㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。
ご注意ください。
ソンジュンの予想は当たり、ユンシクと共に小科に二人は合格した。それもソンジュンは進士、生員どちらも壮元、ユンシクは進士も上位であったが生員にいたってはソンジュンに継ぐ次点だったものだから、茶店は大騒ぎだった。
「ユニちゃん!どうしたよ、今日は一層可愛いねえ!」
常連の親父が粥をかきこみながら笑うぐらい、ユニは光り輝くような喜びにあふれていた。
「甥っ子がさ、小科に合格したんだよ。ユニがまあこの通り喜んで。」
叔父が贖ってきた店に置く品を並べながら笑うと、親父たちはまた笑う。
「甥っ子ってユニちゃんの弟だっけ?この間までここで世話になってただろう?俺何度か見たけどよく似た小さい子だよな?」
「そんな難しい試験を受けていい年なのかい?」
「おじさん、ユンシクは小柄だけど年が明けて15歳になったの。ちょっとばかり確かに若いけど・・・。」
「じゃあすごく頭がいいんだな!」
「でも一緒にお受けになった方は、弟と同じ年だけれど両方成績が一番だったのよ。すごいでしょう。」
「うへえ、俺にはわからねえ世界だ!」
「お前字を読むのも大変じゃねえか。」
「お前もだろ!」
言い合う親父たちの間を縫って粥を配り、茶を淹れ、付け合わせのキムチを運んで、ユニは忙しい。けれどやっぱり笑顔は輝いていて、それが客たちを大層喜ばせた。
そのにぎやかな声が一瞬途切れたのは、華やかな色合いが皆の視界を横切ったから。
店に妓生のチョソンがやってきたのだ。
「あら、あなたは・・・。」
「覚えてくださっていましたか。お嬢様、牡丹閣のチョソンでございます。」
一緒に来たらしい妹分の妓生二人が物珍しそうに茶店を見渡す中、チョソンはまっすぐにユニのところにやってきて優雅に会釈した。ユニも前掛け姿ではあるが、盆をチマの前に抱えたまま、きれいに会釈を返した。
「ユンシク様が難しい試験に合格されたとお聞きしましたの。お祝いを申し上げたいと・・・けれど私はこちらのお店しかお会いできる場所が思い当たらなくて・・・。」
「まあ、それはわざわざありがとうございます。けれどユンシクは、本日の放榜礼が終りましたら実家に戻りますの。」
あからさまにがっかりした様子のチョソンに、ユニは申し訳なさそうに言い、とにかくおかけになって、と少し奥の床几まで案内していった。チョソンは少し気を取り直して、呆然と見守る親父客たちに軽くほほ笑みながら後をついていったのはさすがというべきか。
「けれどよくご存じでしたわね、ユンシクの合格のこと。」
「都の噂は花街に集まってきますのよ、お嬢様・・・。それにご友人のイ・ソンジュン様はお父上様のご威勢もある上に大層優秀でいらっしゃるとよく評判に上がりますの。今回、ソンジュン様に次いでの成績を取ったのが、名もなき南人のご子息だということで、発表以来噂でもちきりですよの。王様が大層お会いになるのを楽しみにしておられると・・・。」
「そんな、小科に合格しただけですのに、王様がなどと・・・。」
「王様は野に隠れている若い頭脳を見つけるのが大層お好きだとお客様が良くおっしゃいますのよ。ユンシク様はまさに王様のお探しの人物に当てはまるとは思いませんか?」
「恐れ多くも王様のお考えは推量できませんわ・・・。」
つつましいユニの返事と困惑ぶりに、チョソンは美しくほほ笑んで、ユニの叔母が運んできた茶を優雅に喫した。
「お嬢様。お嬢様も評判がたちますわ。ただでもこんなにお美しいお方なのに、将来を期待される弟ごがおられるとなると・・・。」
「試験で評価を頂いたのはユンシクですわ。私はただの姉です。」
いいえ、とチョソンは首を振った。
「先日お会いしたときに感じましたの。ユンシク様は大層お嬢様に心服しておられますわ。それにあの日ご一緒されていた皆様は、ユンシク様がおそらくこれから王様のご期待を負うように、お三方とも同じように王様の希望を担われるお方たちでございますよ。そんな方々に大切にされているお嬢様です、注目はお嬢様にも集まりますわ・・・。けれど願わくは・・・。」
チョソンは真っ白な手で、少し間を取って床几に座っていたユニの小さな手をとった。立ち働いていても、ユニの手は白く、その優雅な二人の手が重なると、まるで一服の絵のようにその場が輝いた。
「お嬢様は変わらないでいてくださいまし。私どものように着飾らなくても、このように美しく可憐に都に咲いているお嬢様・・・。皆さま、お嬢様をお守りくださいね、どうか。」
最後は店にいる客たちに嫣然と投げかけて、チョソンはあっけにとられるユニを置いて帰って行った。そしてチョソンの言った通り、放榜礼後、妙に両班の客が増えたと思ったら、それはユニを見に来るためだった。
ユンシクは王様に直接声をかけられ、成均館に即入学を命じられたのだ。イ・ソンジュンと共に。