ファントム オブ ザ 成均館 その11 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 月末、成均館では試験が行われる。必ずだ。高度な講義、元から持っていなければならない基礎知識の上に行われるものだから、試験内容も高度だ。

 

 イ・ソンジュンは小科壮元の何恥じず、今までの講義で一位を譲った事はない。ユニは成績自体は上位で、二位を取ったこともあるが、ソンジュンのように毎回の好成績を保っていられるわけはない。成均館は優秀な儒生の集団なのだ。言葉選びひとつ、回答文の構成一つの違いで点数が変わる。

 

 ジェシンとヨンハはユニやソンジュンより三年近く先に成均館儒生となっているが、少々どころか結構学生としての態度生活が悪く、新入りのユニ達と同じ講義をとっていることもある。落としているのだ。そんな講義の試験では、ソンジュンは不動の一位、しかしジェシンも不動の二位を取る。ユニがびっくりしていると、ヨンハが、俺たちの時の小科の壮元はコロなんだぜ、とまるで自分の自慢のように教えてくれた。こんなに賢いのに、とユニが言うと、なあ、とヨンハはジェシンの肩に手を回して笑う。

 

 「イ博士の講義はさ、追い出されたんだよな、お前は!」

 

 嫌そうな顔をしているジェシンは、すでに儒生帽をむしり取っていた。ジェシンが体を締め付ける格好が嫌いだという事は、流石に同室なだけに、ユニもようやく慣れてきたところだ。

 

 「イ博士はさあ、服装がだらしないのが耐えられないんだよ、あのご気性だろ?」

 

 講義の内容も真面目一本やり、所作も堅苦しいイ博士は、儒生服を着崩しているジェシンを即座に落第にしたのだという。他にも何人もが服装の乱れで落第、減点の憂き目に遭っているのだそうだ。

 

 「もういっそのこと理由がはっきりしすぎててさ、誰からも文句は出ないんだよ。士太夫たるもの、身だしなみを整えられなくてどうするのだ、とあの口調で言われたらさあ・・・講義を受ける態度ではない、ってそれっきり追い出されるんだぜ。」

 

 それを聞いてから、ユニはイ博士の講義の時は、ジェシンの儒生服を一通り点検する習慣がついてしまった。うるさそうにしながらもユニの手をわずらわしたままのジェシンだったが、そのおかげか今のところ追い出される気配はなく、それどころか今回の試験もちゃんと二位だった。

 

 ここで恐ろしい事実が発覚した。試験で三人の落第が決まった。彼らは再び同じ講義を最初からとらねばならない。その三人が、ユニをあの幽霊騒ぎの建物に閉じ込めた者たちだったのだ。

 

 「それがさあ、聴いてきたんだけどさあ・・・。」

 

 こういうことをどこからか聞きこんでくるのはもっぱらヨンハだ。ユニも何か変な気分だったので、少しは詳しいことを知りたくて仕方がない。あの夜、確かに男は三人について言及はした。しかし、イ博士ではない、彼は。彼が手を下したわけではないだろう、と思いたかった。

 

 試験は統一した白紙が配られる。それに掲示された問いへの回答をかくのだ。

 

 「皆墨が乾いてから書吏が集めて回るだろ?同じだけの時間をおいて集めるわけだから、墨の乾き具合だって変わらない。何人もの目があるから、回収時に誰かがいたずらしたわけでもない。イ博士の目だってあったんだから。」

 

 イ博士はその性格上、自らの試験には自ら立ち会うのだ。最初から最後まで、博士は机の前に端座していた。

 

 「あいつら三人の試巻だけ、泥のようなものが擦り付けられたみたいに汚れていたんだそうだ。それで博士は三人を呼んだ。勿論イ博士のことだから、その前に試験後に誰かがいたずらをしたのではないかと調べたようだよ。だが、自分の目で終始見ていたのだから、不正のしようがない。そこで本人たちに聞いたわけだが、そうすると彼らはさ、テムルのせいにしたわけだよ。」

 

 自分たちがした事によって、呪いがかけられた、あいつが俺たちを呪ったのだ、と自分たちの悪事よりもそれに仕返ししたキム・ユンシクが悪いと言い立てたのだ。

 

 ー では、諸君はこれが仕返しのための呪いだと?

 

 ー そんなわけはないだろう。キム・ユンシクは君たちを呪わなくてもいいほど素晴らしい回答をした。今回の試験は、彼は三位だ。

 

 ー 呪われたのだとしたら、それは自分たちの行為が跳ね返ってきたという事だ。自らが撒いた種をひとのせいにするなど、儒学を学ぶ者とも思えない卑怯な態度だ。そんな者たちにする講義はない。君たちは私の講義の名簿からは削除する。

 

 「ってことらしい。」

 

 「じゃあ・・・。」

 

 と一緒に聞いていたジェシンがつぶやいた。

 

 誰がしたんだ?

 

 

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