路傍の花 その56 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 「そんなことをすれば、キム・ユンシクの姉だって無傷ではいられまい。娘の純潔は初婚には必須だ。誰が汚された娘などと婚姻を結びたいと思うものか。」

 

 「ユニ様は何一つ恥じることなどありません。」

 

 「評判の問題だ。事実など関係ないだろう。」

 

 「そうだなあ。」

 

 薄く笑ったジェシンが口を出した。

 

 「事実は本人たちが知っていればいいんだ。俺が嫁に貰うから心配無用だ、ハ・インス。お前は自分の父親の心配をしろよ。」

 

 インスも嫌な笑いを口元に浮かべた。

 

 「お前の家だって、そんな人の手のついた娘を嫁になど父親が認めまい。」

 

 「そんな事はないぜ。老論の、それもハ家を袖にして恥をかかせた家の娘だ。親父は喜んでその気概を買うだろうぜ。」

 

 ははは、と笑うジェシンの横で、ヨンハも首を傾げた。

 

 「うちはあんまりこだわらないからねえ。お姉様がお嫁に来てくださるなら、我が家は万々歳だね。」

 

 ソンジュンも口を出したかった。だが、出来なかった。自分の父親がどう反応するか。それを想像するのが怖かった。だが、今それにこだわっている場合ではなかった。ジェシンとヨンハの援護射撃に乗るべきだった。

 

 「派閥違いの貧しい家の娘、それを分かっていてどう手を出そうとしたのか、まず、詳細が秘匿されたとしても、その事実が知られただけでハ大監がどのような手を使ったのかなど皆大体予想するでしょう。この話が漏れる事、それ自体がハ大監にとっては首を絞めることになるのですよ、掌議。」

 

 「そして漏れたが最後、詳細は君の口から左議政様に伝わるというわけか・・・おい、何という失態をしてくれたのだ、お前は。このことが父に知れたら・・・。」

 

 「知れて、ハ大監がお怒りになって、この男を解雇する、と?そうなったら先が読めますね、ヨリム先輩。」

 

 ソンジュンがヨンハに振ると、ヨンハは考え深そうに顎に手を当ててた。

 

 「俺だったらさ、何もかも雇い主のためにと思って危ない橋を渡ったのに、ってことで、恨むだろうねえ。言いふらす?どこかに訴える?まあやれることはやるね。ああ。口封じに金を貰ってもいいけど、一時金だけじゃ満足しないだろうし、万が一本当に口封じをされそうになるかも、って疑うから、やっぱりどこかで喋っちゃうかなあ。」

 

 

 

 インスは条件をのんだ。父親には、成均館に入ってきたキム家の子息がハ家の子息である自分の存在に気付いてしまって、キム家の娘に対する過去の所業の真偽を確かめるために執事に口を割らせた、という設定にしたのだ。そうでなければ執事が職を失う。執事が今回行おうとしたユニへの無礼はインスには言わなかったが、それこそソンジュン筆頭にジェシン、ヨンハに知られている。家族であるユンシクはもちろんだ。身を慎んでほしい、キム・ユンシクはイ・ソンジュンと親友であり、インスに話をするために、ソンジュンにはハ大監のしたことは知られてしまっている、今後キム家に関して無体をすれば、即刻事実がソンジュンの父親である左議政に告げられることになっている、と、息子のインスから父親であるハ大監に通告させるのだ。身内に見張られ、事実を知っている者が最も知られたくない人の子息だという身動きの取れない状態にしてしまう、その方針が丸まる上手くいった形になった。

 

 ユンシクはその間、口を閉ざしたままだった。自分がまだ12,3歳の折の出来事と今回のこと、どちらもユンシクにとっては嵐に襲われたようなものだったろう。そしてユンシクは何もできなかった。解決できたのは、最初は叔父のおかげ、そして今は仲間たちのおかげだった。その力不足を、ユンシクは誰よりもよく知っていた。

 

 ハ・インスはそういう負の感情に気付くのが上手い、すべてを相手方の思い通りにしなければならない屈辱を、ユンシクにぶつけた。口の端を上げ、よいお仲間がいてくれて、お前は助かったな、とユンシクの胸にぐさりと言葉を突きさしてきた。けれどユンシクは、その指摘を顔を上げて受け止めた。

 

 「ええ。本当に。皆何が正しいかを僕に教えてくれます。僕は皆と一緒に、正しいやり方で力をつけます。そうすればこんな風に、弱みに付け込まれることなど起きることはないでしょう。」

 

 痛烈な皮肉をハ・インスに浴びせた。

 

 

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