路傍の花 その28 | それからの成均館

それからの成均館

『成均館スキャンダル』の二次小説です。ブログ主はコロ応援隊隊員ですので多少の贔屓はご容赦下さいませ。

㊟成均館スキャンダルの登場人物による創作です。

  ご注意ください。

 

 

 まるで思いつきもしなかった、かのように目を丸くしたユニは、ソンジュンやジェシン達よりも年長だというのに、本当にかわいらしくて、三人はボヤっとしたままその表情を見つめていた。

 

 「お・・・叔母様に聞いてみなくちゃ・・・。」

 

 ごゆっくり、ととにかく声をかけて、ユニは店の厨の方に急いで向かった。その後姿がまた跳ねているように見えて、後ろ姿まで少女のようにかわいらしかった。

 

 胸を思わず抑えるソンジュン。また心の臓辺りの音が高鳴っている気がした。周りに聞こえるのではと思うほど。そっと傍にいるジェシンとヨンハをうかがうと、ジェシンは耳のあたりをうっすらと染め、ヨンハは口をぼっかりと空けてユニが消えた厨の方をポカンとした表情のまま見つめていた。

 

 「あんな顔をされるんだなあ・・・ユニお姉様は・・・。」

 

 開いた口のままそうつぶやいたヨンハは、ふと自分を見つめるソンジュンを見てにやあ、と笑った。あ、気づかれた、とソンジュンはますます胸のあたりを押さえた。ジェシンもヨンハのつぶやきに我に返ったらしく、頬をごしごしとこすっていて、更に赤くしてしまっている。

 

 「あんなお可愛らしいお姉様をだよ、一人歩きさせちゃあ、ダメだよな。最近お遣いは店主殿と叔母上様がさせないようにされているらしいし、一人でお出かけになるのは、ユンシク君と会う日だけだなっ?!」

 

 これはやはりお供が必要だ、とヨンハはソンジュンの隣に座り直して、馴れ馴れしく肩を抱いた。

 

 「次にユンシク君とお姉様がお会いになる日はいつだい?君は僧じゃない時を狙ってユンシク君に会ってるんだろう?決まった期日なのだと言っていたじゃないか。」

 

 ジェシンやヨンハと話をするようになった時に、ソンジュンがユンシクと知り合ったきっかけを話してはいた。わざわざユンシクを待ち伏せしたうえでの交流の始まりに、ジェシンは信じられないものを見るようにソンジュンを眺めまわした。率直に、失礼な、と思うほど、ソンジュンの人間関係に対する能力を見くびっていたことがよくわかって、ちょっとだけ気分を害したのを覚えている。

 

 ユンシクの筆写の仕事は定期的だった。決めていた方が間違えないし分かりやすい。最初は、ユンシクが若すぎる、子供だからということで貸本屋の方が分かりやすく約定の日を定めたらしいが、ユンシクがきっちりとした仕事ぶりで、内容にも締切にも間違いがないことを理解した今は、仕事の量を一定にする意味もあって期日を定期的にしているようだった。ユンシクには小科に向けての勉強の時間が必要なのだ。自分にとって最大で最善の量というのがある、とユンシクは笑っていた。

 

 「次の次・・・二十日後でしょうね。」

 

 ソンジュンは渋々答えた上で付け加えた。

 

 「その日は、俺だって遠慮してその場にはいきません。ご家族お二人で話をしたいことが沢山おありでしょう。」

 

 家の不遇さゆえに、姉弟分かれて暮らしているのだ。お互いの生活状態の確認の中に、人には聞かれたくない経済状況や家族の健康状態、その他いいこと悪いことも含めたものがあるだろう。他人が割り込んではならないと思っている。

 

 「お供するだけ!ユンシク君に会ったら退散するって。それに、お戻りだってお一人になったらさ、心配だから、俺の供を遠目に置いておいて見送らせるからさっ。」

 

 「・・・それはいいかもしれねえな。」

 

 とジェシンまで頷いた。ジェシンの頷きには重々しい実感がある。何しろ、一人でいたユニが狼藉ものに絡まれたのを助けたのはジェシンなのだ。ユニの一人歩きの危険さを知っている頷きだ。

 

 「お前が供をするよりは役に立つな。腕っぷしはなくても気は利くだろ。」

 

 「俺だって気ぐらい利くよ!」

 

 「いや、てめえは信用ならねえ。」

 

 そんな実のあるようなないような言い合いをしている三人の元に、ユニがまた駆けるようにして近づいてきた。満面の笑みに、叔母からユンシクの宿泊の許しが出たとすぐにわかる。その笑顔がまたかわいらしくて、三人の胸は同時にとくん、と高鳴った。

 

 

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