路傍の花 その55 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 自分の主人であるハ大監の望みをよく知るのは自分。だからこそキム・ユニという娘をもう一度説得しようと試みた。しかし、娘は自分のことを覚えていて、声をかけたとたんに逃げ出そうとしたためつい腕を掴んで捕らえようとしてしまった。抵抗する娘と自分の姿を見て、通行人に娘に危害を加えようとしていると誤解され、逆にとらえられてしまった。すべては自分の主人のため。主人に機嫌よくいてもらうためにした事。

 

 自分の主人の女人に対するの好みは、少し仕えたらよくわかった。妓楼でも新入りの妓生を侍らせるのが好きだ。ただ、座敷に侍るようになった妓生は、体はすでにおぼこではないことがほとんどだ。主人は誰にも手をつけられていないまっさらな娘を欲した。そろそろ花妻でも囲おうか、と密かに言い始めたところ、美しい娘がいるという話を聞きこみ、金がらみでにっちもさっちもいかなくして囲ってしまえばいい、という話に乗った。それがキム家の娘だった。年は16、村でも評判の両班のお嬢様。貧しい家ゆえ、自らが身を粉にして働かねばならない境遇。ちょっといい暮らしをさせたらなびくだろう。話を持ち込んできたのが老論の者だったため、秘密を約束させて話を進めた。ほとんど蓄えのない家、薬代何回か分で首は回らなくなり、返す金すらない状態になるのはすぐだった。金の代わりに娘を回収する、その場に行きたがった主人は、出てきた娘を一目見て、大層歓び張り切ったのだ。勿論騙されたと知ったキム家の寡婦、娘の弟は抵抗した。家に土足で上がり込み、哀願する寡婦を無視し、姉をかばおうとする弟を殴りつけた。まだ少年。一張りでその細い体は吹っ飛んだ。さあ連れて行こう夜が楽しみだ、そんな顔の主人に従おうとしたとき、キム家の親戚という夫婦が訪れたのだった。

 

 

 「儂たちを手引きしましたキム家の母方の親戚という奴が、手柄話のように経緯を・・・ええ、借金が返せないから、ありがたいことに借金を娘と引き換えに棒引きしてくれるのだ、と。するとその・・・キム家の弟だという男が静かにその額を聞きまして・・・はい、10両でございました。あの家は1両も持っていなかったでしょう。それぐらい貧しい様子でしたから。ですから弟にだってその額は無理なのだと頭から決めつけておりましたんで・・・そうしましたらおもむろに懐から金包みを出しまして、兄上の弔いの気持ちを包んできたのが幸い、これをやるから証文をよこせと投げつけまして・・・拾って数えましたら10両より多いもので証文を渡さざるを得なかったのです・・・はい・・・え・・・利息込みで10両でした・・・はい、申します申します!金包みに入っていましたのは20両でした・・・いえ、恥かき料だと旦那様が懐に・・・はい、返してはおりません・・・。」

 

 ソンジュンが話したよりも詳しくべらべらと当時のことを白状した狐面の執事。この話を茶店の厨で聞きだしたときには、その金の額を知っている叔父以外、皆口を開けて呆れかえったものだ。ヨンハなど、「逆にハ家が10両借りがあるじゃないか・・・。」と言ったほどだった。

 

 自分がユニを連れて行こうとしたことを主人のためだということにすり替えて、後は事実を話せ、とソンジュンに命じられた執事。その後は俺が引き受けようというまだ10代の若者の言葉一つに、中年男がしがみついている。

 

 インスは顔色を白くしたまま黙っていた。眼光は鋭く禍々しく執事をにらみつけたまま。だが、執事とてここが自分のこれからの稼ぎの正念場なのだ。必死に言い募った。

 

 「この話は、掌議、あなたは知らなかったでしょう。俺もハ大監のことだとは今回初めて知りました。俺は父のすることに口を出したこともないし出すつもりもありませんが、正直、このような恥ずかしい癖をお持ちの上、詰めの甘い方と仕事をしても、後々困るのではないか、父の品位まで下がるのではないかと思い、父に報告したくて仕方がない。ただ、そうなると、父がハ大監と距離を取った理由が取りざたされる。困るのは、どなたでしょう。」

 

 ソンジュンの声が掌議部屋に静かに響き渡った。

 

 

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