

 三人は、ユニが本物のキム・ユンシクではなく、娘である、と知っていたからだ。

 

 きっかけはそれぞれ違う。だが、知ってしまっていた。知っていて、知らぬふりをして、同室生として、後輩として、親友としての関係を替えずに来た。いらぬことを言って他の者に知られてはならない秘密だから、お互いに知っているだろうと予測しながら何も話さずにここまで来ている。キム・ユンシクという存在の背景が、成均館にいる本人が女人であることを除けばすべて真実であり、いたずらでもふざけているのでもなく、命がけで家の再興への踏み台となろうとしているその姿に、手も足も出せないのだ。自分たちならできたか。そう胸に問う。だが、答えは否、だ。できない。絶対にできない。女人と知って驚き、成均館、いや、国家の則を犯していると憤り、案じた。しかしその時には、もう後輩、親友だった。人として、今ここにいるキム・ユンシクこそが自分たちの大事な仲間だった。法を犯すことは悪なのだろう。だが、キム・ユンシクとしてここにいる娘が人として悪をなしているわけではなかった。悪ではない仲間を守ることは、彼らの則に適っていたのだ。

 

 その奥にある芽生え始めている他の気持ちには蓋をしている。皆。それを表に出したら秘密が暴露する。キム・ユンシクに接するのだ。それが暗黙の了解だった。

 

 仲間を案ずることに何のおかしなこともない。ただ、ユニに関する少しでも危険なことを排除するべきだ。たとえそれが、本物の幽鬼であっても。それを彼らは確かめに、夜中の薬房へと向かった。

 

 

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